第22話 新たな展望と友情の芽生え
ユイとのカフェでの会話から数日が過ぎ、俺たちのプロジェクトは少しずつ形を帯びてきた。アリスからの提案や、ユイの参加への前向きな姿勢により、トークイベントという新たな企画も現実味を帯びてきた。音楽だけでなく、ファンとのコミュニケーションも重要視したイベントというのは、俺にとっても大きな挑戦だ。
しかし、その一方で、俺自身にも新しい挑戦を感じ始めていた。単に配信者として音楽を届けるだけではなく、もっと多くの人と繋がり、何かを伝えたいという気持ちが強くなっていたのだ。
その日の夕方、アリスからメッセージが届いた。
「ハルト、次のライブの日程なんだけど、少し延期しようかと思ってるんだ」
「え? なんで?」
「最近、私たちの活動が少しワンパターンになってきた気がするの。新しいイベントの企画があるとはいえ、やっぱりもっと多彩な方向性を探るべきかなって」
アリスの言葉に、俺は少し驚いた。彼女は常に前向きで、活動を推進する力を持っていると思っていたが、彼女自身も何かを感じ取っていたのかもしれない。
「確かに、今のやり方だと少し限界があるかもしれないな。どういう方向性を考えてる?」
「例えば、ユイちゃんが加わることで新しいジャンルに挑戦するのもありかも。彼女の歌声を活かして、もっと多様な音楽に手を出すとか。それに、ファンとの距離をもっと縮めるために、トークイベントを軸にしていくのもありだし」
アリスの提案に、俺は深く頷いた。新しい風を取り入れることで、俺たちの活動がさらに広がる可能性を感じた。
「それなら、一度みんなで集まって話し合いをしようか。アリスの家とか、落ち着いて話せる場所でさ」
「いいね。ユイちゃんにも声をかけてみるよ。きっと彼女も乗り気だと思う」
翌日、アリスの家に集まることになった。ユイも呼んで、今後の活動についてしっかりと話し合う場だ。アリスの家に着くと、彼女はキッチンで手作りのケーキを用意していた。
「ちょっとしたおもてなしよ。今日は楽しく話し合おう!」
彼女の明るい笑顔に、自然と気持ちが軽くなる。少し遅れてユイも到着し、俺たちはリビングに集まって話し合いを始めた。
「ユイちゃん、ハルトから話を聞いたと思うけど、今後のプロジェクトについて一緒に進めていきたいんだ。あなたの意見も聞きたいな」
アリスが優しくユイに問いかけると、ユイは少し緊張しながらも、しっかりとした声で答えた。
「私、まだまだ未熟ですけど、皆さんと一緒にやっていきたいです。音楽を通じて、もっと多くの人に自分を伝えたいって気持ちはあります。ただ…やっぱり少し怖い部分もあって」
「怖い部分?」俺が聞き返すと、ユイは少しうつむきながら話し続けた。
「自分がどれだけできるか、分からなくて。皆さんみたいに経験もないし、ちゃんと貢献できるのか不安です」
彼女の言葉には、真剣な思いが込められていた。だが、俺はそんなユイに対して、自信を持って言葉を返した。
「ユイ、俺たちも最初は不安だったよ。だけど、やってみないと分からないこともあるし、失敗してもそこで成長できるんだ。君の歌声には力があるし、きっとファンにも伝わると思う」
アリスも頷きながら付け加えた。
「そうよ、ユイちゃん。私たちも最初から完璧だったわけじゃない。みんなで支え合ってやっていけば、きっと大丈夫」
その言葉に、ユイの表情が少し和らいだ。
「ありがとうございます…私、頑張ってみます!」
その後、俺たちは具体的な計画を話し合い始めた。トークイベントの日時や場所、音楽の方向性、さらには新しい企画についてもいろいろなアイデアが出た。アリスが中心となって進めていくことになり、ユイも積極的に意見を出すようになっていった。
「次のトークイベントでは、ファンの質問に直接答える時間を設けるのもいいかもね。今までライブでしか接点がなかったけど、もっと気軽に話せる場を作れば、ファンも喜んでくれると思う」
「それ、いいね!」俺も同意しながら、具体的な進行方法を考える。
会話は次第に活発になり、俺たちは次のステップへと着実に進んでいった。
その日の夜、ユイと別れて帰路についた時、俺は新たな展望に心を躍らせていた。プロジェクトは確実に進展し、俺たちはこれから新しいチャレンジに向かっていく。だが、それ以上に感じていたのは、仲間との絆だ。
ユイも、アリスも、みんなで手を取り合って進んでいけること。それが何よりも嬉しかった。
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