私が町を開拓して、裏切り勇者の王国を崩壊させるまでの物語
@kinoko-kino
エピローグ~始まりと終わり~
第1話 女子高生大賢者、次は赤ちゃんに生まれ変わる
目を覚ますと、私は見知らぬ天井を見上げていた。
暖かな陽射しが窓から差し込み、部屋は柔らかな光に包まれていた。
しかし、私の心には激しい怒りが渦巻いていた。
どうして…どうしてこんなことに!
「おんぎゃーーーーーー!!!」
私は産声を上げながら、過去の記憶を思い出していた。
200年前、私は異世界に召喚され、大賢者としての力を持っていた。
勇者ランドルと共に魔王を倒すために戦った。
しかし、最後の戦いでランドルに裏切られ、仲間たちと共に命を落とした。
その怒りと絶望が、今も私の中に生き続けていた。
「奥様、元気な女の子ですよ!」
優しい声が聞こえ、私は自分が赤ん坊として生まれ変わったことに気づいた。
――――――――――――――――――――――
それは突然の出来事だった。
私はいつものように学校からの帰り道を歩いていたが、次の瞬間、見知らぬ場所に立っていた。
周囲には広がる美しい草原と壮大な城が見えた。
青空は澄み渡り、鳥のさえずりが耳に届いた。
「ここはどこ?」
私は困惑し、周囲を見渡した。
見知らぬ風景に心臓が高鳴り、不安が募る。
たしか、いつも通り学校が終わって、いつもの道を歩いてて…、なんか変な模様が書いてあったけど、気にせずそこを歩いてて…。
んん!!?
あの模様、光ってなかったか!?
…変なもの踏んだから、こんなところに飛んだ!?
いやだ、もう!!!
突然、背後から声が聞こえた。
「君が召喚された者か?」
振り返ると、一人の青年が立っていた。
彼は高貴な衣装を纏い、鋭い目で私を見つめていた。
金色の髪が陽光に輝き、瞳には確固たる決意が宿っていた。
はい。
召喚、きたー!!
あの変な模様は、魔方陣ってことでしょ!!
なんでよりによって、私の帰り道に変なもの書くかな!?
「えーっと…。召喚って…どういうことですか?」
私は、心の中のツッコミを抑えて、恐る恐る尋ねた。
「君は異世界から召喚されたんだ。この世界を救うために。」
青年は真剣な表情で答えた。
その言葉には迷いがなく、まるでそれが当然のことのようだった。
異世界ね。
もうね、最近の流行みたいな感じで、これは異世界に召喚されたんだなーって、薄々気づいちゃったんですけどね。
でも、実際に起こると、困るんですけど…。
「いや、でもー、私はただの高校生でして…」
私は、平凡な人間です!!
っていうのを強調しまくったんだけど、無理だった…。
「召喚された時点で、君はもう素晴らしい能力を授かっているはずなんだ」
と、その青年は言い、元の世界に戻りたいと言ってみても、無理だと言われた。
そうだよね。
だいたいが、こういうのって、片道切符だよね…。
絶望。
私は困惑しながらも、状況を受け入れるしかなかった。
「君の名前は?」青年が尋ねる。
「リト…私の名前はリトです。」
私は答えた。
なんだか、声が震え、胸が締め付けられるような気持ちだった。
「リトか。俺は勇者ランドル。この世界を救うために共に戦おう。」
ランドルは微笑みながら手を差し伸べた。
その微笑みはどこか親しみがあり、安心感を与えるものだった。
それにしても、イケメンだ…。
こんなに顔が整った人間は見たことがない!!
芸能人?
いいや、毛穴がない!
そもそも人間って思っていいのかな?
なんて考えていたら、ランドルが不思議そうに私の顔を覗き込んできた。
近づいたら、もっとイケメンだった…。
「あのー…、世界を救うために…戦うって?」
と、顔を凝視されていてもたってもいられず聞いてみると、
「魔王が世界を滅ぼそうとしているんだ。君には、俺のパーティに入ってもらう。仲間が召喚されると予言され、今日は城にみんな集合している」
うーわ、魔王。
絶対、私、戦えないって。
来年受験だから、勉強そろそろしないとなーって感じの、だらだらしている高校生なんですよ?
そんな人間が、魔の王となんか、張り合えるはずないじゃん…!
目の前に広がるこの世界で、自分がどんな役割を果たすのか、まだ全くわからなかった。
お城の掃除とかなら、頑張ろうかなって思うけど。
そんなことを考えながらも、ランドルに導かれ、私は城へと案内された。
壮麗な城の中は、豪華な装飾と美しい絵画で彩られていた。
廊下を歩くたびに、足音が高く響く。
「ここが君の新しい家だ、リト。」
ランドルはそう言いながら、私を広間へと案内した。
広間には長いテーブルがあり、その周囲には豪華な椅子が並べられていた。
「これは、現実なの…?」
私は未だに信じられない気持ちで広間を見渡した。
勝ち組じゃん。
これだけ見たら。
「そうだ、リト。君はこの世界に召喚された。そして、この世界を救うために大きな力を持っているんだ。」
ランドルは真剣な表情で私に説明した。
「私にそんな力が…?あるわけないんですけど。すみません。」
力なんてあるわけない。
ここに来て、力も漲るとかないし。
…追い出されたら、猛獣の餌とかになっちゃうのかな、私…。
「大丈夫だ、リト。君にはその力がある。そして、俺たちが君を支える。」
ランドルは優しく微笑んだ。
なんか、力を与えてくれるイベントとかあるのかな…。
さっきまで逃げようかなって思ったけど、能力ないまま逃げたら、間違いなく野垂れ死にするよね。
広間にはすでに数人の仲間たちが集まっていた。
ランドルが一人ずつ紹介してくれた。
「こちらはシエーナ。攻撃魔法を得意とする優れた魔法使いだ。」
ランドルが紹介すると、褐色の肌にセクシーな服装をしたシエーナが優雅に微笑んだ。
「初めまして、リトさん。あなたのことは聞いています。これからよろしくね。」
シエーナは優しく手を差し伸べた
「よ、よろしくお願いします。」
私はその手を握り返し、少しだけ安心感を覚えた。
「そして、こちらがダイアン。彼は非常に強力な戦士で、無口だけど頼りになる仲間だ。」
ランドルが紹介すると、大柄なダイアンが短く頷いた。
「…よろしく。」
ダイアンは無骨な声で言ったが、その瞳には温かさが感じられた。
「こちらはラターシュ。回復魔法の達人で、常にニコニコしている司祭だ。」
ランドルが紹介すると、ラターシュがにこやかに微笑んだ。
「リトさん、これから共に頑張りましょう。僕もあなたの力になれるよう努力します。」
ラターシュはそう言いながら、私の手を握った。
そして最後に、冷たい目で私を見つめる青年が立っていた。
ランドルが彼を紹介する前に、彼が先に口を開いた。
「お前が、新しく仲間になったやつか。」
彼は冷淡な口調で言った。
「リトです…。よろしくお願いします…」
私は少し警戒しながら答えた。
「俺はリアム。お前が大賢者になるなんて信じられないな。」
リアムは冷笑を浮かべた。
私、大賢者?!
なれるわけないじゃん!!
信じなくていいわ!!
「本当に強くなれるか、見ものだな。こんなちんちくりんが!」
リアムはそう言って笑い、その場を去った。
おいおい。
失礼なやつだな、しかし。
こちとら、否応なしに召喚されて、ただでさえ不安なのに、なんて嫌味なやつだ!
私が若干イラついたのを察知さしたのか、ランドルが困ったように肩をすくめた。
「リアムは少し頑固だけど、根はいい奴なんだ。時間が経てばきっと分かるよ。」
私は内心でリアムに対する不安と不満を抱えつつも、新たな仲間たちとの生活が始まった。
次の日から、私はランドルの指導のもとで魔法の訓練を始めた。
結論から言うと、使えちゃったんだよね、魔法!
「リト、まずは基本の魔法から始めよう。」
ランドルはそう言って、魔法の使い方を教えてくれた。
手のひらに集中して力を込めると、小さな光が現れた。
「すごい、これが魔法…」
私は感動しながら呟いた。
「君には素質がある。もっと強くなれるよ。」
ランドルは励ますように言った。
魔法が使えるなんて、元の世界じゃ絶対にできなかったので、正直楽しかった。
私は様々な属性の魔法が使えるが、この世界で非常に稀なことらしく、正しく使うことが求められた。
しかし、訓練は決して簡単ではなかった。
しかも、リアムは常に厳しい目で私を見ており、何かと批判的だった。
「いろんな属性を使えるのはすごいかもしれないけど、一つ一つは中級の下の黒魔法じゃねーか。本当にこいつ生きてけんの?」
リアムは冷たく言い放った。
「うっさい!あっち行け!」
私は怒りを抑えきれずに反論した。
「本当に強くなりたいなら、もっと真剣にやれ。実践だったら死ぬぞ」
リアムはそう言って立ち去った。
その言葉に私は悔しさを覚えながらも、確かに一理あったのでもっと努力しようと決意した。
シエーナやダイアン、ラターシュとも一緒に訓練をすることが多かった。
シエーナは魔法の使い方を教えてくれ、ダイアンは戦闘の基本を教えてくれた。
ラターシュは回復魔法の重要性を教えてくれた。
「リト、魔法のコントロールが大事よ。」
シエーナは優しく指導してくれた。
「力任せではなく、技術も必要だ。」
ダイアンは力強く教えてくれた。
「怪我をしたら、すぐに回復魔法を使うんだよ。」
ラターシュは笑顔で助言してくれた。
なんだかんだ言って、リアムも真剣に私に魔法や身のこなし方の訓練をしてくれた。
彼らの協力のおかげで、私は少しずつ成長していった。
訓練の日々を終えた後、私たちは実戦をこなすために魔物との戦闘に出かけた。
初めての実戦に緊張しながらも、私は全力を尽くして戦った。
「リト、気をつけろ!右側に敵がいる!」
ランドルの指示に従い、私は右手に魔法を放った。
しかし、その瞬間、別の方向から巨大な魔物が襲いかかってきた。
「やばい…!」
私は一瞬動けなくなったが、その時、リアムが素早く駆け寄り、私を助けてくれた。
「しっかりしろ、リト!こんな所で死ぬなよ!」
リアムは私を庇いながら、魔物に立ち向かった。
リアムの姿は戦いに慣れた姿勢で、白銀の髪が陽光に輝き、その鋭い目はまるで全てを見通すかのようだった。
彼の動きは滑らかで、敵を次々と倒していくその姿は圧倒的だった。
「リアム…ありがとう…」
私は彼の助けに感謝しながらも、その冷たい態度の裏にある優しさを感じた。
戦闘が終わり、私たちは安全な場所で休息を取った。
リアムは何も言わずに私の隣に座り、傷の手当てをしてくれた。
「リアム…私の考え方が甘かった…。いつも反抗して、ごめん。」
私は謝罪の言葉を口にした。
「…まぁ、最近はお前なりに、頑張ってんじゃねーの?生きてたからいいよ」
リアムは冷たく言いながらも、その声には優しさが感じられた。
「リアム、本当は優しいのかも…」
私は心の中でそう思い、彼に対する見方が変わった。
その日から、彼の冷たい態度の裏にある優しさに気づき、彼の存在も私にとって大きな支えとなった。
こうして、私たちは共に戦い続け、仲間との絆を深めていった。
しかし、その絆が試される時が来るとは、この時はまだ誰も知らなかった。
ランドルの指導のおかげで少しずつ魔法の基礎を身につけていき、私はかなりの上級魔法を使いこなせるようになった。
本当にランドルには感謝していた。
だから、あんな風に裏切られるなんて、思わなかったんだ…。
私たちはついに魔王との決戦の日を迎えた。
ランドル、シエーナ、ダイアン、ラターシュ、リアム、そして私。全員が一致団結して魔王に立ち向かった。
「これが最後の戦いだ、みんな準備はいいか?」ランドルが声をかける。
「もちろん。」
私は力強く答えた。
「行くぞ!」
ダイアンが武器を構えた。
「私たちの力を見せてやりましょう。」
シエーナが魔法の杖を握りしめた。
「全員無事で帰ろう。」
ラターシュが祈るように呟いた。
「リト、足を引っ張るんじゃねーぞ。弱いんだから」
と、リアム。
「あんたね、こんな時まで…」
と、私がリアムを睨むと、リアムは微笑み、
「嘘だよ。頼りにしてるぞ、大賢者!」
と、私の頭を強く撫で回した。
私たちは一丸となって魔王の城に突入した。
激しい戦いが繰り広げられ、全員が全力を尽くして戦った。
しかし、戦いの最中、私は驚くべき光景を目にした。
「ごめん、リト。これも全て計画の一部なんだ。」ランドルは冷たい目で私を見つめた。
「そんな…嘘でしょ…?」
シエーナが震える声で言った。
「ランドル、お前が…」
ダイアンが怒りに満ちた声で言った。
「なぜ、なぜなんだ!」
ラターシュが絶望の叫びを上げた。
ランドルは私たちを裏切り、魔王と手を組んでいた。
彼の裏切りにより、私たちは次々と命を落とすことになる。
シエーナの両腕はなくなり、きれいな顔の半分は焼けただれていた。
ダイアンは下半身を全て焼かれ、ラターシュの胴体には大きな穴が空いていた。
「リト、逃げて…」
シエーナが力尽きる前に言った。
「お前だけでも…」
ダイアンが最後の力を振り絞って言った。
「リトさん…生きて…」
ラターシュが最後の息を吐き出した。
「みんな…、嫌だよ!!!死なないで!!」
その時、魔王の強力な一撃が私を襲い、絶体絶命の状況に陥った。
「リト!」
リアムが私をかばった。
「リアム、何をしているの?!離れて!」
私は叫んだが、リアムは私を守るために前に立ちふさがった。
「リト、お前だけは生き延びろ!」
リアムは決死の覚悟で言った。
その瞬間、魔王の一撃がリアムを直撃した。
リアムの体が地面に崩れ落ち、私は絶望的な叫び声を上げた。
「リアム、いやああああ!」
私はリアムの元に駆け寄り、その体を抱きしめた。彼の体から血が流れ、温もりが次第に失われていくのを感じた。
「リト…お前は強い。でも、今は、逃げ、て…」
リアムは弱々しく言葉を紡ぎ、目を閉じた。
「リアム…リアム…お願い、死なないで!」
私は涙を流しながら叫び続けた。しかし、リアムの返事はなかった。
その瞬間、私の中で何かが切れた。
怒りと悲しみが一気に溢れ出し、私の魔力が暴走し始めた。
「許さない…絶対に許さない!」
私は叫び、手を振り上げた。その手から放たれた魔法は圧倒的な力を持ち、周囲を巻き込みながら爆発した。
「リト、やめろ!暴走するな!」
ランドルがたまらず叫んだが、私は耳を貸さなかった。
「お前も…魔王も…全てを滅ぼしてやる!」
私は力を制御できず、ただ感情の赴くままに魔法を放ち続けた。
ランドルも魔王も、その圧倒的な力に圧倒され、瀕死の状態に追い込まれた。
しかし、私の力も限界に達し、次第に意識が遠のいていった。
「リアム…ごめんね…私は…弱かった…」最後の言葉を呟きながら、私は意識を失い、力尽きた。
次に気が付いた時、私は赤ん坊として生を受けていた。
怒りと悲しみを存分に吐き出しながら、大泣きしながら生まれたのだった。
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