第11話 私って、けっこうサイコパス気質
新しい住処は、2週間ほどでかなりインフラが整えられた。
上級魔法使い達は、それぞれ得意とする属性が違うらしく、土の属性の魔法使いが次々にレンガなどを作り、それを風属性の魔法使いが積みあげて行ったり、召喚士などは、精霊なども呼び寄せ、野菜や果物の発育を促した。
その光景は、圧巻だった。
ルナは近くの森で食べられる動物や魔獣を狩ってきて、それを調理してくれる魔法使い達もいた。
援護の魔法が得意な魔法使いは、仲間を筋肉もりもりにして、重たい物もなんなく移動させていた。
疲れたら、回復魔法が得意な魔法使い達が、回復してくれるもんだから、休憩なしでも作業が出来ていた。
エルマギアでは、範囲が広くて時間がかかったが、30人程度が住む場所くらいなら、こんなに早く町づくりが出来てしまうのだと、驚いた。
瓦礫とかがない分、建物も作りやすいというのもあるが、すごすぎる。
近くの山から湧き水が出ていたので、そこから水を引くために大地を削るもの一瞬。
鑑定スキルがある魔法使いがしっかり水質なども確認しているので、安全管理もばっちりだった。
なんなの?この優秀な集団は…!!
何より、指揮をしているルーカスが凄すぎる。
「ルーカス。この町にまたたくさんの人が住めるようになるといいね!」
と、私が言うと、
「リト、申し訳ないが、これ以上町の人口は増やさないつもりじゃ。わしらはここを拠点にして、数か月後には準備が整い次第、皇居に乗り込む。」
ルーカスの表情はいつもと違い、笑顔が少しもなかった。
「皇居には、最強の騎士団もある。おそらく、このメンバーをもってしてでも、良くて相打ち。わしらは命を持って、やつらに復讐を遂げるつもりなんじゃ」
「ルーカス…」
私が説得しようとするのを遮り、ルーカスは続けた。
「皇帝の暴虐を許すことはできない。多くの仲間が命を落とし、エルマギアが破壊された。わしは絶対に許すことはできない。ここに一緒に来た者達も同じ気持ちじゃ。リトには申し訳ないが、願わくば、これからの出来事を見届ける者として、静かに見守っていてほしい」
ルーカスの言葉には強い決意が込められていた。
「ルーカスは死ぬつもりで奇襲をかけて、皇帝を殺そうと思っているの?」
「そうじゃ。そのためにこれから準備をしようと思っておる」
私はため息をついた。
ここに来てから、ルーカスと魔法使い達が復讐に燃えていたのは一目瞭然だったので驚かない。
命をかけているのも、なんとなくわかっていた。
私も密かに、どうやったらランドルの子孫に復讐ができるのかを考えていた。
考えれば考えるだけ、アイディアが山のように湧いてきて、眠れない日があったほどだ。
殺してしまったら終わりだ。
復讐はそれで終わる。
でも、私はそんな簡単には終わらせたくはなかった。
「ねぇ。そんなんでいいの…!?」
と、私。
ルーカスは思いもよらない私の返答に、少し面食らっていた。
「…はっ?どういうことじゃ…?」
「そんな一瞬の苦しみだけ与えて…、ただ殺すだけで、ルーカスは満足なの!?」
私は大きな声でルーカスに詰め寄った。
ルーカスは目を見開いて、たじろいでいる。
私達が受けた裏切りや悲しみ、苦しみ、絶望。
そんなことを、「ただ殺すだけ」で終わらせていいのかって!!
ランドルの子孫には罪はないとか思っていた以前の私を殴りたい!
あいつの子孫は、あいつのまんま最低最悪のクズ野郎だ。
私だったら、じわじわと苦しめて殺してやりたい…。
「ねぇ。死ぬつもりなら、少しの間時間をちょうだい。直接戦うのではなく、じわじわと苦しめる事を考えましょう。食べ物や生活用品、薬の輸入を制限することで経済制裁を加えることだってできるでしょう?」
私のその言葉に、ルーカスは深く考え込む。
「あと、まだまだたくさんの仲間を作って、騎士団が怖いなら私達も騎士団を作ればいいのよ。仲間を増やして武器も作りましょう。皇居への流通を麻痺させるの。そして、徐々に弱らせていくのよ…。」
私は、密かに考えていた復讐計画をルーカスに話した。
ルナがすごい顔で私を見ていた。
ルナがドン引きしている。
口だけ笑いながら話す私に、ルーカスも少し怖がっている。
「数か月じゃなくて、数年かかるかもしれないけど、何もない所からこの2週間で一つの町を作れたのよ?やってみる価値は絶対にある!」
「経済制裁か…」
「数年間は耐えて、勝率を上げましょう。さっき良くて相打ちと言ってたけど、勝つ可能性が100%に近くなるまで、こちらの力をつけましょう!ルーカス。私達は誰一人、もう死ぬ必要はない。犠牲になろうなんて思わないで!」
私の言葉に、ルーカスは深く頷いた。
「わかった、リト。わしは、少しばかり復讐心に囚われすぎておったかもしれん。お前の案を試してみよう。我々は皇帝に対抗するための新しい道を模索しよう」
ルーカスの表情が少しだけ和らいだ。
ルーカスは、早速魔法使い達を呼び、私の作戦を話した。
中にはすぐにでも皇帝に復讐に行きたい人もいたが、とりあえず1年間の間でどこまでできるのかやってみようということで話がついた。
「ところで、この場所ってどこなの?」
と、私がずっと疑問に思っていた事を聞いてみた。
「大きな町を作るのはいいけど、皇帝に途中で見つかったらアウトだよね?」
人が多くなれば、この場所がバレる可能性が高くなるし、建物が大きくなればなるほど警戒されて、あちらから攻撃を受ける可能性もある。
「言ってなかったかの?ここはドラゴンズリフト島じゃ」
とルーカス。
私は驚愕してしまった。
ドラゴンズリフト島って…。
禁足地じゃないか!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます