黄金色の稲穂11

 提灯が風に揺れるたび、カワズ殿たちの影が田んぼに映し出され、踊る影たちが大地そのものと一体化しているようだった。

 彼らの跳ねる足音や鈴の音が夜の空気に響き、祭りの空間を優しく包んでいた。


 賑やかな光景を見ながら、アサギはふいに胸の中に小さな寂しさが芽生えるのを感じた。

 カワズ殿たちが楽しげに跳ね回り、笑い声が響き渡る中で、周りの明るさとは対照的に心が少しだけひっそりと静まるような気がした。


「テンさんとキュウさんも来てくれたら、もっと楽しいのに……」

 と、思わずぽつりとつぶやいた。

 その言葉は賑やかな音楽と笑い声に紛れてしまいそうだったが、近くにいたカワズ殿が、アサギの言葉に気づいて顔を向けた。

「あの二人は、ここに来たことなんかねぇてば。いつもあの鎮守の森の中でおるがんさ」

 と答えながら、少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。

 その一瞬の表情に、アサギはまた胸の奥に小さな寂しさが広がるのを感じた。

「なんでだろう……」

 とアサギはつぶやいたけれど、遠くから聞こえるお囃子の音が、その言葉を静かに消していき、誰もその理由を答えなかった。

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