第23話 作戦会議

次の日の朝、私たちは町の広場に集まった。

少し眠ると、頭がすっきりした。

リアムはルナの姿のまま、私と一緒に広場に行った。

人間の姿をみんなに公開するするつもりはないようだったので、私は今までのまま「ルナ」と呼ぶことにした。


海賊たちと魔法使いたちは、昨晩の宴会で打ち解けてすっかり仲良くなったようで、肩を組みながら楽しそうに話している。


「おいおい、こんな場所で仲良くなっちまうとは思わなかったぜ!」

「お前らと酒を飲んで話してみると、意外と気が合うもんだな!」

皆が声を立てて笑っていた。


その光景に、私もほっとした。

昨晩の緊張が和らぎ、少しでもみんなが気持ちをリラックスさせているのを見ると、これからの道のりが少し明るく感じられた。


会議が始まり、ルーカスが話し出した。

「さて、これからの作戦を話そう。その前に、まずドラゴンズリフト島が持つ特別な意味を再確認しておこう。」

セレスが頷き、話を続けた。

「この島はドラゴンたちが守護するだけでなく、島全体に魔力を増幅させる結界が張られているの。だからここにいると、魔法の力が通常の倍以上になるわ。この特性を利用して、私たちは大きなことを計画できると思うわ。」


そうなんだ…!

どうりで、この島に来てからの魔力の増加がみんな凄まじかった。


「ただし、制約のせいで、私達ドラゴンはこの島以外に飛ぶことができないの。それを破ると、この島の特別な結界は解かれてしまうわ。」

とセレス。

「海を渡ったり、人間の姿で出歩く事は出来るけど、それも全員が出来る訳じゃないの。ドラゴン族のほとんどは、戦闘力が低いから、それは理解しておいてほしい。」

セレスは念を押した。

みんなしっかりと頷いていた。


「さて、本題に入ろう。まず、リルハーネ族について、みんなは知っているのか?」

と、カイル。


「私は知らない。リルハーネ族って誰なの?」

私はすぐに聞いた。

今までその名前を聞いたことがない。

周りを見渡すと、海賊たちは全員知っているようだが、魔法使い達は知らない人が多かった。


カイルが説明を始めた。

「昨日リトがいない間に話していたのだが、次はリルハーネ族と接触する事を目標にしてはどうかという話になった。リルハーネ族は、伝説的な工業技術を持つ少数の魔族の一つだ。彼らは特に武器や魔道具の製造に長けていて、その品質は他の追随を許さない。かつては王国の武器供給者として名を馳せていたが、魔王が討伐された後、王国に反発して身を隠してしまったんだ。」


魔族なんだ…。

身を隠しているっていう事は、ランドルに見つかるとまずいって事だよね。

でも、それだと私達の仲間になってくれる可能性があるっていうことか…。

しかも…、

「彼らの技術があれば、私たちの戦闘力は高くなるし、工業技術が優れているって事は…」

私はつぶやいた。

ルーカスは私の言葉にうなずいた。

「その通りじゃ、リト。もしリルハーネ族と協力できれば、我々はここで工業と商業を発展する事ができる。そうすれば、リトがやりたかった経済制裁とやらができるかもしれんぞ。」

ルーカスは笑った。


ルーカス…。

この間私が言った事覚えていたんだ!

そう…。

私がしたいのは、ただあいつを殺すだけじゃなく、じわじわと追いつめてやりたい。

時間はかかるかもしれないけど、確実に仕留める方法を考えるんだ。


「具体的にどうすれば、ここを商業都市に発展させられるの?」

セレスが疑問を投げかけた。

私は、

「リルハーネ族の製造技術をここで活かし、魔道具や武器、日用品を製造して、それを外部に売り出すの。それが人気を博せば、私達が経済的な力を持つことができるし、色んな商人と繋がる事ができるよね。いずれは経済的に皇帝の影響力を揺るがすことができるかもしれない。」


カイルが続けた。

「それならば、まずはここで生産した製品をどうやって輸送するかだ。禁足地のため人間は簡単には入って来られないが、俺たち海賊がいる。海を使って物資を運び出し、秘密裏に市場を展開することができるぞ。」


魔法使いのエルドが手を上げて意見を述べた。

「それに加えて、俺達魔法使いは魔法ゲートを設置することができる。ゲートを通じて、安全に物資を移動させる。ゲートの設置場所は慎重に選んで、外部とのやりとりが秘密裏に行えるようにしよう。」


このアイデアが出ると、皆が頷き合った。

禁足地であるドラゴンズリフト島から、海上輸送と魔法ゲートの併用で物資を外部に流通させる。

これにより、私たちは秘密裏に経済力を強化し、皇帝の支配を揺るがすことができる。


「よし、まずはこの島の商業基盤を整備しよう」

私は全員に指示を出した。

「市場や工房の設置に向けて、町の拡張を始めよう。カイル、海賊が持ってきた木材や石材を使って、新しい建物を建てようと思うんだけど協力してくれる?」

カイルはうなずき、

「了解だ。俺たちが運んできた資材を使って建設を始めよう」

と言った。

「俺たち魔法使いも、魔法で建設をサポートする。魔法でレンガを作ることができるしな。魔法で地面を平らにして基礎を固め、建物を迅速に建設できるようにしよう!」

エルドが付け加えた。


こうして、私たちは新たな商業都市を作るための準備を本格的に開始した。

海賊たちが資材を運び、魔法使いたちが魔法で工事を支援する。

町の広場には市場の骨組みが立ち、工房の設置も進んでいく。

禁足地の制約を逆手に取り、秘密裏に経済基盤を築き始めた。


「リルハーネ族との接触が成功すれば、この町はもっと活気づくね!」

私は期待を胸に広場を見渡しながら言った。

「そのためにも、リルハーネ族に信頼できる仲介者を見つけなければならないのう…。リルハーネ族は、初めて出会う人間とは話もしてくれないらしいのじゃ…。」

ルーカス困ったように言った。


リルハーネ族は気難しい種族なのか…。

前途多難だな。

でも、話ができれば協力してくれるはずだ…!


「シャドウフォレスト周辺で情報を集め、リルハーネ族に精通している人物を探そう。」

カイルが提案した。


カイル…!

頼りになる!!

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