夕さり街3
ホロスケはそんな二人を見つめ、何かを理解したように小さくため息をつくと、穏やかに言葉を続けた。
「この先にルナさんが経営する店があるんだ。騒がしいけど、外よりは居心地のいい場所さ。彼女は特別な人だから、きっと気に入ると思うよ」
マリは一瞬アサギを見つめ、小さく頷いた。
「それなら……本当に少しだけ、様子を見るだけよ」
マリは強い警戒心を滲ませながら、慎重に言葉を選んだ。その声からは、いつでも引き返すつもりでいることが感じ取れた。
「ほっほーう、それなら善は急げだい。こっちだ、ついておいで」
マリの返事を聞くとすぐに、ホロスケは軽やかな足取りで歩き出し、アサギとマリはその後に続いた。
街の中心へと進むにつれ、ネオンの光は一層強くなり、賑やかな音楽と雑踏の音が耳を包んだ。
華やかで喧騒に満ちた夜の街が、二人を引き込んでいくようだった。
やがて、看板に「IRIDESCENCE」と書かれた店が現れた。
看板の光は他のネオンと混ざり合いながら、強烈な輝きで浮かび上がっている。
扉の向こうからは激しい音楽が流れ出し、周囲の音と混じり合いながら夜の空気を震わせていた。
「イリデ……、なんて読むの?」
アサギは目の前の看板を見つめ、つっかえながら口にした。ホロスケは先に扉を押し開け、振り返ってニヤリと笑う。
「イリデセントっちゅうのさ」軽い口調で答えたホロスケはさらに扉を押し開け、続けて言った。
「さあ、ここが夕さり街で一番の居心地のいい場所だ」
アサギはホロスケの言葉を半信半疑で聞きながら、看板の文字をもう一度じっと見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます