第5話 学校へ
新しい生活が始まり、数日が経過した。リナが毎日のサポートをしてくれているおかげで、俺はすぐにこの家に馴染むことができた。エリスの訪問以来、少しずつこの世界に対する理解が深まりつつあった。
「さて、今日から新しい学校に通うことになるんだよな」
朝の光が部屋を照らし、俺はベッドから起き上がった。リナが用意してくれた朝食を済ませると、制服に着替え、支度を整えた。こちらの学校には、特に男女比の偏りを考慮した特別なシステムが導入されているという話だが、実際にどうなのかは見てみないと分からない。
「準備は整いましたか?」
リナが声をかけてきた。彼女は制服の上にエプロンを着て、笑顔で俺を見守っている。
「はい、大丈夫です。ありがとう、リナさん。」
「それでは、行ってらっしゃいませ。」
「うん、行ってきます。」
家を出ると、外の空気が心地よく感じられる。少し緊張しながらも、新しい学校生活への期待が高まっていた。車に乗り込み、学校へ向かう途中、リナが言っていた通り、道行く人々のほとんどが女性ばかりだ。
学校のキャンパスに到着すると、その規模の大きさに驚かされた。広々とした敷地内には、現代的な建物と緑豊かなエリアが調和している。校門をくぐると、すでに登校している生徒たちが集まっていたが、やはりその中で目立つのは男性である俺一人だ。
「うわ、これが……」
学校の正門を入ると、見知らぬ生徒たちが好奇の目でこちらを見ているのが分かる。中には、うわさ話をしているような人たちもいたが、特に害意は感じられなかった。
「おはようございます。」
一人の女性が俺に声をかけてきた。彼女は明るい笑顔で、校内でも人気がありそうな雰囲気を持っている。
「おはようございます。僕はハルトです。今日からこちらに通うことになりました。」
「私はリリィ・フォード。新しく男性がこちらに通うことになるなんて聞いていたけど、本当に来るなんて正直思ってなかったわ」
リリィは快活な態度で俺に近づき、手を差し出した。彼女の笑顔に少し安心感を覚え、俺はその手を軽く握り返した。
「ありがとう。リリィさんは、ここの生徒なの?」
「はい、そうです。ちょうど今からホームルームが始まるところだから、案内しますね。」
「助かります。よろしくお願いします。」
リリィと一緒に校舎内を歩きながら、学校の雰囲気や授業の流れについて話を聞いた。ここでは、男女比が1:10の影響で、特に男性生徒に対して特別な配慮がされているそうだ。授業も、男女のバランスを考慮して設計されており、男性が少数派であることによるデメリットが最小限に抑えられているという。
「それにしても、あなたがここに来たってことで、色々と変わるかもしれないよ。」
「どういう意味?」
「学校全体の雰囲気が変わるってこと。だって、男性が一人増えるだけで、かなり注目されるから。きっと、周りの反応も変わるよ。」
リリィの言葉に、少し不安になりつつも、彼女が案内してくれるおかげでスムーズに校内を移動することができた。教室に着くと、すでに多くの生徒たちが席についていた。
「ここが、あなたの席ね。」
リリィが指差した席に座ると、周囲の生徒たちが興味深そうに俺を見ていた。少し落ち着かない気持ちもあったが、リリィが隣に座ることで、多少は安心できた。
「こんにちは、みんな。今日は新しい生徒が来てくれたから、自己紹介をしてもらおうと思います。」
担任の先生がクラスに向けて話しかけると、全員の視線が俺に集まる。少し緊張しながらも、俺は立ち上がり、自己紹介を始める。
「こんにちは。僕はハルトです。今日からこちらの学校に通うことになりました。よろしくお願いします。」
凄く簡潔な自己紹介になってしまったが、クラスメイトたちは興味を持ってくれたみたいで、ホームルームが終わると何人かのクラスメイトが声をかけてきてくれた。
「よろしくね、ハルトくん。何か困ったことがあったら、すぐに言ってね。」
「ありがとうございます。お世話になります。」
簡単な会話を交わしていると、チャイムがなり授業が始まった。授業中も、周囲の生徒たちが俺に気を使ってくれているのが伝わってきた。
昼休みになると、リリィが再び声をかけてきた。
「ハルトくん、今からみんなでランチに行かない?」
「ありがとう、ぜひ!」
リリィと他のクラスメイトたちと一緒に学食に行くと、そこでもやはり多くの女性たちが集まっている。やはり男子生徒は珍しい様で物凄く視線を集めていた。
「視線が気になるなら場所変えようか?」
「ありがとう、でも大丈夫。やっぱり男子で学食を使う人って少ないのかな?」
「そうだね、少なくとも私は見たことがないかも……」
リリィが答えるとクラスメイト達も「私もないなぁ」と口々に声を上げる。詳しく聞いてみると、どうやら男子生徒たちは家から持ってきている弁当を食べる人がほとんどらしい。というよりも、午前だけ学校にきて昼から帰ったり、逆に昼過ぎから来てみたいな感じの人も多いみたいだ。
やっぱり、男子にとって女性ばっかりの学校というのはストレスで一日いるなんてことはどうやらなかなか難しいことみたいだ。
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