第5話 夜の公園で見られたい



 店内での十秒は思ったよりもあっという間に過ぎ去ってしまい、少しだけ残念に感じている。


 ワイシャツから見える谷間が深すぎて、この場でもっと先が見たいと妄想が膨らんでいた。


 こんな大サービスをしてもらったのだから、その豊満な胸をしっかりと褒めてあげよう。


(大っきくて……柔らかそうだね)

(ありがと、ここはお店だから……次はもっと見せてあげるから楽しみにしてて)


 次は一体どこまで見せてくれるんだろう。


 俺の赤くなって興奮し切った顔を確認して、何やら納得した表情を見せていた。


 俺自身の満足度も高まっている。


 興奮が冷めやらぬ中、厨房に戻って他の客の料理を作る。


 服の上からとはいえ、あんなに間近で女子の胸を見たのは初めてだったから、欲情し過ぎて頭が回ってない。


 普段なら何の問題もなく作れる簡単な料理だが、頭の中に胸の谷間が現れて、仕事の邪魔をしてくる。


 バイト先の店内で見る霧島さんは、学校にいる時とは違った美しさがあって、新鮮でずっと見ていたくなった。


 昨日のバイト以上に集中力が散漫になってはいるが、見っともないところは見せたくないと思い、気を引き締めて仕事を続ける。


 牛丼を平らげた霧島さんは、礼儀正しく挨拶をして、機嫌良さそうに手を振りながら店内を後にした。


 外に出てからもチラチラとこちらを振り返っているが、最後の最後まで見ててほしいって顔をしていて子供みたいだ。


 そんなこんなで蕩けるような一時ひとときが終わり、今日は店長に怒鳴られるような失敗もなかったので、普段通りにバイト先を後にする。



 ◆◇◆



 帰り道を一人で歩く。


 空が夕焼けに染まっていて辺りが暗くなりつつあり、静けさが増している。


 帰り道に子供用の小さな公園があったので、何かに吸い込まれる様に、何気なくベンチに腰をかけようとすると……。


 またしても霧島さんの登場である。


「やっほ!」

「き、霧島さん? 帰ってないの?」

「うん! 待ってた!」


 どうやらこの子は俺に見てもらわないと気が済まないらしく、ちゃっかりとベンチに座ってニヤけているのだから驚きだ。


 近くで十秒間見られたくらいでは、やはり充分な満足感を得ることは出来なかったのか。


 飲食店を出てから真っ直ぐに歩いていけばこの公園に行き着くので、恐らく俺をずっと待っていたのだろう。


 若干ストーカー染みてはいるものの、霧島さんは変態って訳じゃない……多分な。


 辺りが徐々に暗くなっていき、公園に二人きりで取り残されている。


 ベンチに座り、お互い顔だけ向き合って何も喋っていない異様な状態だ。


 俺はひたすらに美しい顔を眺め続ける。


 綺麗なパッチリとした目でまつ毛が長くて、お肌すべすべで、唇がぷっくりしてて、後れ毛がピョコンと立っていて……可愛すぎだろ。


 だけど、じっと見つめ合ってるだけって……めっちゃ気まずい!


 俺はこういったドラマっぽいシュチュエーションに慣れてないし、どう反応すればいいのか分からないんだ。


 沈黙が流れて思わず目を逸らし、あさっての方角を見てしまった。


「空じゃなくて、私を見て欲しいな」

「ごめん。ちょっと照れちゃったからつい」

「そういう所かわいい♪」

「霧島さんも凄く可愛いよ」


 霧島さんは顔を傾けて、腑に落ちない様な表情を浮かべている。


「"霧島さん"ってなんか他人行儀っぽいから、名前で呼んで♪」

「うん……」

「早く早く〜」

「わかってるって…………玲奈っ」

「やっと言えた!」


 完全に弄ばれてる感が否めない。


「でもさ……まだ興奮してない感じだよね」

「興奮はしてないけど緊張はしてる」

「うーん、じゃあさっきの続き……見たい?」

「望む所だ。ガン見してやるから覚悟しとけよ」


 ガン見などと強がってはみたが、本当のところはだいぶビビって、ビビり散らかしている。


 玲奈は俺が興奮する様子を見て自分の欲求を満たしているからタチが悪い。

 

 見られていることを実感したいから、経験値が低い彼女いない歴=年齢の俺は、玲奈に取っては打って付けの相手だ。


 百戦錬磨の手慣れたチャラ男相手に見せびらかすことを望んではいない。


「段々暗くなってきちゃって、少し見え辛いかもだけど……」

「目を凝らして見るよ」


 玲奈はブレザーを脱ぎ、綺麗に畳んでベンチの上に置き、いつものようにそっと呟く。


「ちゃんと見ててね」


 顔を赤らめながらウットリと見やるような表情を浮かべてデレている。


 ワイシャツの上のボタンから外していき、徐々に豊満なおっぱいの形が露見して谷間が見えてきた。


「私の素肌、綺麗?」

「うん。すっごく艶があって綺麗だよ」


 首から鎖骨、胸元までの肌が露出し始めているので、目のやり場に困っている。


 日焼けで少し焼けているのが健康的で、ブラジャーの日焼け跡がくっきりと残っている。


 ……んっ、日焼け跡?


 何かがおかしい。 


 本来その豊満な胸を守るための下着があるはずなのに見当たらない。


 どれだけワイシャツのボタンを外そうとも、一向にブラジャーの片鱗すら見えてこないのだ。


 玲奈は俺にトドメの追い討ちを仕掛けてくる。


「私のおっぱい生で見れば……ちゃんと反応してくれるのかな」

「うっ、強烈な刺激だ……」


 俺は既に興奮で言葉を失いつつあった。


 玲奈は下着を着けていない。


 学校にいる時から今の今までずっとノーブラで生活していたのだろうか。


 下着とは圧倒的にレベルの違うおっぱい本体を前にして、今までとは一線を画す衝撃で気絶してしまいそうだ。


 だが俺の予想とは裏腹に、おっぱいの全てが曝け出されることはなく、ワイシャツに引っかかって上手い具合に隠れていた。


 玲奈はギリギリの焦らしプレイに快感を覚えている。



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