第33話 音楽
ライブの成功から数日が経った。思った以上に視聴者からの反応は良好で、俺たちのチャンネルは急成長を続けていた。リハーサルと本番がうまくいき、これまで以上に自信を持てるようになっていたが、次にどう進むかという課題が浮かび上がってきた。
「ハルト、次のライブどうする?この前の視聴者参加型、めちゃくちゃ好評だったし、もう一度やったらどう?」
アリスがキラキラした目で俺を見つめてくる。ライブの後、彼女はいつもこんな感じで話を持ちかけてくる。彼女のポジティブなエネルギーには救われている部分も多いが、今回はもう少し慎重にいきたいと思っていた。
「うーん、確かに視聴者参加型は良かったけど、そればっかりじゃ飽きられるかもしれない。何か新しい要素を加えたいんだよな」
「新しい要素?たとえばどんな?」
リナが興味深そうに問いかけてくる。彼女は冷静でいつも的確な意見をくれるから、こういう時頼りになる。
「視聴者がリアルタイムで決める選択肢を増やすとか、もっとインタラクティブな要素を取り入れるとか?ただのコメントや投票じゃなくて、ライブそのものを視聴者が操作できるようにしてみたいんだ」
「え、ライブを操作?そんなことできるの?」
椿が驚いた表情で声を上げた。
「技術的にはちょっと難しい部分もあるけど、アイデア次第でなんとかなると思うんだ。リアルタイムでシナリオを変えるとか、視聴者が選んだ選択肢で次の展開が決まるって面白そうだろ?」
「なるほどね、それなら視聴者も自分たちが物語の一部になった気分で楽しめそうだね!」
リナがニコッと笑う。彼女の言う通り、視聴者が自分たちもライブに参加している感覚を持てれば、より一層の没入感を提供できるだろう。
「でもさ、そのためには事前にいくつかのシナリオを準備しておかないと無理だよね?本番で即興っていうのはさすがに無理があるんじゃない?」
アリスが少し心配そうに尋ねる。
「そうだな、今回はシナリオをいくつか用意しておいて、選択肢ごとに別々のルートを作る感じにする。即興の部分も多少は入れたいけど、基本的には視聴者が選んだ内容に沿って進行させる予定だ」
「大変そうだけど、やりがいはあるね!」
リナが笑顔で俺を見つめる。
その日の午後、俺は早速次のライブのシナリオ案を考え始めた。まず、視聴者が選ぶことができる選択肢をどう設定するかが鍵だった。選択肢が単純すぎてもつまらないし、複雑すぎても視聴者が混乱する。絶妙なバランスが求められる。
「うーん、どうやってライブ全体を視聴者に操作させるか……」
パソコンの画面に向かって考え込んでいると、突然スマホが振動した。画面には「アリス」からのメッセージ通知が表示されている。
『ハルト、次のライブのことだけど、私もアイデア出していい?視聴者がもっと参加できる要素って、こういうのどうかな?』
メッセージには、アリスのアイデアがいくつか書かれていた。たとえば、視聴者がリアルタイムで操作できる選択肢を複数回提示し、それに応じてストーリーや演出が大きく変わる展開を作るというものだ。アリスの視点はいつも新鮮で、俺が考えつかないような発想を持っている。
「ありがとう、アリス。そのアイデア、すごくいいな!ぜひ採用させてもらうよ」
俺はすぐに返信を打ち、彼女の提案をシナリオに取り入れることにした。次のライブは、これまで以上に挑戦的で、新しい試みが詰まっているものになるだろう。
数日後、俺たちは次のライブに向けたリハーサルに入った。メンバー全員がそれぞれの役割を果たし、シナリオ通りに動けるかどうかを確認する。今回のライブは、視聴者の選択が直接ライブに影響を与える仕組みだ。そのため、リハーサルもこれまで以上に入念に行わなければならない。
「今回は視聴者に選ばせるタイミングが多いから、ちゃんとスムーズに切り替えられるようにしないとね」
リナが冷静な目で進行を確認している。
「シナリオの分岐がちゃんと機能するかどうかも確認しなきゃな。もし視聴者が予想外の選択肢を選んだらどうする?」
椿が少し不安そうに尋ねる。
「そこは俺たちが柔軟に対応するしかないよ。でも事前に準備しておけば、ある程度は対処できるはずだ」
「なるほど、まあその場でうまく対応すればいいよね!」アリスが明るく笑う。
リハーサルは順調に進み、俺たちは自信を持って次のライブに臨む準備ができた。しかし、その後の出来事が、俺たちをさらに驚かせることになる。
翌日、俺たちは普段通りの打ち合わせを行っていたが、突然リナのスマホが鳴った。彼女が画面を見て驚いた表情を浮かべる。
「ちょっと、これ見て!私たちのライブ、ニュースになってる!」
俺たちは一斉に彼女のスマホを覗き込んだ。そこには、俺たちが次に挑戦しようとしている「視聴者参加型ライブ」の情報が大きく取り上げられていた。
『次世代のエンターテインメント!視聴者参加型ライブの新たな試みが話題に!』
記事には、俺たちの企画が斬新であり、これからのライブ配信のトレンドになるかもしれないという内容が書かれていた。SNS上でも、この新しい試みに対する期待が高まっている様子が伺える。
「すごい、こんなに注目されるなんて……」
俺は正直驚いていた。俺たちがやってきたことが、ここまで話題になるとは思ってもいなかった。
「やったじゃん!これは次のライブ、成功間違いなしだよ!」
アリスが勢いよく拍手をする。
「でも、注目されてる分、失敗は許されないね。しっかり準備していこう」
リナが冷静に話す。
「そうだな。期待が高まっているからこそ、失敗はできない。でも、絶対に成功させよう」
俺たちは再び気持ちを引き締め、次のライブに向けた準備を進めていく。
きっとこの先も俺たちはこうして色々と考えながら進んでいく。
男女比が狂った世界に転生してる? 森川 朔 @tuzuri246
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます