第19話 女子同士の諍いは見せたくない



(何故……どうしてこうなった??!)


 近くにはタイプの異なる二名の美少女。


 【右】承認欲求強め美少女、霧島玲奈。

 【左】才色兼備の強気な女、遠山千里。


 とある飲食店の四人がけのテーブル席にて、二人の間には見えない火花が散っていた。


 声をかけることすら憚られるこの状況、誰か………助けてぇぇぇ!!



 ————二時間前。



 今日は土曜日で学校は休みだ。


 朝九時頃に起床してスマホを確認すると、三件のRINEの通知が目に入ってきた、


 一つ目は訳の分からない出会い系サイトからの迷惑RINEだったから、即座に削除する。


 二つ目は玲奈だ。


 かなりの長文なので、心して見て頂きたい。


『おはよう。いきなりでゴメンね。今日って暇かな。もしも暇だったらランチでも一緒に行きたいなぁって思って連絡してみたんだけど、隼人くんのバイト先の近くにあるファミレスにでも行かない? あそこって高校生に人気がある場所だから充分楽しめると思うし、安いからお腹いっぱい食べられるよ! 窓際の席なら私の色んな箇所見れちゃう特典付きで大サービスしてあげられるからお願い! 大丈夫だよ、バレないように上手く見せてあげて満足させるつもりだから。最近同じパンツばっかでごめんね。うん、そろそろ飽きちゃったよね。だから……隼人くんがどうしてもって言うならパンツ履かないで行ってあげてもいいんだよ……? 隼人くんって……その……エッチな子が好きって知ってるから聞いてみたんだけど、どうですか? 返事待ってるね♪』




 ……俺はなんて返信すればいいのだろう。




 『じゃあ、是非是非ノーパンでお願いしますぅぅ』…………とか言えるかぁ!!!


 玲奈だけじゃなくて下手したら俺まで逮捕される可能性あるし、わざわざ飲食店でやらなくても……痴女じゃん……見たいけど!


 ……。


 まあいいから落ち着け俺、とりあえず他のメッセージを確認してから熟考しても遅くはない。


 予想通りではあるが、三つ目は千里だ。


 こっちもこっちで特殊なメッセージが届いている。


『朝早くにごめんなさい。今日って昼とか空いてるかな。無理はしなくていいから、ほんとに暇だったらでいいからさ……近くのサイセリヤ・・・・・にご飯食べに行かない? ほら、まあ……あんまりこういうこと言いたくはないんだけど、アタシに借りがあるじゃん……今まで勉強教えてあげたんだから、たまには付き合いなさいよ』




 ……俺はなんて返信すればいいのだろう(二回目)




 十分間悩みに悩み抜いた結果……三人で行くことにした。


 今回の食事はどっちが上とか下とかは関係なく、玲奈と千里、両方に楽しんで欲しいと思ったからだ。


 だがしかし、この決断が正しかったのか、今となっては定かではない。



 ————そして現在に至る。



 歩いてサイセリヤに向かっている段階から、なんかぎこちなくて気まずい空気が流れていたので、あまり話という話はしていない。


 何とか無事に到着し、店員さんに連れられ、サイセリヤの一番奥側の席に案内されて座ることになったのだが……。


 まず俺が先に窓際に詰めて座った。


 すかさず玲奈が横に座ろうとする。


 千里が玲奈の肩を軽く引っ張って、自分が横に座ろうとした。


 そして、玲奈が嫌がったところから女同士の壮絶なバトルが始まったのである。




「千里ちゃん、いきなり肩引っ張らないでよ」

「ちょっと隼人と話があるから、そっちの席はアタシが座っていいかな」

「何の話するの? 私に聞かれちゃマズイこと?」

「別に何でもいいじゃん」

「勉強のことかな」

「玲奈に言う必要ある?」



(顔がマジになってるって、どうすんのこれ)



「すごい挑発的だね。休日で遊びに来てるのに、勉強とか息が詰まるような話されたらつまんないし、私が座ってあげた方がいい気がする」

「勉強道具もないのにどうやって勉強なんてすんの、全然見当違いだよ。だいたい毎日学校で隣なんだからいいじゃない」

「それを言うなら千里ちゃんだって隣じゃん」

「いや、隣じゃないし、一人分のスペースは空いてるから」

「そういうの屁理屈って言うんじゃないの?」



(アカン、喧嘩始まってるわ)



「まあ隼人とは長い付き合いだから、今日はアタシに譲るべきじゃない?」

「それ関係ないし意味分かんない。千里ちゃんって結構我儘な女子だったんだね、優等生なのに。いいじゃん、いっつも勉強勉強って隼人くんの隣にくっ付いてるんだから」

「アンタねえ、私は隼人のことを考えて教えてやってんの……そっか、頭悪いから可愛さで誘惑することしかできないんでしょ?」

「可愛いとか嫉妬? 中身でしょ大切なのは」

「嫉妬って……それこっちのセリフ。それにアンタの中身もたかが知れてるじゃん」

「千里ちゃんも大概だけどね」

「は? マジでムカつく」

「私も久しぶりにムカついた」



(これは止めないと大変なことになりそうだ!)



「ちょっ、ストップストップ! せっかくの休みなんだから仲良くいこうよ!」

「……」

「……」


 ソッポを向いて目を合わせようとしない二人を前に、なす術なく冷や汗をかき始める俺。


 そこまで熱くならなくても……。

 女子の戦いって怖くて恐ろしい。


(誰か助けてぇぇ)


「と、とりあえずさ、好きな飲み物持ってきなよ。ドリンクバー頼んでおくからさ」

「うん。ごめんね」

「なんか悪いわね。ちょっと頭冷やしてくる」


 玲奈はドリンクバーへ飲み物を取りに向かい、千里はトイレへと駆け込んでいった。



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