第26話 体育祭【種目決め】



 刻は過ぎ、俺は中間テストとの戦いを無事に終えた。


 今回のテスト結果は今までで一番好成績だったことに驚いてはいたのだが、おそらく理由は単純で、過去最高にモチベーションが高まって勉強に打ち込めたからだ。


 将来的な危機感から勉学に励んだのもそうだが、何よりも……玲奈のあんなモノやこんなモノまで見てしまって脳が活性化していたのだから、当然である。


 あの日、保護者面して寧々ちゃんを送り届けて自宅に帰るなり、俺が最初に放った言葉は……。



『玲奈ツルンツルン〜〜〜!!!!!』



 あまり説明し過ぎるとお叱りを喰らう可能性があるので端的に表現するならば……………………毛がほぼなかった。


(頑張って処理してきたんだな……)


 などと卑猥な物思いに耽ると同時に、例の如く謎の奇声を発しながらベッドをゴロゴロと転がり回っていたのだ!


(入れる穴があるなら入りたい!)



 ◆



 さて妄想はこれくらいにしておいて、六月上旬には体育祭が控えている。


 今日のホームルームでは、体育祭で出場する競技を決めるため、体育委員所属の霞田奈々が教壇に立ちながら取り仕切っていた。


「みんな〜学校生活楽しんでるかぁ〜?!」


『おぉ〜〜!!』

『何だ何だ?』

『奈々の奴やけにハイテンションだな』


「青春してるかぁ〜?!」


『おぉ〜〜!!』

『うんうん、アオハルだねぇ〜♪」

『青春してるぜぇぇ!!』


「はいっ!! 今日は待ちに待った体育祭の種目を決めるぞ〜! この中から出たい種目を選んで……」


 黒板に書かれた種目一覧を指差しながら取り仕切る奈々の言葉を遮って、更に騒ぎ始めるクラスメート達。


『体育祭っつったらやっぱリレーだろ!』

『何言ってんだよ。大縄跳びに決まってんじゃんか。皆で団結してこそ青春ってもんだ』

『わたしは走るの苦手だからスウェーデンリレー以外はパス〜』

『好きな人の走りが見れる……楽しみ♪』

『運動めんどくせ〜やる気でねぇ〜』

『去年騎馬戦なかったよね、面白そう!』

『僕はパン食い競争で歩きながらパン食べてゆっくりゴールするんご』

『お前はパン食いたいだけだろ!』


 みんな好き放題発言しまくって騒いでいるが、気持ちが浮き足立つのは分かるってもんだ。


 中間テストを乗り越えた後の重要イベント、高校生の青春の一つとも言える体育祭なのだから。


「静粛に静粛に〜。みんな二回目だから分かってると思うけど、最後のスウェーデンリレーは全員参加だからね。あとで希望を一人ずつ紙に書いて集計取るから、少し考える時間を設けま〜す」


 天ヶ崎高校の体育祭は、各種目の中から自分の好きな種目を最低二つ選んで出場する方式だ。


 種目が偏り過ぎることも多々あり、数日かけて調整することもあるので体育委員は面倒臭くて皆やりたがらない。


 かくいう俺も、出場競技には前回同様に頭を悩ませているわけだが、今回は去年と状況が大きく変わっているのだ!


「玲奈は何の種目に出るつもりなの?」

「うーん、得意な種目に出たいと思ってるけど、まだ悩んでる〜」

「今年から始まった新しい種目も何個かあるんだけど、確かに悩むよな」

「騎馬戦って男子限定でしょ?」

「さすがに女子担ぐのも担がれるのもセクハラ行為になる可能性あるからな」


(私は別にいいんだけどなぁ)


 うむ、真下から見られたいのだろう。


 だがそれは不可能なので、俺はある提案をしてみた。


「だったら二人三脚一緒に出ない?」

「わぁ〜それいいね、出る出る!」


(隣でちゃんと見ててあげるから)

(うん! 隣で一緒にゴールインしようね♪)


 なんだろう、このゴールインって響き、すごい嬉しいんだけど!


 玲奈に触れまくれるプラス、俺のカッコいい姿を間近で見てもらえて一石二鳥、絶好のチャンスなのだ!


 でも横を見ながら走ったら怪我する可能性大だし絶対勝てないから、そこだけ気を付けないといけない!


「じゃあ決まりだな」

「残りの期間頑張って練習して一位取ろうね!」

「おっけ〜、気合い入ってきた〜!!」

「おぉ〜!!」


 一つ目の種目を決めて気合いを入れている最中、玲奈が千里と他の女子生徒に声をかけられた。


「玲奈、アタシ達とあの・・種目一緒に走らない?」

「いいね! 去年見てたけどすごい楽しそうだったから、出てみたいって思ってた!」

「こっちで女子だけの作戦会議しよっ!」

「ははっ、楽しそう! 隼人くん、ちょっと行ってくるね!」


 玲奈は席から離れて女子仲間に加わっていった。


(玲奈を取られた〜)


 既にクラス内では仲の良い人同士で集まって話し合いを始めており、俺と雅也の周りにも交流の深い友人が集まってきた。


「お前らやっぱり来ると思ってたぜ」

『隼人と雅也も騎馬戦やるつもりなんだろ』

「まあそんなところだ」

『俺たち五人が一致団結すれば余裕だろ。他のクラスを圧倒して一位もぎ取るぞ!』

「違いねぇ、うし、ちょっとむさ苦しくはあるが、いっちょやったりますか!!」


「「「「「 勝つぞぉぉ!! 」」」」」


 これで二種目も決まった。


 残るはクラス対抗戦のリレーだ。


 体育祭の締めくくりであるスウェーデンリレーは全員参加型の種目となっており、百メートル、二百メートル、そしてアンカーの三百メートルとそれぞれが担当する距離が異なる。


 当然アンカーはかなり重要な役割を担っており、基本的には足が速い人が担当することが定石だろう。


 総合優勝するのに一番重要なポイント稼ぎの競技で、スウェーデンリレーの結果次第では一発逆転なんてこともあり得る重要な競技だ。




「はぁい、みんな席戻ってね〜」


 体育委員の奈々が再び教壇に上がり、希望の種目とスウェーデンリレーの走行距離の集計を取っていく。


「うんうん、まあまあ上手い具合にバラけたかな。後で被りが多いところ調整して連絡するから、各自確認するように!」


『はぁ〜い!!』


「よし、あとは全員で協力して総合優勝を勝ち取るだけだね! じゃあみんな〜めいいっぱい楽しんで盛り上がって、てっぺん取っちゃお〜!!」


『おぉぉ〜〜〜!!!』


 何とかまとまりを見せた二年C組であったが、果たして優勝を掴み取ることはできるのだろうか。


 熱き高校生達の戦い、決戦の火蓋がついに落とされる!



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