黄金色の稲穂12

 田んぼに吹く秋風が、少し冷たく感じられた。

 アサギは寂しさを紛らわせるように、田んぼの端に目をやった。

 すると、そこにはカガチ様がどっしりと腰を下ろし、キセルをくわえながらゆったりと煙をくゆらせていた。

 彼の眼差しには満足感があり、どこか誇らしげにカワズ殿たちの様子を見守っている。

 カガチ様はキセルを一口ふかすと、しばらく煙の香りを楽しむように鼻からゆっくりと吐き出す。

 言葉には出さないものの、「今日は好きにやらせてやろう」とでも言うように、微かな笑みが彼の口元に浮かんでいた。

 その笑みは、カワズ殿たちの楽しむ様子を見守る中で、彼自身も心のどこかで安堵を感じているかのようだった。

 そんな彼の吐く煙が、秋の冷たい夜風に溶け込みながら、ゆっくりと宙を漂っていく。


 収穫を終えた田んぼに広がる秋祭りの幻想的な美しさに、アサギは言葉を失い、胸の奥に感動が静かに広がっていった。

 瞳を輝かせながら、彼はただ祭りの華やかさに心を奪われ、目の前に広がるその光景に見入っていた。

 風が吹き、提灯の灯りがゆらゆらと揺れる中、カワズ殿たちの笑い声が鈴の音が混ざり合い、夜空に溶け込むように広がっていく。

 アサギはその光景を見つめながら、「このままずっと続けばいいのに」と思わずにはいられなかった。

 冷たい風が頬をかすめても、提灯の揺らめく光が祭りの楽しさを包み込み、カワズ殿たちの声がいつまでも耳に残るように響いている。


 夜の闇が少しずつ深まっていく中、この瞬間が終わらずに続いてくれることを祈るように、祭りの賑やかさが田んぼを彩っていた。

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