第26話 チャレンジ
翌朝、俺は目覚めるとすぐにスタジオへ向かう準備を始めた。今日の予定は、リナが初めて主導するライブリハーサルだ。昨日の話の後、彼女はずっと新しいセットリストや演出のアイディアを練り続けていたようだ。彼女の成長を見届けることができるのが楽しみでならない。
「今日が正念場だな…」
スタジオに到着すると、すでにリナが到着していた。彼女は少し緊張した様子で、台本やセットリストのチェックをしていた。
「おはよう、リナ。準備はどうだ?」
俺が声をかけると、リナはふっと顔を上げ、微笑んだ。
「おはようございます、ハルトさん!準備は万全です。今日のリハーサル、すごく楽しみです!」
彼女の自信に満ちた笑顔を見て、俺も安心した。リナは着実に成長している。彼女が自分で考えたプランがどうなるか、期待せずにはいられない。
リハーサルが始まると、リナは自分の考えた演出やセットリストをチームメンバーに説明し、全体を指揮し始めた。彼女の言葉には説得力があり、他のメンバーもすぐに納得していた。
「次はこの部分、もっと感情を込めて歌ってください。観客に向かって自分の気持ちをしっかり届けることが大切です」
リナがアリスとユイに指示を出す姿は、すでにプロフェッショナルな雰囲気を漂わせている。彼女はライブの重要な要素である「感情」を中心に据え、観客に強く訴えかけるようなパフォーマンスを目指していた。
「リナ、すごいな…こんなにしっかりリーダーシップを発揮できるなんて」
俺は思わず感心していた。リナが主導するライブは、今までとは違う何か特別なものになる予感がする。
リハーサルが進むにつれて、メンバー全員のパフォーマンスも徐々に高まっていく。リナの指示が的確で、どこか迷いがあった部分が解消され、チーム全体が一つにまとまり始めていた。
「よし、みんな。これで最後の通しリハーサルだ。全力でやってみよう!」
俺が声をかけると、全員が集中してポジションについた。リナは深呼吸をして、歌い始めた。
彼女の歌声は、まるで違う世界へと引き込むかのようだった。感情が込められ、聴く者の心に直接響くその声は、これまでの彼女の歌とは一線を画していた。
アリスとユイも、それに引き込まれるように素晴らしいハーモニーを奏で、チーム全体が一つの音楽として完成していた。
「これだ…!これが俺たちが目指していた形だ!」
俺は心の中でそう叫んでいた。彼女たちのパフォーマンスは確実に進化していた。リナを中心にした新しい形のライブが、今まさに完成しつつある。
リハーサルが終わると、全員が達成感に満ちた表情を浮かべていた。
「お疲れ様、リナ。今日のリハーサル、本当に素晴らしかったよ」
俺がリナに声をかけると、彼女は少し恥ずかしそうに笑った。
「ありがとうございます、ハルトさん。でも、まだ完璧には遠いです。もっともっと練習して、最高のライブにしたいと思っています!」
その言葉に、俺は心の中で嬉しさが込み上げてきた。リナは本当に変わった。成長を続け、自分自身を高めるために努力を惜しまない姿勢が、今の彼女には備わっている。
「じゃあ、明日からもまた全力で頑張ろうな。俺たちは一緒に成長していける」
「はい!全力で頑張ります!」
彼女の力強い言葉に、俺もまた自分自身のリーダーとしての役割を再認識する。リナたちが自分を信じてついてきてくれている限り、俺は彼女たちを支え続けなければならない。
その日の夜、俺は帰り道でふと思い出したことがあった。
「そういえば、リナがあんなに自信を持ってリーダーシップを発揮できるようになったのは、いつからだろう…」
彼女は以前、何度も自信を失いかけていた。だが、いつの間にかその不安を乗り越え、自分自身を信じるようになった。その成長のきっかけが何なのか、俺はずっと考えていた。
「もしかして、俺のサポートが少しでも役に立っていたのか?」
そんなことを思いつつ、俺はリナのこれからの成長がますます楽しみになっていた。そして、同時に自分自身もリーダーとして成長しなければならないと感じた。
次のライブが成功するかどうかは、リナにかかっている。だが、彼女ならきっと大丈夫だ。俺は彼女の成長を信じ、全力でサポートしていくつもりだ。
「さあ、明日からも頑張るか」
そうつぶやきながら、俺は夜の街を歩き続けた。
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