黄金色の稲穂22
二人が去った後、無人の駅の壁や床に、ぼんやりと文字が浮かび上がる。
「……未だ見つからず……」「……不安と焦りが……」「……による影響……」「……囁かれる噂……」
といった断片的な言葉が、途切れ途切れに現れてはすぐに消える。それらは、何かがひそかに揺れているような、不安定で掴みどころのないものをほのめかすだけで、静かに漂っていた。
まるで、誰かが隠そうとしている真実が、この場所に取り残されたかのように。
駅にはもう誰もいないはずなのに、新聞の文字だけが静かに残り続けていた。
風がひとつ吹き抜け、薄れていく文字がかすかに揺らめく。
その刹那、駅全体が風にさらわれるように少しずつ形を失っていった。
遠くで電車の音が響き、再び風が吹き抜けると、駅の輪郭はやがて霧に溶けるように消え去り、静かにその姿をなくしていった。
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