第17話 プロジェクト始動

プロデューサーの西園寺さんからの提案を受けて、俺たちは本格的に音楽活動に挑戦することを決意した。学校生活も続けながら、どうにかして両立していこうとアリスと話し合い、まずは放課後の時間を使って練習を重ねていくことにした。


次の週末、俺とアリスは西園寺さんとの初めての打ち合わせに向かった。場所は都内のカフェ。オシャレな内装で、どこか音楽業界の雰囲気が漂っている。


「ここが打ち合わせ場所なんだ…ちょっと緊張するね」


アリスが隣でそわそわしながら小声で呟く。


「俺もだよ。でも、せっかくのチャンスだし、全力でやってみよう」


俺は彼女に安心させるように微笑みかけ、ドアを開けた。カフェに入ると、すでに西園寺さんが待っていて、俺たちを見つけると優しく手を振ってくれた。


「お二人とも、ようこそ。来てくれてありがとう」


「いえ、こちらこそありがとうございます!」


アリスが少し緊張しながらも礼儀正しく挨拶をし、俺もそれに続いた。西園寺さんは俺たちに座るよう促し、早速話を始めた。


「今回のプロジェクトについてなんだけど、まずは小さなライブイベントに出演してもらう形でデビューしてもらおうと思ってるの。学校の音楽祭でのパフォーマンスは素晴らしかったけど、プロとしてのステージはまた少し違う。まずはその感覚を掴んでもらうことが大事だと思うの」


「ライブイベントか…」俺は少し考え込んだ。「俺たち、まだプロとしての経験なんて全然ないんだけど、大丈夫かな?」


「もちろん、最初はみんな同じよ。でも、あなたたちには素質があるし、そこから成長していけばいいの。私も全面的にサポートするわ」


「…わかりました。やってみます!」


俺の返事を聞いたアリスも力強く頷いた。


「それに、このプロジェクトではあなたたち自身の楽曲を作ることも考えているの。オリジナルの曲があると、よりあなたたちの個性が際立つからね。今後の活動においては、その楽曲を披露する場面も増えると思うわ」


「自分たちの曲…」アリスが目を輝かせた。「そんなこと、今まで夢のまた夢だったけど、実際にできるなんて!」


俺も内心興奮していた。自分の音楽を作って、それを人前で披露するなんて、想像しただけで胸が高鳴る。


「まずは、次の2か月間を準備期間として使いましょう。その間に、ライブのリハーサルやオリジナル曲の制作に取り組んでもらうわ。具体的なスケジュールについては、今日お渡しする資料を確認してね」


西園寺さんは笑顔で資料を手渡してくれた。それには、これからのスケジュールや必要な準備が詳細に記されていた。俺たちの2か月間は、思った以上に忙しい日々になりそうだったが、それ以上にワクワクする気持ちが強かった。


打ち合わせが終わり、カフェを出た俺たちは、まだ興奮冷めやらぬまま歩いていた。


「すごいね、ハルトくん…私たち、これから本当にプロの舞台に立つんだ」


アリスが隣で感慨深そうに呟く。その表情には、期待と不安が入り混じった複雑な感情が浮かんでいた。


「うん…でも、俺たちならできるよ。アリスもすごい才能を持ってるし、俺も全力で頑張る」


俺の言葉にアリスは微笑み、「一緒に頑張ろうね」と力強く言った。


その日から、俺たちの音楽活動が本格的にスタートした。放課後にはスタジオに入り、オリジナル曲の制作やライブのリハーサルに取り組んだ。最初は慣れないことばかりで戸惑いもあったが、少しずつ自分たちのペースを掴んでいった。


ある日、スタジオでの練習中にアリスが唐突に言った。


「ハルトくん、曲のタイトルとか決めた?」


「いや、まだ考えてないけど…そろそろ決めなきゃだよな」


「うん、私、少し思ってたんだけど…私たちの最初の曲だから、二人の思い出をベースにしたタイトルにしたいなって」


「思い出か…それいいかもな。じゃあ、例えば『始まりの音色』とか?」


「おぉ、それいいじゃん!私もすごく好き!ハルトくん、本当にセンスあるよね」


「いや、アリスのおかげだよ。お互いの思いを形にするって感じで、すごく良いと思う」


二人で笑い合いながら、俺たちの曲作りはどんどん進んでいった。『始まりの音色』――それは、俺たちの新しい冒険の象徴となる曲になるだろう。


そして、ついにライブ当日が迫ってきた。準備は順調に進んでいたが、やはり初めての大きな舞台には緊張がつきものだ。俺たちは精一杯のリハーサルを重ねたが、それでも不安は拭えなかった。


ライブ前夜、俺はアリスにメッセージを送った。


「明日、頑張ろうな。絶対に成功させよう」


すぐに返事が来た。


「うん!ハルトくんとなら、絶対に大丈夫だよ!」


俺たちはお互いに励まし合いながら、明日の舞台に向けて心を一つにしていった。


このライブが成功すれば、俺たちの音楽活動は一歩大きなステージへと進むことになる。そんな期待とプレッシャーを胸に、俺は明日のライブを迎える準備を整えていた。

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