第25話 リナと日常の新しい一歩
その日の夜、静まり返った自室で、俺はベッドに横になりながら天井を見つめていた。次のステップを考える中で、自然とこれまでのことを振り返っていた。リナやアリス、ユイとの出会いから、いくつかのライブを通して成長してきた自分たち。それぞれが試行錯誤しながら前に進んでいく姿を見て、俺も自分なりに役割を果たそうと努力してきたが、果たして俺はこのチームに何ができているのだろうか。
「俺、ちゃんとリーダーとしてみんなを引っ張れているのか…」
そうつぶやくと、胸の奥がざわざわと騒ぐ。リナが自分の不安を俺に打ち明けてきたように、俺もまた自分自身に対する不安が拭いきれなかった。彼女たちは俺にとって大切な仲間であり、もっと言えば家族のような存在だ。だからこそ、俺はこのチームの未来を真剣に考えなければならないというプレッシャーを感じていた。
そんな思考の海に沈んでいると、スマートフォンの通知音が鳴った。画面を覗くと、リナからのメッセージだった。
『ハルトさん、今日は本当にありがとうございました。改めて、自分の成長を実感できました。でも、まだまだ私には足りないことがたくさんあるので、これからもお力を貸してください』
リナらしい、素直で前向きな言葉だった。彼女は弱音を吐きながらも、常に未来を見据えていた。そんな彼女の姿に、俺もまた勇気づけられる。リナの成長が、俺にとっても励みになるのだと感じた。
『こちらこそ、これからも一緒に頑張ろう』
シンプルな返事を送ると、スマホを枕元に置いて目を閉じた。疲れが溜まっていたせいか、すぐに眠りに落ちてしまった。
翌朝、目を覚ますと、気持ちは不思議と晴れやかだった。新しい一日が始まるというだけで、なんだか少しワクワクしている自分に気づく。そんな気持ちを胸に抱えながら、俺は朝の準備を済ませ、スタジオに向かうことにした。
スタジオに着くと、いつものようにアリスが先に到着していて、元気いっぱいに声をかけてきた。
「おはよう、ハルト!今日もやる気満々だね!」
「おはよう、アリス。今日も頑張ろうな」
俺たちが軽く挨拶を交わしていると、続いてユイが入ってきた。
「おはようございます、ハルトさん、アリス。リナはもうすぐ来るみたいです」
「そうか、今日も全員揃って練習だな」
その後、リナもスタジオに到着し、みんなが集まったところで、今日の練習が始まった。目標は明確だ。次のライブを、さらに大きな成功に導くことだ。そしてそのためには、チーム全体のレベルアップが不可欠だった。
アリスは自分の楽器の技術を磨くために新しいフレーズを試し、ユイは曲のアレンジに工夫を凝らしていた。リナも、今度はさらに多くの観客に自分の歌を届けるために、歌唱力を高める努力を怠らなかった。
俺は、そんな彼女たちを見守りながら、自分がこのチームに何を貢献できるのかを考えていた。彼女たちの才能を引き出し、チーム全体をひとつにまとめ上げる。それが俺の役割であり、使命だ。
練習が終わり、みんなで一息ついていると、ふとリナが口を開いた。
「ハルトさん、次のライブなんですけど…もっと自分らしい歌い方を探してみたいと思っているんです。今までは、皆さんに合わせることばかりを考えていたんですけど、もう少し自分の個性を出してみたいなって」
その言葉に俺は少し驚いた。リナが自分からそんな提案をしてくるとは思っていなかった。だが、その成長は非常に喜ばしいものだ。
「そうか。リナがそう思うなら、どんどん自分の個性を出していけばいいと思うよ。俺たちもそのためにサポートするからさ」
「ありがとうございます!私、もっと自信を持って頑張ります!」
リナの目には、確かな決意が宿っていた。彼女の成長は目覚ましいものであり、これからのライブでどんな歌声を響かせるのか、俺も楽しみでならなかった。
その日の練習を終え、スタジオを後にする頃には、俺たちの間には新たな目標が生まれていた。個々がさらに自分らしさを追求し、それをチームとして一つの形にまとめ上げていく。俺たちの音楽が、さらに高い次元へと進化するためには、まずは自分たち自身が変わっていく必要があるのだ。
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