黄金色の稲穂3
「さあ、やるど!」
と、一人のカワズ殿が元気よく声を上げると、他のカワズ殿たちもそれに続いて、さっそく苗を植え始めた。
水を張った田んぼの中をぴょんぴょんと跳ね回りながら、カワズ殿たちは手慣れた様子で田植えの作業を進めていく。
水に浸かるのが好きらしい彼らは、遊びの延長のように、楽しげに作業をしていた。
アサギは、彼らの動きを見ながら、自分も自然とその流れに溶け込んでいった。
田んぼの中にゆっくりと足を踏み入れ、冷たい水が膝のあたりまで浸かるのを感じる。
周囲を見回すと、カワズ殿たちがすでに植え付けを始めていて、手際よく苗を一本ずつ土に差し込んでいるのが見えた。
「ほれ、アサギ殿もこうやるだて」
と、一人のカワズ殿が近づき、手に持った苗を見せながらアサギにやり方を教えてくれた。
「まず、この苗っこを一本ずつ分けて、こうして……根っこが浮かばねーように、ちょいと土に押し込むんだてな。ほれ、こんげふうに」
と、カワズ殿は実演してみせる。小さな手が器用に苗を扱い、水面にそっと苗を差し込むと、泥が優しく根を包み込んだ。
アサギが真似てみると、カワズ殿たちは頷きながら
「そうだ、そんげだて。上手いがん」
と口々に声をかけた。
「なーんも難しいことねぇで。あとは、まっすぐに列を作るようにして、どんどん植えていけばええんだわ。わくども最初はぎこちなかったけど、やってるうちに慣れっぺ」
と、隣のカワズ殿が笑いながら言う。
アサギは彼らのアドバイスに従い、見よう見まねで苗を一本一本丁寧に植え始めた。
手のひらに伝わる冷たい水の感触が心地よく、苗を植えるたびに水が軽く波打つ。
その感触が何とも心地よくて、アサギは次第に作業に夢中になっていった。
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