第13話 ドラゴン族の住処
ドラゴン族の住処、ドラゴンズリフト山脈の内部には、まるで別世界のような壮大な王国が広がっていた。
「ほら、こっちきて」
シエーナが私の手を引いて、ドラゴン族の本当の住処まで案内してくれた。
「そうそう。私の今の名前は、シエーナではなく、セレストリアだから。ここではそう呼んでね。親しい人達はセレスって呼ぶわ」
「過去の名前は誰が聞いているかわからんから、人前ではシエーナの名
は出さぬ方が良いじゃろう。リトは今世でも同じじゃからいいとして…」
「うん。ルーカス前も言ってたもんね。じゃあ、セレスって呼ぶね!」
私がそう言うと、セレスは笑った。
人間になったセレスは、昔と同じように美人だが、その外見は転生前と全く違っていた。
前は、褐色の肌が健康的な感じの巨乳でナイスバディなお姉さま美人だったが、今は長身スレンダー美人。
今の彼女の長い髪は深い紫色で、その髪は肩から背中にかけて流れ落ち、風に揺れるたびに美しい波打っている。
大きな目は鮮やかなエメラルドグリーンで、鋭くも温かな光を宿している。
系統は変わっても、超絶美人なのだけど。
性格は竹を割ったような性格なのは変わらないから、親しみやすさも変わらない。
「ここが入り口になってるの?」
山の内部に入る扉のようなものがあり、そこから本当の住処に行けるという。
ルーカスとルナ、そして私は、入り口を抜けて驚いた。
そこには美しい王国が広がっていた。
王国の中心には、巨大なクリスタルでできた宮殿があり、その輝きは周囲の建物を幻想的な光で包んでいる。
宮殿の周りには美しい庭園が広がり、色とりどりの花々と、魔法の力で輝く植物が植えられていた。
全体にはクリスタルでできた道が敷かれ、ドラゴン族の住む家々もまた豪華で美しいデザインが施されていて、全てが芸術作品に見えた。
「うわー…。なにこれすごい…!!山の内部だよね…?」
「こんなきれいな場所、初めてみるわい!」
ルーカスも目を見開いている。
ルナも、不思議そうにキョロキョロあたりを見渡していた。
上空には、常に穏やかな魔法のオーロラが輝き、人々が住む場所の周囲には澄んだ湖が点在し、そこから流れる川が全体を潤していた。
「この川の水、飲んだら元気になるわ」
セレスはルナを川の近くまで連れていき、水を飲ませた。
ルナの体が一度光ると、耳がピンと立ち、ぴょんぴょん飛び跳ねた。
その姿を見て、セレスはにっこりと微笑んだ。
「君、よく見たらルナウルフよね?私と張り合える魔獣なんて、そうそういないわ。本気出してごめんね」
セレスの言葉に、ルナは「気にすんな!」と言わんばかりに小さく吠えた。
町の広場には、様々な文化と歴史を象徴する彫刻や碑文が並び、ドラゴン族の長い歴史と誇りが感じられるものがたくさんあった。
「本当にすごいね、ここ…」
私は思わず口を開けて見とれてしまっていた。
まるで美術館にでも来ているような感覚になる。
住民たちは人の姿をしており、洗練された服装と穏やかな表情で私達を迎えてくれた。
ドラゴン族は、今は100人くらいで、その8割はドラゴンだが戦闘力はかなり低いらしい。
人間にも狩られる可能性があるため、強力な力を持つドラゴンがこの島を人間の禁足地に仕立てあげたという事だった。
ルーカスもその話を聞いて、勝手にこの島に来て申し訳なかったとセレスに謝罪をした。
「いいわよ、もう。こうして昔の仲間にも会えたんだし、結果オーライよ」
と言って笑うセレスの姿に、シエーナの姿が重なる。
そのまましばらく歩き続け、ついた場所は先ほど入り口で見た、この王国で一番目立っていたクリスタルの宮殿だった。
そうだよね。
やっぱりまずは、王様に挨拶だよね!
大丈夫かな…。
セレスがきっとなんとか仲を取り持ってくれると思うけど…。
「お帰りなさいませ。セレストリア様!」
10人ほどの、マッチョなお兄さん達(みんなイケメン!!)にそう言われて、セレスは当たり前のように頷いていた。
ちょっと待って…、もしかしてセレスは王の娘とか!?
宮殿の前に膝まづくイケメンに、堂々として宮殿に入ろうとするセレス。
「あの…、ドラゴン族の王って…」
私が聞くと、
「ああ。王っていうか、族長ね。今はここの一番トップは私よ」
しれっと、とんでもない事を言うセレス。
えーーーーーーーーー!?
セレスが、ドラゴン族のトップ!?
ルーカスを見て、「知ってたの!?」と、言葉なく見つめる私。
首を振りながらも、たまげているルーカス。
「何二人とも変な顔してるのよ。さっ、入って」
セレスは、どんどん宮殿を進んでしまうので、私達も慌てて後を追いかけた。
宮殿の中は、町の中よりもすごくて、輝きすぎて空に浮いているような感覚になった。
ルナはここが安全な場所だとわかっているのか、中庭に抜ける廊下から外に行きたいというような仕草をする。
セレナは、
「さっきの癒しの水の力で、体力が有り余っているのね。ここは安全だからいっておいで」
と言い、ルナは私が頷くのを確認して外へ行ってしまった。
私たちの周りを、当たり前のように従者っぽい人達が同行する。
セレナよりも見た目が強そうな人達に緊張してしまうが、この人たちよりもセレナの方が強いんだろうな…。
海外映画で見るような、長いテーブルがある会議室のような部屋に通され、私達はようやく座る事ができてホッとした。
セレスが人払いをして、私達だけになった。
三人だけ座っているけど、他何十人も座れそうな空席が、なんとも言えないセレブ感を醸し出していた。
「で、さっきの話なんだけど。ランドルの子孫に復讐するってやつ。」
と、セレナが話を切り出した。
「私思うんだけど…、ランドルの子孫たち、なんか変じゃない?ただの人間ではない者もいるという噂があるの知ってる?」
セレナの言葉に、ルーカスが頷いた。
「そうなのじゃ。わしは両親が皇居に使える魔法使いだったから、産まれた時から皇居に住んでおった。ランドルが皇帝になったのは、わしが生まれて数年経ったときだと思うのじゃが、それからランドルの子どもを一度も見たことがないんじゃ」
「どういうこと?」と私は尋ねた。
「表向きは、子どもの姿を見せると命を狙われるから姿を見せない、となっていて、皇帝が死んでから、後継が姿を見せることになっておる。ランドルが皇帝になってから7回ほど代が変わっていて、それらの皇帝は、確かに顔や体格は若干違うんじゃが…」
と、ルーカス。
「…私は100年以上前に対峙したことがあった。…もちろん、初代のランドルはもう死んでるはずなんだけど…」
セレスが、言葉を切った後、
「あれって、ランドル本人じゃない…?」
と言った。
えっ?
ランドル本人?
子孫じゃなくて、あいつなの?
「…それって…、私達みたいに生まれ変わってるってこと?」
私が聞くと、
「そういうんじゃないんじゃ。やはり、セレナも感じていたか…。わしも思っていたんじゃ。あやつ、あのままずっと生きているのでは…」
と、ルーカス。
「だから、わしたちの過去の名前を知り、リトの魔力を感じてしまったら、きっと何を置いてでも、どんな手段を使ってでも殺しにかかってくると思ったんじゃ。だから、過去の名前は秘密にするようにリトに言ったんじゃよ。ランドル本人だったら、自分の罪を知っているわしらを放ってはおかんじゃろう」
「私は今ドラゴン族として生まれたから、200年経った今もこうやって若い姿で人間に化けていられるけど、ランドルは人間だったわ。魔力がある人間は300年程生きる人もいるけど、ルーカスみたいに歳をとるのが普通なの」
セレナは私に説明した。
「あやつは、もう人間ではない可能性がある」
と、ルーカスは言った。
「じゃあ、なんなの?」
私が聞くと、二人とも首を振って、わからない。と答えた。
ルーカスもセレスも、前世で死んだあとすぐ転生したみたいだけど、私は今12歳。
もしかすると、私はあの後何度か転生していたのだろうか。
ランドルも何度も転生している可能性は?と考えたが、同じ場所で何度も転生するなんてそれこそ変だ。
もしランドル本人だったら、私、ランドルと結婚する事になっていたの!?
あいつと子作り!?
想像しただけで吐き気がした。
まぁ…その前に絶対に息の根を止めてやるけど…!!
いや、もう人ではないのなら、ランドルは私が殺せる相手ではないのかもしれない。
逃げて良かったのかも…。
皇居には、私達が知らない秘密があるのかもしれない。
やっぱり、時間をかけて情報を集めて、確実に復讐できる方法を見つける必要があるな…。
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