第31話 新たな取り組み
リハーサルが順調に進む中、次のステージが近づいていた。これまでの緊張感も和らぎ、椿とリナの関係も改善されたことで、チーム内の雰囲気はかなり良くなっていた。しかし、俺たちは次のステージに向けて新たな挑戦に直面することになった。
その日の夕方、プロデューサーから急な呼び出しがあった。彼のオフィスで待っていると、深刻な顔をしたプロデューサーが入ってきた。
「ハルト、実は次のステージの件で重要な話があるんだ。今回、君たちには新しい試みをやってもらいたい」
「新しい試み、ですか?」
俺は不安な気持ちを抑えながら尋ねた。これまでのステージでも新しい挑戦は少なからずあったが、急な変更はいつもプレッシャーになる。
プロデューサーは頷き、机に座り直した。
「今回のステージは、通常のライブパフォーマンスだけじゃなく、ファンとのインタラクションをもっと重視したいんだ。具体的には、リアルタイムでの視聴者参加型の企画を取り入れることにした。つまり、ライブ中に視聴者からのリクエストやコメントに応えながらパフォーマンスを進めていく形だ」
「視聴者参加型ですか…」
俺はプロデューサーの言葉に少し戸惑った。これまでのパフォーマンスはチーム内で完結していたが、今回はリアルタイムでファンとコミュニケーションを取りながら進めるという新しい試みだ。もちろん、ファンとの繋がりを大切にするのは重要だが、それがどれほどの影響をステージに与えるかは未知数だ。
「そうだ。ただし、この新しい試みはリスクも伴う。視聴者の反応によっては、ステージが予期しない方向に進むこともあるだろう。だが、もしこれが成功すれば、君たちの人気は一気に高まるはずだ」
プロデューサーの言葉に、俺は少し考え込んだ。確かに、新しいことに挑戦するのはワクワクする部分もあるが、同時にチーム全員がその負担を感じるだろう。特に椿やリナ、アリスがその変化にどう対応するかが心配だった。
「チームのメンバーにはもう伝えてありますか?」
「いや、君がリーダーだから、まずは君に伝えようと思った。君の判断を尊重するが、挑戦する価値は十分にあると思っている」
俺はしばらく考えた後、深呼吸をして答えた。
「分かりました。チームと話し合ってみます。ただ、準備期間が短いので、メンバーの負担にならないように進める必要がありますね」
「その通りだ。君たちならうまくやれると信じているよ」
プロデューサーは笑顔でそう言い、俺に軽く肩を叩いた。
スタジオに戻ると、メンバーたちは既に次のリハーサルの準備をしていた。俺は全員を集め、新しい企画について説明することにした。
「みんな、ちょっと話があるんだけど、いいか?」
俺の呼びかけに、リナ、椿、アリスは不安そうな顔をしながらも集まってきた。
「次のステージなんだけど、少し新しい挑戦が加わることになったんだ。リアルタイムで視聴者からのリクエストやコメントに応えながらパフォーマンスを進める、視聴者参加型の企画になるらしい」
俺の言葉に、一瞬の沈黙が訪れた。リナが最初に口を開く。
「リアルタイムで視聴者とやりとりするってこと?それってかなり難しくない?」
「確かに難しい部分はあるけど、もし成功すれば今まで以上にファンとの繋がりが強くなると思うんだ。それに、新しいことに挑戦するのは悪くないと思う」
椿は真剣な表情で考え込んでいた。
「リハーサルでどれだけ対応できるかが鍵ですね。視聴者の反応がどれだけ予測できるか分からない以上、臨機応変な対応が求められます」
「そうだな。だから、今日はまずその練習をしてみようと思う。視聴者からのリクエストに応えるために、即興で動けるような練習を取り入れていこう」
アリスは少し興奮した様子で言った。
「面白そうじゃん!いつも決められた動きだけじゃなくて、即興でやるのってちょっとスリリングだけど楽しいかも!」
俺はアリスのその前向きな態度に助けられた。リナも少しずつそのアイデアに賛成し始め、椿も慎重ながら挑戦する意欲を見せた。
その日のリハーサルでは、チーム全員が意識的に即興での動きを練習することに集中した。視聴者が何をリクエストするかは分からないが、どんな状況でも柔軟に対応できるようにすることが大事だと俺は感じていた。
「いい感じだな、みんな。少しずつ慣れていけば、本番でもうまくやれるはずだ」
俺は全員に声をかけ、今日のリハーサルを終えた。新しい挑戦に対する不安はまだ残っていたが、チーム全員が一丸となって取り組むことで、それを乗り越えられるかもしれないという希望も感じていた。
「さて、次は本番だな」
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