第10話
開店前になると続々とキャスト達が出勤してくる。
流石夜の蝶。煌びやかな装いに負けない輝きを放っていた。
全体的に店の雰囲気と合った大人っぽい女性が多い気がする。
開店して程なくするとテーブルは一通り埋まった。
客入りは良いらしい。
客の年齢層は新宿のキャバクラにしては少し高い。
店とキャストの雰囲気といい、落ち着いたクラブ寄りの店なのかもしれないなと思った。
「ソウメイいただきましたーーッ」
そんな落ち着いた雰囲気の中響く元気な涼介さんの声。
あの人だけ店違くないか?
賑やかし担当らしい黒服を横目で見ながら仕事をした。
Skyからは体良くあしらわれ
放り込まれたキャバクラ
人手不足なのに雇入に厳しいらしいトップ。
どうなることかと思ったが、初日は案外なんとかなりそう。
お客様の出迎え見送り、灰皿の交換、注文コール、お酒の注ぎ方。
今までのバイト経験も生きて仕事内容はさほど問題無い。
馴染みらしい、お客様には「新しい人?」なんて頻繁に聞かれるもんで、愛想良く肯定している。
「新しい黒服君だって」
「へえ、珍しいね」
「ソウイチクン、自分のテリトリーには人増やしたがらないからな」
「ソウイチクン、今日はこっち来るの?」
いや誰だよ【ソウイチ】
今日何度この名前を聞いたことか。
分からないのでとりあえず微笑んで流した。
気に入ってもらえたのか何人かのお客様に諭吉を握らされる。
ラッキー、家賃にまわそ。
そんなこんなで閉店時刻を迎えた。
客を全員見送り、従業員の接客モードも終わる。
各々帰宅準備やアフター準備をすすめている中、涼介さんは肩を回しながら近づいてきた。
「終わり終わりー、初日お疲れ」
「お疲れ様です」
「亜樹飯行こうぜ」
「遠慮しときます」
「俺に遠慮なんて必要ねーから〜」
ガハハと笑いながら肩をバンバン叩いてくる。
そういう意味の遠慮じゃない。
分かってて言ってるだろ。
そして普通に痛い。
「え、りょーさんと亜樹くんご飯行くの? メイも行っていい?」
そう言って顔を出したのはキャストのメイさん。丈の短いラベンダーのドレスに身を包み、ホワイトベージュのマッシュボブという髪型。
この店では年齢と言動がわりと若いほう。
「じゃ、三人で歓迎会だな」
「いえ〜!パーッとやろ!」
何食べる?
店はどうする?
あそこはどう?
盛り上がる二人を前に、もう断れないと腹を括った。
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