『見ていいよ』

第21話 スカートの中身を見ていいよ



 イカ墨パスタを頼んだ俺に、『フーフー』してくれなかったのは少々残念ではあったが、他愛もない雑談を交わして楽しみ、サイセリアを出た。


 歩きながら千里が玲奈に対して改めて謝罪の意を示す。


「もう一度言わせて。さっきはゴメン! 何であんな熱くなっちゃったんだろアタシ……だから今度ごはん奢らせて!」

「いいよいいよ、私も酷い事口走ってたと思うしゴメンね。じゃあ、可愛い服一緒に買い行ったりしたいかも」

「おっ、いいねそれ! 今度予定合ったら行こっか!」

「そだね! 千里ちゃんってお洒落でファッションに詳しそうだから色々教えてよ」

「アタシに任せなさい!」

「ふふっ、ありがと!」


(是非ともこの俺に購入したファッションを披露して頂きたいものだ!)


 別れるまでの道中、何やら二人は楽しそうにガールズトークをしてたみたいで一安心……だと思っておこうかな。


 後ろから声をかけて混ざりたい気持ちもあったのだが、変に横槍を入れるのも野暮だと思い、男の俺は、寂しくトボトボと後ろから着いていったわけだ。


 肩身狭し、だが仲直りしてくれて良かった。



 ◆◇◆



 週明けの登校日。


 サイセリアに行く前の玲奈とのRINEのやり取りを読み返し、若干の後悔を滲ませていた。


 玲奈からの長文メッセージの返事をなんて返そうか悩み、結果、送った内容はこうだ。


『玲奈がどうしてもって言うなら見てやってもいいぞ!』


 ……安易だった。


 さすがに公衆の面前で曝け出しはしないだろうとは思っていたが、まさかの学校に持ち越してきたのだ。


『分かった。今日は千里ちゃんもいるから、お楽しみは次の学校まで取っておくね♪』


 との事なので、昨日の夜は心臓がバクバクしすぎて眠れない夜を過ごして、若干寝不足である。


「まさか本当にノーパンで来たりしないよね!」


 人気者の玲奈がそこまでの大胆行動に出るとは考え辛いが、やりかねないから怖いのだ。


 おっぱいよりも、更に先の段階に突入しようとしている今日この頃。


 この時点で俺のテントは脈動を始めている……落ち着け、まだそうと決まったわけじゃない。


 冷静に事に当たろうじゃないか。


 今日は慎重に玲奈の動きを観察しよう。



 ◆



「おっはよ!」

「玲奈おはよ。今日も元気いっぱいだな!」

「うん。今日はすっごく楽しみだから、テンション上がってるの!」

「そんなに楽しいことあったっけ……?」


(ふふっ、まだ秘密だよ♪)

 

 ……囁き方がいつもよりエロい!


 うん、この子絶対パンツ履いてない。


 俺は一ヶ月と半分は近くで見てやってるんだから、玲奈の行動心理は理解しているつもりだ。


 見ろ、スカートがいつもよりも長めに調整されている、これは他の人間には絶対に見られてはいけないという感情の現れだ。


 椅子には不自然にクッションが敷かれている……何故? 何のために?! 直接椅子に触れるのが不衛生だからなのか?


 そして椅子に座る際には、お尻を気にしながら座っていることから、スースーしてるんじゃないかと容易に想像できる。


 玲奈の焦らした時の表情を何度も見てきた俺からすれば、この変態じみた目、顔色、口元から察するに、間違いないのだ。


 俺には最近になって鍛えられた観察眼があるので、この程度はお見通しである。


 ここにきて遺憾無く痴女っぷりを……否、見られたい症候群を発揮してこようとは……俺の心臓頼むからもってくれよ。



【一時限目】


 俺はチラリと玲奈の様子を伺う。

 これといって変化は見られない。

 教師に当てられて元気よく回答をしている。


 日曜日に千里と勉強会を開き予習をしてきたらしく、学力が上昇したのだろうか。


 てか、かなり仲良くなってないか?


 

【二時限目】


 教室移動があったので席は近くじゃなかった。


 階段を登りながらさり気なく下から覗き込もうとした俺だったが、あえなく失敗、ラッキースケベは無効となった。


 あまりかがみ過ぎると、俺が変態扱いされかねないから断念せざるを得ない。



【三時限目】


 前の席の霞田かすみだ奈々ななとお喋りをして教師に注意されている。


 ちなみに霞田奈々は双子の姉で、妹は霞田かすみだ寧々ねね、クラスは違うが仲の良い姉妹だ。


 そして、少しアワアワしている玲奈はやっぱり可愛いかった。



【四時限目】



 やっと玲奈が囁き始めた。



(もう見たいの我慢できない?)

(えっ、何の話かな?)

(だって隼人くん、今日ずーっとソワソワしてるから……)

(お、俺は常に平常心だぞ!)


 シラを切るようにとぼけるが、玲奈の観察眼は俺以上に卓越しているので、俺がスカートの中身を見たくてしょうがないことなどお見通しなのだ。


(無理しないでいいんだよ)

(では今日も拝見させてください!!)

(じゃあ……ちょっとだけ見せてあげる)

(は、はい!)


 玲奈は前を向いたままスカートの裾を持ちジリジリと捲り上げていき、焦らしに焦らしながら、ゆっくりと大胆に持ち上げる。



 ((パンツ履いてるの? 履いてないの?))



 スレンダーな脚だが、肉付きのいい太ももの辺りが露出され始め、太ももの付け根、そしてお尻が見える寸前だ。



 ((うはぁ〜早く早く早く早く))



 もう授業の内容など、右耳から左耳へと受け流されて貫通してしまっている。


 耳が真っ赤に染まっているのが分かるくらいに、血液の逆流が止まらないのだ。


 そして、俺のきょどった顔を見ながら、玲奈が質問してきた。


(問題です。今日のパンツは何色でしょうか?)

(えっ?! うーんと……白?)

(ハズレです♪)

(だったら……水色!!)

(もぉ全然違うよ。しっかり見てくれないと)













(やっぱ……履いてないですよね!!?)


(正解❤︎)



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