エピローグ
第24話 誓い
グレールさんの炎魔法に合わせ、私も炎魔法で結界を張り直した。
今は二人だけの時間を過ごしている。
結界を張り終ったけれど、術者は自由に結界の中を出入りできる仕様にしたため、グレールさんと共に魔石が込められている木の枝の上で青空を眺めていた。
「ここは、すごい綺麗だなぁ」
「魔石が込められている木は、ツエバルの中でも一番高い木だから周りを見回せるのです。なので、おすすめなんですよ」
青空が広がる世界、奥の方にはツェダリア国が見える。
「――――魔女っ娘」
「はい」
「あの、その…………」
…………? どうしたんだろう。
なんか、頬を掻いて言いにくそうにしている。
グレールさんを見て待っていると、紅蓮の瞳と目が合った。
――――やっぱり、綺麗。戸惑っている今でも、赤く輝き、燃えている。
「…………な、なんだ?」
「それはこっちの台詞ではあるんですが……」
いや、それより――……
「グレールさんの瞳って、いつも思っていましたが、綺麗ですよね、紅蓮の炎が瞳に宿っているみたいです」
素直に言うと、何故か頬を染め目を丸くしてしまった。
私、何か悪いことを言ってしまっただろうか。
これ以上のことを言わないでグレールさんの言葉を待っていると、やっと口を開いてくれた。
「ま、魔女っ娘!!」
「は、はい!!」
お、思わず姿勢を正してしまった。
な、なんだろう。
「な、なな、名前で呼んでもいいだろうか!!」
・・・・・・え、名前?
あー、そう言えば、最初、名前を明かさなかったっけ。
それで、呼んではいけないと思ってしまったということかな。
…………ふふっ、素直で誠実な人だなぁ。
「いいですよ」
「ほ、本当か?」
「はい。あ、でも、私からも質問していいですか?」
聞くと、数回瞬きした後、「なんだ?」と、優しく微笑みながら聞いてくれた。
「グレールさんは、なぜそこまで私を気にしてくださるのですか? 最初から、私について知りたいなど言っていましたよね? なぜでしょう」
今までの疑問。
なんで、グレールさんはここまで良くしてくれるのか。
単純に魔女という存在が気になるからなのかとも思っていたけれど、そうではないみたい。
だって、セーブルには無関心だったし。
魔女について気になっているのなら、フィーロさんみたいにセーブルを追いかけまわしたりしそうだもの。
グレールさんは一切そんな様子はないし、魔女だからという理由で差別はしない。
それなら、なぜ私のことを気にしてくれるのか。それが、わからない。
「え、えぇっと。そうだなぁ」
青空を見上げ、何かを考える。
言葉をまとめているのだろうか。
待っていると、やっといい言葉が見つかったのか、笑みを浮かべ私を見た。
「君に一目ぼれをしたから。これが一番しっくりくるな」
「…………へ?」
ひ、とめぼれ?
え、一目ぼれって、あの一目ぼれ?
一目見てその人に惚れてしまったという、あの、一目ぼれ?
ポカンとしていると、グレールさんが私の頭をそっと撫でた。
「そこまで驚くとは思っていなかったが、まぁ、そういうことだ。俺は、君が好きだ。いや、今は好きという気持ちでは収まりきらない。愛している。だが、君の気持ちも大事にしたい。人間と魔女では、少々考え方も異なるだろう。だから、返事はいらない。君の思うようにしてほしい」
グレールさんの言葉は、最後まで芯が通っており、頭に響く。
目が、離せない。いや、離したくない。
頬が赤く染まるのがわかる。
高揚しているのがわかる。
「魔女っ娘?」
「…………名前、を、呼んで、ください」
何も考えずに出た声は、震えていた。
か細くて、聞こえていないかもしれない。
いや、聞こえてはいたみたい。
だって、グレールさん。今、凄く嬉しそうにしてるから。
「――――リュミエール」
「はい、グレールさん。私も、貴方が――――」
まさか、魔女が人間にこんな感情を抱くなんて思っていなかった。
いや、魔女としてのプライドが邪魔をしていたのかもしれない。
魔女のプライドを取っ払ってくれたグレールさんは、本当に優しくて、復讐のために人間の世界を滅ぼさなくて良かったと、心から思える。
青空が広がる結界の中で、グレールさんは私を抱きしめる。
顔が近づき、そのまま私達は、唇を重ねた。
これからの私達は、種族の違いや、寿命や思考の違い。
様々なことに苦しむと思う。でも、グレールさんとなら、共に乗り越えられる。
なぜか、自然とそう思えた。
「リュミエール、これからよろしく頼むな」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
魔女は村を滅ぼされましたが、転生騎士に溺愛されているので問題ありません 桜桃 @sakurannbo
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