第3話 授業中でも見られたい
霧島さんが覚醒してしまった次の日。
先日はバイトであらゆる凡ミスを犯し、店長にこっ酷く叱られている。
頭の中にこびり付いた、純白で魅力のあるパンツを忘れ去ることが出来ずに集中力を欠いていたからだ。
店長に対して『さっき美少女の下着見物してたんで集中出来ません』などと言えるはずもなく、落っことした食器をひたすらに片付ける作業をさせられた……。
現在の時刻は七時半。
夜中々寝付けず、気を紛らわすためにゲームをプレイしていた影響でアラームをスヌーズに切り替えまくっていたら、こんな時間に……。
習慣付いていた朝食を諦めて、サクッと準備を終えて出発した。
猛ダッシュで通学路を短距離走バリに走ってギリギリ間に合った。
校門前の先生に少しドヤされながら、教室へと呼吸を整えて進む。
教室のドアをゆっくりと開けてから真っ先に自分の席を確認した。
霧島さんはまだ俺が来たことに気付いてない。
窓の外を静かに眺めている姿が確認でき、やっぱり昨日の行動を少し後悔しているのかもしれないと感じた。
なんせ自分の全てを曝け出してしまったのだから、俺に弱みを握られていると言っても過言ではないからだ。
ゆっくりと慎重に席へと近付いていく。
今まで感じたことのない緊張感である。
霧島さんがこちらに向き直り……目が合った。
「おっはよ!」
「霧島さんおはよう」
何だか思っていたより全然元気で、何か後悔しているようには感じない。
いつも通りニコニコしながら他愛もない雑談が成立している。
全てはゲームをやり過ぎて現実世界と混同した、俺の妄想に過ぎなかったのかもしれない。
もしくは夢だったとか?
そんなことを思いながら一時限目の授業に突入したのだが……その甘っちょろい考えは一瞬で打ち砕かれた。
◆◇◆
————物語は冒頭へと戻る。
一時限目の数学の授業が始まり、皆が先生の解説に耳を傾けていた。
僅かに雑談をする声が聞こえるくらいで、基本は静かに勉学に勤しんでいる。
そんな静寂に満ちた空間の中で、ボソっと耳元で囁いてくる霧島さん。
耳に吹き付ける優しい吐息と共に発せられた言葉は、俺の心に大きな衝撃を与えた。
(隼人君、コッチ見て)
(えっ?!)
指で示された方向に目をやると、そこには昨日と大きくかけ離れた黒き楽園が広がっていたのだ。
自らスカートの一部分を捲り上げて、その黒くて嫌らしい卑猥なパンツを見せ付けている。
(霧島さん……その……パ、パンツ見えてるよ)
(うん。見せてるんだよ♪)
見られたい病は全く完治していなかった。
むしろ下着のエロさを変えてきた分、悪化しているとも言えるだろう。
現役バリバリJKの生下着を
しかもこれは半ば強制で、俺に拒否権は存在しない。
(ちゃんと見てくれないと……先生に『隼人君がスカート捲ってきました』ってばらしちゃうよ?)
(そんな横暴な!)
俺を色仕掛けで誘惑するかの如く、自分の下着を見るよう、小声でやんわりと強制してくるのだ。
冤罪とはいえ暴露された場合、俺の評判は地の底へと転落するだろう。
女子が泣き顔一つ見せれば、たちまち俺は悪者となり批判を受けるのは目に見えている。
今まで積み上げてきた内申を損なえば大学受験や就職に影響を及ぼすから、それだけは何としても避けねばならない。
(ちゃんと見てるし、眼福してるよ!)
(興奮してる?)
(い、いや……もちろん!)
(そっか。席からじゃ見え辛いから刺激、足りないよね)
確かに席からだと首を少し動かさなければ見えないし、Tバックの側面しか見えてないから、昨日の真正面よりはレベルがだいぶ落ちている。
パンツ……否、パンティーとか初めて見たけど、本当に危うい造りになってると思った。
少し動かしただけでエグい物が顕になるから恐怖でしかない。
霧島さんは、間髪入れずにボソッと囁く。
(次はスカートフワってするから見逃さないように♪)
いつフワっとさせるか気が気じゃないが、目玉を最大限に範囲稼働させて、下着と教壇にいる先生に気を配る。
「なんか息荒いけど体調でも悪いの?」
うん。
色んな意味で本調子ではない。
右の座席に座る
難易度エクストラのこの状況を僅かに打開したのは、一年の頃同じクラスだった女子でそこそこ仲も良い。
「全然問題ない、この通りピンピンしてる」
「顔赤いけど……キツそうなら先生に言ってあげるよ?」
「待って先生だけはダメ!」
「そう? ならいいけど)
余談ではあるが、俺のタワーはビンビンしていて元気一杯だ。
だがしかし、お陰様で冷静さを取り戻せた。
毎時間こんなんだと色んな箇所が持たなくなるし、千里に心配かけさせちゃうだろう。
頑張って霧島さんを満足させなければ、今日は一日中繰り返される可能性が高い。
霧島さんが再びボソボソッと呟く。
(邪魔な人が前向いたから、カウントダウン開始するね)
千里は当たり前のように邪魔扱いっと。
さて、カウントがゼロになった瞬間から最終決戦が始まるので、そこから十秒間ガン見してあげよう。
(サン)
(ニー)
(イチ)
(❤︎)
俺は鼻血が噴き出しそうになるのを必死で堪え、授業中に頭を軽く下げて、マジマジと見て差し上げた。
十秒という時間は想像以上に長いもんで、その間だけ呼吸が止まっていたと思う。
こんなことが平然と執り行えるのは、窓際の一番後ろで、且つ隣同士だからであって、まさに奇跡でしかない。
(ホッカホカの女子の生下着見れて……ちゃんと欲情できた?)
(最高だった)
(うんうん、また明日やろうね)
(エロっ……気絶しそう)
やっと落ち着きを取り戻した霧島さんは、聞いていなかった授業の分を取り返すべく、課題を進めていた。
俺の中では騒いでいて周りに気付かれたと思っていたが、意外にも全くバレていない。
霧島さんは周りには見せたくないから、コソコソと俺に耳打ちしてくるのだろう。
本当に俺だけしか知らない一面で、他人には受け入れて貰えないというのは、少しばかり可哀想ではある。
決めた。
理解してあげられるのは俺だけ。
全力で受け止めてやろう。
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