夕さり街8

 その会話の間にも、クラブにはさらに客が増え続け、喧騒はますます大きくなっていった。

 笑い声が響き、音楽に合わせて人々が体を揺らす中、再びアサギに視線が集まり始めていた。

 ちらちらと隠しきれない興味が、獲物を見つけたかのようにアサギに向けられる。

「おや、あれは……」というささやき声が広がり、客たちの視線は、一層強くアサギに向けられていた。

「あの子……もしかして」

 一人の客が囁くと、その言葉が次々に広がり、周囲がざわめき始めた。

「ああ、確かに……」

「あの子供か?」

 客たちが興味津々にアサギに視線を向け、徐々にその距離を詰めてきた。

 彼らの目には、好奇心と疑念が交じり合い、じっとアサギを観察している。

「誰か話しかけてみろよ」

「いや、隣の女の子が睨んでるだろ?」

 言葉のやりとりが繰り返され、アサギを追い詰める無遠慮な視線と質問が、彼の心に重くのしかかっていった。不安が増して息苦しさが胸を締めつけ、逃げ場のない状況が彼を圧倒し始める。

「なんでこんなところに?」

「意外とやばい奴なんじゃない?」

 無神経に次々と質問が浴びせられ、その重さがアサギにのしかかっていく。押さえ込んでいた何かが心の中で崩れ始め、アサギの頭は混乱し、手足が震え出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月23日 17:00
2024年12月25日 17:00
2024年12月27日 17:00

かぜのあお、たそがれのくに あおいひ工房 @slmnooon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画