第15話 新しい町の名前が決定!

セレスをはじめとするドラゴン族の戦士達は、私たちの町に来て修行を手助けしてくれることになった。


3日もかかって山道を登ったのに、ドラゴンに姿を変えたセレスに乗せてもらったら、たったの30分のほどで町に着いた。


ドラゴンが5体も来たから、魔法使い達は大慌てだったが、背中に私達の姿を見てホッとしていた。


「ルーカス様!話し合いはうまく行ったのですね!」

と、召喚魔法が得意なエリオットさんが駆け寄ってきた。

私達が地面に着地すると、ドラゴンが人間の姿に変わり、それを見た全員がまた驚いて腰を抜かしていた。


「ドドド、ドラゴンって、人になれるんですか!?」

大混乱している。

「そうよぉ。でもぉ、これは、ぜ~~~ったい、秘密だからねぇ…?」

セレスがエリオットさんに近づき、人差し指でエリオットの顎を撫でながら言った。

エリオットさんは顔を赤くして

「は、はい!!!!」

と、硬直している。


セレス…。

完全に遊んでるな…。


上級魔法使いと言っても、人間だ。

しかも、ルーカス以外は20代から40代の魔法使いばかりだった。

女性の魔法使いは珍しいようで、ここにいる魔法使いは、私以外全員男だった。

普通の人間には、セレスの美貌は毒すぎる。


エリオットさん、完全に心を奪われてるじゃん…。

他の魔法使いも、セレスに見とれてる…。


そんな感じでドラゴン族と魔法使い集団の交流は始まった。


「そういえば、ここにも名前を付けたら?」

とセレス。

確かに、これから仲間を集めるなら名前が必要だ。

すると、ルーカスが、

「実は、少し前から考えておったのだが…、エルマギアとドラゴンズリフト島からとって、エルドラっていうのはどうかの?」

と言った。


エルドラか!

いいじゃんそれ!!


「さんせーい!!」

私は元気に賛成した。

「私も色々考えてたんだけど、それが一番いいと思う!」

と言うと、

「ほう。リトも何か案があったのか?」

ルーカスが気を遣ってくれたから、私も言ってみた。

「ドラドラ町とか、マホウランドとか考えてたんだけどね!」


少し沈黙があり、

「エルドラじゃな」

と、ルーカスが言った。

ルナも小さく吠えながら頷いた。


あ、なんか今ルナにバカにされた感じがした!

そういえば、前ルナの名前を考える時も、相当無視してくれたな…。

私のネーミングセンス良くないのかな?


「エルドラ…いいんじゃない?」

セレスも気に入ったようだ。

魔法使いのみんなも、新しい自分たちの住む場所に名前がついて嬉しそうだった。


「よし、それじゃあ、エルドラの皆さん。町づくりは少しお休みね。今日から早速修行を始めるわよ!」

セレスは指揮をとり始めた。


魔法使いのみんなは、美しいセレスの修行を楽しみにしているようで、顔がデレデレしている。

そんな光景を、かわいそうな表情で見るドラゴン族のイケメン達。

「笑っていられるのも、今の内だな…」

「うん…」

というような話をこそこそしている。


んん?

嫌な予感…。


「まずは…、走れーーー!」

セレスの指導のもと、私たちは魔法と戦闘の技術を高めるための厳しい訓練開始…のはず。

だったよね?


走れって…。

どこを…?


信じられない事に、セレナは、その辺の山の山頂を目指し山道を走るよう指示した。

「基礎体力が大事だから、とりあえず50キロくらい走ってね」

険しい山道を駆け上がる中、息を切らしながらも、私たちは必死に頂上を目指した。


セレナはドラゴンの姿になり、私達を監視。

「止まったりしたら、火を噴くからね~」

と、本当に業火を吐く。


ちょっ…。

体力つく前に…死ぬ!!


「体力がなければ、いざという時に魔力を十分に引き出すことができないの。魔法使いであっても体力は重要よ」

とセレスが笑って言った。


魔法使い達はみんな死に物狂いで走った。

たまにセレスの家臣のドラゴン達が、ポーションのようなものを振りかけてくれるので、なんとかみんな走っていたが、山道の50キロって、かなりきつい。


驚いたことに、ルーカスは余裕だった。

走る時に邪魔だから、みんなローブは脱いだんだけど、下はシャツみたいな服。

ルーカス…、ローブの下の筋肉凄すぎて、私は引いてしまった。


200歳の体じゃないだろ、それ。

おじいさんの顔で筋肉もりもりとか、怖すぎる!


私もTシャツみたいな服を持っておいて良かった。

体は若いから、とりあえずついて行くことはできていた。

ルナは生き生きしていて、走りながら吠えている。


50キロ走った後は、

「初日だからこんなものね。はい、じゃあ、戻るわよ~」

と、さらに戻るまで50キロ走る事になった。


「うーん、遅いわね。合計100キロ走って、8時間…。とりあえずは、往復で4時間以内が目標ね。1年後には、往復2時間になるようにしましょうね」

とセレスは言った。


ルーカス以外、私を含めてみんな気絶していた。


100キロを2時間!?

たしか、フルマラソンの世界記録でも、確か2時間ちょっとかかっていたよね…。

できるか!!


「なんじゃ。みんな若いのに根性ないのう…」

ルーカスは、いい汗かいた~なんて余裕。


この人たち、本当に人間!?


「普通に走ってたら疲れるの当り前よ。魔法使いなんだから、ちゃんと魔力を使って走ることね」

セレスはアドバイスをくれた。


でも、みんなそのアドバイスを考える元気はなかった…。


セレス達が夕方自分達の住処に帰った後も、みんなぐったりしていた。

体力が消費しすぎて、回復魔法もあまりかけられない状態だったので、ルーカスが全員を回復してくれた。


「体力をこんなに消費する前に、回復しないとだめなんじゃよ」

「そんなこと言っても、どのタイミングで…」

エリオットさんがどんよりした表情で言うと、

ルーカスが、

「回復魔法と補助魔法をかけながら走るんじゃよ」

と、教えてくれた。


最初から教えてよ~~~!!


みんな私と同じ意見だったようで、不満を漏らしていたが、

「初めから教えたら、ありがたみがないじゃろう!」

ルーカスは笑い、体力温存の極意をみんなに教えた。


でも、原理はわかっても、実際やってみるのとでは違う。

回復魔法や補助魔法を使いながら走るのは、思った以上に難しかった。

「回復すると思わず、回復魔法を常にかけている状態にするんじゃ。体力が10減っても、次の瞬間は9回復できるようなイメージじゃ」


ルーカスは簡単に言うけど、それが難しい!

…でも、これって習得したらたしかに凄いかも!!


私は、その日の夜ずっとイメージしながら、回復魔法を少しずつ自分にかける練習をした。


大事なのは呼吸。


横でルナが気持ちよさそうに眠っている。

その呼吸に合わせて、私も静かに呼吸をしながら訓練をした。


次の日、私は昨日の夜訓練した通りやってみた。

すると、30キロ地点でもほとんど呼吸を乱す事なく走る事ができ、しかも昨日よりも早く走る事ができる。


これは、すごい!!

疲れが昨日とは雲泥の差だ!


そんな姿を見て、セレスとルーカスが微笑んだ。

魔法使いのみんなは、驚いた顔をしていて、その日の体力トレーニングの後に、私にどんな風にするのか聞いてきた。


私は、呼吸を意識して、自分で得たコツを丁寧に教えた。

「ポーションをちょっとずつ飲んでいる感じ?あと、水を出すときに、蛇口を調節して、水を細ーく出す感じ…?」

私の表現があってるのかどうかはわからないが、本当にそんなイメージで回復魔法をちょろちょろ出すとうまくいくのだ。


みんなはその通りやってみると、自分の家に戻り訓練をするようだった。


その次の日は、私の他にもこの魔法技術を習得している人が増えた。

回復魔法が不得意でも、このやり方はあまり関係がないようだった。

現に、召喚魔法が得意で、回復魔法は苦手なエリオットさんも、けっこうすぐに習得できていた。


「ふふふ。みんなすごいわ〜」

セレスも喜んでいる。

その様子をみて、みんなはさらにやる気を出していたのだった。


この体力修行が1ヵ月経つ頃には、全員100キロを4時間以内で走る事を達成してしまったのだった。


そして、魔法使いのみんな…、ムキムキになってきた…。

なんか…やだ!!!

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