第32話 視聴者参加型のライブ開始
いよいよ視聴者参加型のライブの日がやってきた。リハーサルでの練習の成果を試すときが来たのだ。控室に集まったメンバー全員が、少し緊張した様子を見せている。特にリナは普段以上に口数が少なく、椿も真剣な表情を崩さなかった。
俺はそんなみんなを見て、少しでもリラックスさせようと声をかけた。
「大丈夫だよ、みんな。今までのステージと根本的には変わらないさ。ただ、今回は視聴者からのリクエストが加わるだけだ。リハーサルでちゃんと準備してきたんだし、心配する必要はない」
俺の言葉に、アリスが笑顔で応えた。
「そうだよね!即興で何が飛んでくるか分からない方が楽しいし!なんだかゲームみたいでワクワクする!」
その無邪気な言葉に、少し緊張していたリナと椿も微笑んだ。
「アリス、ほんとに余裕だね。でも、そのくらいの気持ちでいったほうがいいのかも」
椿がそう言い、少し肩の力を抜いたようだ。
「みんな、リラックスして楽しもう!ライブは楽しむものだからな」
俺はメンバーに軽く肩を叩きながら、自分自身の緊張も和らげようとしていた。そして、準備を整えた俺たちは、いよいよステージへと向かう。
ステージに上がると、いつも通りの熱気が感じられた。しかし、今回はいつもと少し違う期待感が漂っている。それは、視聴者がリアルタイムで関与できるという特別な体験への期待だった。会場に集まった観客だけでなく、オンラインの視聴者たちも一緒にライブを楽しむのだ。
ライブの最初はいつも通りのパフォーマンスで進行した。リナが歌い、椿が舞い、アリスが楽しそうにステージを駆け回る。それに合わせて俺もギターを奏で、観客を煽った。最初の数曲はスムーズに進み、徐々に俺たちも緊張がほぐれてきた。
そして、視聴者参加型のパートに突入した。
「さあ、ここからは視聴者の皆さんのリクエストに応えていきます!どんなリクエストでも構わないので、どんどんコメントしてください!」
俺がマイクで呼びかけると、会場の大きなスクリーンにオンライン視聴者からのコメントが次々に表示され始めた。
『リナちゃんの即興ダンスが見たい!』 『アリス、無茶ぶりでお笑いパフォーマンスして!』 『椿の歌声で即興の子守唄を!』
それぞれのリクエストが飛び交う中、俺たちはそのリクエストに応えながらパフォーマンスを進めていった。最初のリクエストはリナへのものだった。
「リナちゃん、即興ダンスか。どうする?」
俺が振ると、リナは少し戸惑った表情を浮かべたが、すぐに笑顔を取り戻した。
「任せて!ダンスなら、即興だって問題ないよ!」
リナは軽やかなステップを踏み、音楽に合わせて即興でダンスを始めた。観客たちはその見事な動きに歓声を上げ、スクリーン上にはさらに多くのコメントが流れていった。
『リナ最高!』 『美しすぎる!』
続いて、アリスの番だった。彼女に寄せられたリクエストは「無茶ぶりでお笑いパフォーマンス」。アリスはステージの真ん中に立ち、思いっきり大げさなリアクションを取った。
「なにこれ!?なんでこんなことやらされてるの~!?でも、やっちゃうよ~!」
その一言に会場は爆笑に包まれ、アリスの予想外の演技に視聴者からのコメントも急増した。
『アリス天才!』 『次も無茶ぶりお願い!』
ステージ上では笑いと驚きが交互に広がり、ライブは一層盛り上がっていった。
順調に進む中、次にスクリーンに映し出されたのは、俺に対するリクエストだった。
『ハルト、即興で作曲して!』
そのコメントを見て、俺は少し驚いた。即興での演奏は何度かやったことがあるが、作曲となるとまた別の話だ。しかし、この場で視聴者の期待を裏切るわけにはいかない。
「分かった、じゃあちょっとやってみるよ!」
俺はギターを手に取り、ステージの中央で集中した。適当にコードを弾きながら、頭の中でメロディを組み立てていく。この瞬間にしか生まれない音楽がある。そう自分に言い聞かせ、ギターの音色に身を任せた。
そして、思いついたメロディを口ずさみながらギターを弾く。会場は静まり返り、視聴者たちがその即興のメロディに耳を傾けていた。俺が作り出した即興の曲は、シンプルながらもどこか温かみのあるものになっていた。
『ハルト、すごい!』 『これ、ちゃんと曲にしてほしい!』
そんなコメントが次々と流れ、俺はホッと胸を撫で下ろした。視聴者の反応は良好で、俺たちは次々と寄せられるリクエストに応えながら、ライブを進めていった。
ライブが終わる頃には、俺たちは疲労感と達成感でいっぱいだった。視聴者参加型の企画は大成功だったと言える。予想以上に視聴者の反応は良く、俺たちは新たなステージをクリアしたという自信を感じていた。
「みんな、よく頑張ったな!最高のライブだったよ」
俺はメンバー全員に声をかけ、彼女たちは笑顔で答えた。
「楽しかったね!また次もこんなライブやりたい!」
アリスが興奮した様子で言い、リナや椿もその言葉に頷いた。
「でも、やっぱり即興は大変だな。もっと練習が必要かもしれない」
椿が真剣な顔で言い、リナも同意した。
「そうだね。今回うまくいったけど、もっと余裕を持って対応できるようになりたいな」
でも、一先ずはこの成功をみんなと分かち合っていたい
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