第19話 ライブの余韻
ステージから降りて楽屋に戻った俺たちは、しばらくその場で放心していた。大成功を収めたという達成感と、ライブの高揚感がまだ身体中を駆け巡っている。アリスは床に座り込んだまま、ぼんやりと天井を見つめている。
「ハルトくん…ほんとにすごかったね。私たち、あんなにたくさんの人の前で演奏したんだね」
アリスは少し驚いた表情を浮かべながら、俺に話しかけてきた。その声には、少しの疲れと同時に満足感が溢れているのがわかる。俺も大きく息をつきながら、同じように感じていた。
「うん、夢みたいだよな。俺たちがここまでやれるなんて、最初は思ってなかったけど…でも、本当に最高のステージだったよ」
俺はアリスの隣に座り、軽く背中を叩いた。あの瞬間、二人で同じ音楽を作り上げ、観客に届けられたことが、これまでにないほどの充実感を与えてくれた。
「ステージから見るお客さんの数、すごかったよね。こんなにたくさんの人に私たちの音楽が届くなんて、思ってもいなかったよ」
アリスの言葉に、俺も深く頷いた。あの瞬間の感動を言葉で表すのは難しいが、アリスと俺の気持ちは完全に通じ合っていた。
しばらくして、楽屋の扉が軽くノックされ、スタッフが顔を出した。
「ハルトくん、アリスちゃん!今のステージ、SNSでかなり話題になってるよ。『新人デュオ、最高のパフォーマンス!』『ハルトとアリスの音楽に感動した』って、すごい反響だよ!」
その言葉を聞いた瞬間、アリスの顔がぱっと明るくなった。
「ほんと!?すごい、すごいよハルトくん!」
「マジか…そんなに話題になってるのか。信じられないな」
俺も驚きを隠せなかった。初めてのステージで、こんなにも多くの人に注目されるなんて思ってもいなかった。今まで必死に練習してきたことが、この瞬間に報われた気がした。
「これからますます忙しくなりそうだね。でも、二人とも本当にお疲れさま!今日はゆっくり休んで、また次に備えてね」
スタッフが優しく微笑んでそう言うと、俺たちはお互いに顔を見合わせ、少し笑った。次がある、という事実に嬉しさとプレッシャーが同時に襲ってくる。
ライブ会場を後にし、俺たちは帰り道で話しながら歩いていた。夜の空気が冷たく、ライブの余韻が身体中に残っていて、まるで夢の中を歩いているような感覚だった。
「ハルトくん、これからも一緒にステージに立てるかな?」
アリスがふと不安そうに呟いた。ライブの成功を喜んでいる一方で、彼女にはこれからのことへの不安があるのだろう。俺たちの音楽が一夜にして話題になったことで、今まで以上のプレッシャーがかかるのは避けられない。
「もちろんだよ。俺たち、ここまで一緒に頑張ってきたじゃん。これからもアリスと一緒にやっていきたいって思ってる」
俺は心からの言葉を伝えた。アリスがどれだけこの音楽活動を大事にしているか知っているし、俺も彼女と一緒に成長していきたい。
「ありがとう、ハルトくん。これからもよろしくね!」
アリスの笑顔に、俺も自然と笑顔がこぼれた。これからも彼女と一緒に音楽を続けられるんだと思うと、何よりも嬉しかったし、それが俺の原動力になる気がしていた。
その夜、家に帰ってからもライブの余韻が消えず、興奮してなかなか寝付けなかった。ベッドに横たわり、スマホを見ながらSNSでの反応を確認していた。投稿された写真や動画には、俺たちのステージが映っており、コメント欄にはたくさんの応援のメッセージが並んでいた。
『ハルトとアリス、最高のデュオ!』 『彼らの演奏、涙が出るほど感動した』 『これからの活動が楽しみ!』
そんなコメントが次々に流れてくる。自分たちの音楽がこんなにも多くの人に響いているなんて、まだ信じられない気持ちでいっぱいだった。
「これから、もっと頑張らないとな…」
自分にそう言い聞かせ、スマホを枕元に置いて目を閉じた。心地よい疲労感が身体を包み込み、気づけば深い眠りに落ちていた。
翌朝、目覚めた時には、昨日のライブがまるで夢のように感じられた。しかし、スマホに届いたメッセージの数々が、それが現実であったことを証明していた。マネージャーやスタッフからの連絡に加え、ファンからの応援メッセージが次々に届いている。
「ほんとに、俺たち…成功したんだな」
俺はスマホを見つめながら呟いた。昨日のライブが、俺たちの人生を大きく変えるターニングポイントになったのは間違いない。この成功が一過性のもので終わらないように、これからもっと努力をしなければならない。
「アリスと一緒なら、どこまでも行ける気がするな」
これからも彼女と共に歩んでいく未来を想像しながら、俺は再びベッドから起き上がった。
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