黄金色の稲穂12
田んぼに吹く秋風が、少し冷たく感じられた。
アサギは寂しさを紛らわせるように、田んぼの端に目をやった。
すると、そこにはカガチ様がどっしりと腰を下ろし、キセルをくわえながらゆったりと煙をくゆらせていた。
彼の眼差しには満足感があり、どこか誇らしげにカワズ殿たちの様子を見守っている。
カガチ様はキセルを一口ふかすと、しばらく煙の香りを楽しむように鼻からゆっくりと吐き出す。
言葉には出さないものの、「今日は好きにやらせてやろう」とでも言うように、微かな笑みが彼の口元に浮かんでいた。
その笑みは、カワズ殿たちの楽しむ様子を見守る中で、彼自身も心のどこかで安堵を感じているかのようだった。
そんな彼の吐く煙が、秋の冷たい夜風に溶け込みながら、ゆっくりと宙を漂っていく。
収穫を終えた田んぼに広がる秋祭りの幻想的な美しさに、アサギは言葉を失い、胸の奥に感動が静かに広がっていった。
瞳を輝かせながら、彼はただ祭りの華やかさに心を奪われ、目の前に広がるその光景に見入っていた。
風が吹き、提灯の灯りがゆらゆらと揺れる中、カワズ殿たちの笑い声が鈴の音が混ざり合い、夜空に溶け込むように広がっていく。
アサギはその光景を見つめながら、「このままずっと続けばいいのに」と思わずにはいられなかった。
冷たい風が頬をかすめても、提灯の揺らめく光が祭りの楽しさを包み込み、カワズ殿たちの声がいつまでも耳に残るように響いている。
夜の闇が少しずつ深まっていく中、この瞬間が終わらずに続いてくれることを祈るように、祭りの賑やかさが田んぼを彩っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます