第27話
心ちゃんの呼吸を感じ取った途端、急に全身の力が抜け姿勢を保てなくなった。
ぐにゃりと歪んだ床に倒れ込んでしまい、起き上がれない。
ぐらぐらと世界が揺れる中、なんとかスマホを取り出す。
歪む視界と力の入らない指先。なかなか思うように操作できない画面に焦れながら、現在地を知らせるメッセージを涼介さんに送った。時刻は23時半。
最低限の仕事はできたよな。
大きく息を吐いてしばらく横になった。
___ダンッ!
大きな物音がして目が覚めた。
嘘だろ、気絶してた?いま何時だ。__24時10分。
やばい、下はどうなって、
てか心ちゃんは。
なんとか動くようになった身体を引きずりながら向かいの部屋を伺うと、ちょうど男が小さな女の子を抱えて出てきたところだった。
「いまガキ下に連れてッから、そこ突破されんじゃねえぞ」
通話先の相手に怒鳴りながら背中を向ける男を見てから、そっとズボンのポケットに入れていた物を確認する。
ARを出る前、涼介さんに持たされた物だ。
__バトン型スタンガン。伸縮タイプ。
焦っているのか、背後に警戒は全く向いてない。
気絶させるのは、容易だった。
「タイミング良かった……」
ぐっすり眠り続けている女の子抱えて、その場を離れた。
階段を降りながら涼介さんを呼び出す。が、呼び出し音が鳴り続けるだけ。
明らかに取り込み中だ、出る余裕もないんだろう。
どうやってふたりに知らせよう、このままノコノコ、一階の大乱闘が起きている場所に行って下手して俺ごと人質に取られちゃ笑えない。
迷いながら、一旦外に出るために扉を開けた瞬間、人が目の前にいた。
「__ッ」
ゾーンの反動で、近くの人間にすら気付けなかった。焦ってスタンガンを振り上げたがすぐに腕を捕らえられた。
「ッ、」
やばい、どうする。
どうにか心ちゃんだけでも逃がせられないか__。
「相手の顔くらい見てからにしろ」
聞いたことのある、耳に馴染む声。
振り上げた腕を掴んでいたの宗一さんだった。
認識した瞬間、視界が暗くなった。
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