第10話 音楽祭の準備

音楽部での初めての練習を終えた数日後、学校内での音楽祭の準備が本格的に始まった。音楽祭は年に一度の大イベントで、地域の人々も多く訪れるため、音楽部にとっては大きなチャンスでもあり、緊張感も漂っていた。


「ハルトくん、おはよう!今日もがんばろうね。」


アリスが元気な声で迎えてくれた。彼女の笑顔を見ると、自然と気持ちが高まる。


「おはよう、アリスさん。音楽祭の準備って、何をやればいいんですか?」


「今日はまず、リハーサルを兼ねて音楽祭のプログラムを決めるんだ。それと、会場の装飾や当日の流れについても話し合うよ。」


音楽部の部室に集まった部員たちは、それぞれが持ち寄ったアイデアや提案をもとに、音楽祭のプログラムを決めるためのミーティングを始めた。部室の雰囲気は活気に満ち、みんなが真剣に意見を交わしていた。俺もその一員として、音楽祭に向けたアイデアを出すことになった。


「この曲は、リズムが活発で、みんなで一緒に盛り上がれると思うんだ。」


「それもいいけど、もう少し落ち着いた曲も入れて、バランスを取るのはどうかな?」


「確かに。感動的なバラードもあれば、観客にとっても印象深いものになると思う。」


部員たちの意見は多様で、様々な曲や演出についてのアイデアが飛び交った。議論が白熱する中で、俺も意見を述べるタイミングを見計らっていたが、他の部員たちの熱心な姿勢に圧倒されていた。


「じゃあ、次に装飾の話に移ろう。会場の雰囲気をどうするかが重要だね。」


アリスが次の議題を切り出し、部員たちは装飾についてのアイデアを出し合った。みんなが色とりどりの提案をしており、どのアイデアも創造的で楽しいものだった。会場のテーマカラーや装飾品、照明の使い方など、細かい部分まで話し合うことで、音楽祭のイメージが具体的に形作られていった。


「ライトの演出を工夫すれば、曲の雰囲気がより引き立つと思うんだ。」


「それに、会場の壁に音楽に関連する飾りをつけたら、より一層華やかになるかも。」


「いいね、そのアイデア!みんなの意見を取り入れて、素敵な会場を作ろう。」


アリスと部員たちの協力のもと、装飾のアイデアもどんどん固まっていった。各自が担当する部分を決め、準備を進めることになった。俺もピアノのセッティングや、演奏時の位置取りなど、実際のリハーサルに向けた準備を進めることにした。


「それでは、これからリハーサルを始めます。今日はみんなで合わせて、演奏のクオリティを高めていきましょう。」


アリスが指示を出し、部員たちはそれぞれのパートに分かれてリハーサルを始めた。俺もピアノの前に座り、演奏の練習を始める。最初は緊張していたが、アリスや他の部員たちと合わせるうちに、次第に自信を持って演奏できるようになってきた。


「ハルトくん、リズムが少し早いよ。ここはもう少し落ち着いてみて。」


アリスが優しく指摘してくれる。その言葉に従い、リズムを調整することで、演奏がよりスムーズになった。部室の空気が温かく、みんなが支え合いながら練習している姿に、自然と励まされる。


リハーサルの合間には、部室の装飾についても話し合いが行われ、会場をどのように飾り付けるかについてのアイデアが出された。部員たちは、自分たちが作る音楽祭がどういう雰囲気になるかを真剣に考え、各自が持ち寄ったアイデアをもとに計画を練っていた。


「装飾についても、みんなの意見を取り入れて、なるべく素敵な会場にしようね。」


「はい!どんな装飾がいいか、皆でアイデアを出し合いましょう。」


ミーティングが終わり、俺はアリスと一緒に帰りながら、音楽祭に向けた準備について話し合った。


「音楽祭に向けて、みんなの協力が本当に大事だね。アリスさんも忙しいと思うけど、大変じゃない?」


「ううん、そんなことないよ。みんなで協力しながら準備を進めるのが楽しいから、むしろ楽しみにしているの。」


「そうなんだ。アリスさんのその気持ちが、みんなにも伝わっているんだろうね。」


「ありがとう。音楽祭が成功するように、みんなで一生懸命頑張ろうね。」


その日の帰り道、音楽祭に向けた準備が進む中で、アリスと一緒に過ごす時間がとても充実していることを感じていた。音楽部での活動を通じて、新たな仲間たちとの絆が深まり、これからの時間がますます楽しみになってきた。




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