夕さり街3

ホロスケはそんな二人を見つめ、何かを理解したように小さくため息をつくと、穏やかに言葉を続けた。

「この先にルナさんが経営する店があるんだ。騒がしいけど、外よりは居心地のいい場所さ。彼女は特別な人だから、きっと気に入ると思うよ」

 マリは一瞬アサギを見つめ、小さく頷いた。

「それなら……本当に少しだけ、様子を見るだけよ」

 マリは強い警戒心を滲ませながら、慎重に言葉を選んだ。その声からは、いつでも引き返すつもりでいることが感じ取れた。

「ほっほーう、それなら善は急げだい。こっちだ、ついておいで」

 マリの返事を聞くとすぐに、ホロスケは軽やかな足取りで歩き出し、アサギとマリはその後に続いた。

 街の中心へと進むにつれ、ネオンの光は一層強くなり、賑やかな音楽と雑踏の音が耳を包んだ。

 華やかで喧騒に満ちた夜の街が、二人を引き込んでいくようだった。


 やがて、看板に「IRIDESCENCE」と書かれた店が現れた。

 看板の光は他のネオンと混ざり合いながら、強烈な輝きで浮かび上がっている。

 扉の向こうからは激しい音楽が流れ出し、周囲の音と混じり合いながら夜の空気を震わせていた。

「イリデ……、なんて読むの?」

 アサギは目の前の看板を見つめ、つっかえながら口にした。ホロスケは先に扉を押し開け、振り返ってニヤリと笑う。

「イリデセントっちゅうのさ」軽い口調で答えたホロスケはさらに扉を押し開け、続けて言った。

「さあ、ここが夕さり街で一番の居心地のいい場所だ」

 アサギはホロスケの言葉を半信半疑で聞きながら、看板の文字をもう一度じっと見つめていた。

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