黄金色の稲穂8

「アサギ殿、わくどが稲を刈るとこ見て覚えれ!」

 と、カワズ殿の一人が楽しそうに言う。彼の鎌は鋭く光り、スッと稲を刈り取るたびに気持ち良い音を立てていた。

 アサギも、彼らの楽しげな様子に自然と引き込まれ、手伝おうと鎌を握る。

 しかし、まだ収穫の作業には慣れず、うまく刈り取れないことが多い。

 鎌を手にするたびに、意識せずに力が入ってしまい、稲の茎がうまく切れない。

「こうやって斜めにして、優しくやるとええんだて」

 と、一人のカワズ殿が教えてくれる。

「なんも難しいことねぇよ。わくども最初はそうだったんだから、気にすんなて」

 と、仲間たちも優しく声をかける。その言葉に励まされ、アサギは再び刈り取りに挑戦する。

 まだぎこちないが、少しずつコツを掴んでいく感覚があった。


 稲を刈り取るたびに、黄金色の穂が柔らかく倒れ、カワズ殿たちはそれを束ねて一箇所に積み上げる。

 束ねた稲の山は宝物のように見え、秋の夕日に照らされて輝いていた。

「今年は豊作だわいど!」

 と、カワズ殿の一人が嬉しそうに叫び、それにみんなが「そだそだ、頑張った甲斐があったなぁ!」と笑い声を響かせる。

 お祭りのような賑やかさが田んぼを包んでいた。

 アサギは、楽しそうに作業をするカワズ殿たちを見て、自然と笑みがこぼれた。

 自分が田んぼの仲間として受け入れられていることが、嬉しくてたまらなかったのだ。

 まだ慣れない手つきではあったが、鎌を動かすたびに小さな達成感が心に広がっていった。

「やったことがなくても、こうしてやればできるんだ」と、ふと感じる瞬間があって、そのたびに自信が少しずつ湧いてくる。

 失敗しながらも、何度も繰り返すうちに、少しずつ手が慣れていく感覚が心地よかった。

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