第25話 怖がってる子を見てあげてもいいよ
徐々に激しさを増していく雨の中、濡れないように狭い傘の中に身を寄せ合いながら進んだ。
雷も鳴り始めて稲光りが走り、近くでゴロゴロと音をたてているからちょっと怖い。
ふと寧々を見ると、俺のブレザーの裾を掴みながら無言で歩いて怖がっている様子。
『————バリバリ〜〜ドゴーーン!!』
「ひゃっ……」
「おぉ〜、だいぶ近くで落ちたな」
「うぅ、怖い……」
「俺も普通にビビった」
寧々が頭を俺に寄せてきて怖がってるし、この雷雨の中歩くのはさすがに危険なので近くのコンビニに入ることにした。
(てか寧々ちゃん近っ! 俺めっちゃ頼られてるじゃん!)
だが店内に入っても、ゴロゴロと聞こえてくる雷に怯えているようで、がっしりと裾を掴んで離さない寧々。
「もう店入ったから怖くないって」
「まだ聞こえますぅ」
このままの状態が続くとカップルだと誤解されそうなので、地下に設置されているイートインコーナーに腰を下ろすことにした。
「ここなら安全だから。ほら、音もほとんど聞こえないよ」
「お騒がせしてごめんなさい」
「まあ雷好きな人とかいるわけないし、大抵の女子は怖がるからしょうがないって!」
玲奈だったらどんな反応するか気になるな……今度雨の日に敢えて連れ出してみよう。
「寧々ちゃんって姉の奈々と全く性格違うよな」
「姉は明るいですからね。私はジメっとしてて、陰キャって言われてて、カビみたいって言われてます」
「過小評価し過ぎ!」
顔はかなりべっぴんさんだと思うけど、下向き加減で中々目を合わせようとしないから表情が暗く見えるんだよな。
無理に明るくする必要はないと思うけど、もう少し心を開いてもいい気がする。
ここは優しく接して心を開かせてやるのが俺の務め、やましい考えなど微塵もない!
「雷が遠ざかるまで滞在するだろうから、なんか飲み物買ってこようか?」
「ではブラックコーヒーお願いします」
「了解。ちょっと待ってて」
上の階に戻って頼まれた無糖のブラックコーヒーと俺用のコーラを購入して戻ってきたのだが、寧々は寝ていた。
さっきまで『きゃっ』とか乙女みたいな悲鳴をあげてたかと思えば、安心し切って寝てるんだから……可愛い。
俺は辺りをキョロキョロと不審者のように見渡し、玲奈が見ていないことを三回くらい確認した後、頬っぺたを突っついてみた。
「うりゃ、プニプニ」
「zzz……」
続いて頬っぺたを軽く優しげにツネってみた。
「うりゃうりゃ」
「zzz……」
「マジで熟睡してるな。コーヒーって眠気覚ましだったのか」
続いて耳に生暖かいそよ風を送ってみた。
「ふっ〜〜」
「ふわぁっっ!!??」
「あっ、起きた。おはよう寧々ちゃん、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔しちゃって、なんかあったの?」
「いえ、夢で不審者に襲われてる夢を見てまして、なんか怪しげな息を吹きかけてきたので慌てて逃げていたんですけど捕まってしまいました」
「それで飛び起きたのね。ほんと誰だよ、夢でも許せないよな!」
……俺氏、不審者認定された件。
まあバレてないから問題はないと考えつつ、とりあえず購入した飲み物を渡してあげた。
「コーヒー買ってきてあげたから飲んで眠気覚ましなよ」
「夜更かしし過ぎて実は寝不足だったんです」
「ふ〜ん、勉強?」
「漫画です」
「どんな漫画が好きなの?」
「寝取……違っ……ほのぼのした恋愛系の漫画が大好きです!」
(NTRブハっっ…………笑うな俺。趣味趣向は人それぞれなんだから)
まあこんな感じで少しでも打ち解けてくれれば幸いで、俺も嬉しい。
スマホをいじりながら時より会話を挟みつつ時間を過ごし、雷の音が聞こえなくなったのでコンビニを出ることにした。
未だ止まない雨の中、相合い傘をしながら歩き続けてようやく駅の改札前に到着した。
「はぁ〜しんどかった。寧々ちゃん濡れてない? 大丈夫?」
「私は大丈夫、送ってくれて助かりました」
「このくらいなんてことないよ、気にしないで」
そういえば玲奈との一件で完全に失念していたが、猫のキーホルダー預かってたんだっけ。
奈々に渡すの忘れてたから返してあげないと。
「あとこれ、多分寧々ちゃんが落とした物でしょ? 食堂で拾ったから返すよ」
「それ、私のっ」
「おっ、良かった良かった」
「大切にしてた物だから……見つかって嬉しい」
キーホルダーを受け取った寧々は、顔を横にしてピタっと俺にくっ付いてきた。
(手で制服を掴んできちゃってるんだけど、やっぱり懐かれちゃった感じなのか)
うーん、分からない。
なんだか保護者的な位置付けになってるよね。
恋愛的な感情とは程遠いが、助けてやりたいと思わせられる不思議な感覚に包まれているのだ。
「寧々ちゃんまだ怖いの?」
「いえ……こうしてると少し落ち着くので少しだけお願いします」
「そっか。けど早く帰って着替えた方がいいぞ」
「あったかいからもう少し」
「寧々ちゃんって甘えん坊さんだったんだな」
「そんなことないです」
ほんと高校生には見えない。
大きなおっぱいがしっかりと当たってて成長した女の体を感じてるもんだから、高校生で間違いはないんだけど……まあ大丈夫、玲奈のエロさと比較してみても、こんなんで欲情したりしないから。
少ししたら落ち着いたみたいで、律儀にお礼を言ってきた。
「今日はほんとに助かりました。ありがとです……!」
「風邪ひかないようにね〜」
「はい♪」
僅かに笑みを浮かべながら、こくりと頷いて駅のホームへと消えていった。
(不思議な女の子だなぁ)
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