黄金色の稲穂8
キセルを一口くわえては、ゆっくりと煙を吐き出す。
そのたびに、カガチ様は静かに微笑み、どこか威厳のある視線を彼らに送り続けていた。
その様子に気づいているのかいないのか──
カワズ殿たちは、黄金色の稲穂の海のなかで、生き生きと働き続けていた。
「アサギ殿、わくどが稲を刈るとこ見て覚えれ!」
一人のカワズ殿が笑いながら声をかける。
手にした鎌は鋭く光り、スッと音を立てながら稲を美しく刈り取っていく。
刃が走るたびに、稲がやわらかく倒れ、刈り取りの音と風の音が交じり合って秋の空気に響いた。
アサギも自然とその流れに引き込まれ、そっと鎌を手に取る。
けれどまだ作業には慣れておらず、なかなかうまく刈ることができなかった。
握るたびに無意識に力が入り、稲の茎を断ち切れずに苦戦する。
「こうやって斜めにして、優しくやるとええんだて」
そばにいたカワズ殿が、やさしく教えてくれる。
「なんも難しいことねぇよ。おらたちも最初はそうだったんだわ。気にすんなて」
ほかの仲間たちも、声をそろえて励ましてくれる。
その言葉に背中を押され、アサギはもう一度、刈り取りに挑んだ。
まだぎこちないながらも、鎌の角度や力加減が少しずつつかめてくる感覚があった。
黄金色の穂が、ふわりと音を立てて倒れていく。その瞬間の手応えが、何とも言えず心地よい。
刈り取った稲は束ねられ、田んぼの端に丁寧に積み上げられていく。
集められた稲の山は、まるで秋の宝物のように輝き、夕陽の光を受けてあたたかな金色を放っていた。
「今年は豊作だわいど!」
一人のカワズ殿が嬉しそうに叫び、それに応えるように、他のカワズ殿たちが声をあげた。
「そだそだ! 頑張った甲斐があったなぁ!」
「カガチ様も見とるで、気ぃ抜けんぞ〜!」
そんなやりとりに笑い声が重なり、田んぼ全体がまるで祭りのようなにぎわいに包まれていた。
その光景を見つめながら、アサギの顔にも自然と笑みがこぼれる。
まだ手つきは不慣れでも、今この場に自分がいて、みんなと一緒に働いていることが、たまらなくうれしかった。
鎌を動かすたび、小さな達成感が胸に広がっていく。
「やったことがなくても、こうしてやればできるんだ」――そんな確かな手応えが、少しずつ心を満たしていく。
失敗しても、繰り返すうちに体が覚えていく。
その感覚が、秋の風のように、静かで心地よくアサギを包んでいた。
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