33話 ケバブ食べたこと無いです

「はいはい皆ちゅ〜も〜く!学園祭の話し合い始めま〜す!」


 始業式から数日経った日の放課後、光が教壇に立って呼び掛けた。俺含めた数名はホームルームが終わって光の速さで教室から出ようとしていたが、そいつらも立ち止まって光の話に興味を示している。


「まず今年の学祭何やるか決めたいんだよ。一応俺らも色々案はあんだけど皆の意見も聞かせて〜」

「メイドカフェやりたい〜」

「ポリコレカフェとかどうよ」

「革命焼きそばは?」


 続々と意見が上げられる。陽キャ軍団の一人が黒板にそれらを書いている。

 書かれた意見を見ると、普通では見られない単語の組み合わせを楽しむことができる。本当、カオスだ。ちなみに俺はケバブを提案した。多分このクラスの中だと俺が一番まともだろう。


「んじゃ今回このクラスは『ゾンビのためのケバブ〜インプレを添えて〜』に決定!」


 話し合いは順調に進んだ。そして結局、『ゾンビのためのケバブ〜インプレを添えて〜』を売る事になってしまった。ちなみになぜ「ゾンビのためのケバブ」なのかは知らない。あと何でインプレを添えてるのかも知らない。つまり何も知らない。



「てなわけで『ゾンビのためのケバブ〜インプレを添えて〜』売る事になったわ」

「は?」


 家に帰って、ダリアと学園祭の話になった。どうやらダリアのクラスは「虚無カフェ」とやらをやる事になったらしい。本当にうちの学校はまともなクラスが無いようだ。


「インプレって何か知ってる?」

「インプレッションだろ」

「そのインプレッションって、物体だったっけ?」

「知らないけど?」

「じゃあ『インプレを添えて』って何なのさ……」


 そんなこと、俺が聞きたい。

 ダリアが疑問符を浮かべていたその時、俺のスマホが鳴った。見ると、クラスのグループチャットが動いていた。


“ケバブ食べたこと無いんだけど美味いの?”


 光のメッセージにはすぐに既読が付いていた。


“知らない”

“ショウなら知ってるだろ。提案したのショウだし”


 クラスの陽キャ達で話が進んでいる所で俺に話が振られた。


(ケバブ食ったことねぇんだよなぁ)


 じゃあなんで食った事もないのにケバブを提案したのか。という話だがそれは、朧気ながら頭に『ケバブ』の3文字が浮かんできたからである。それ以外に特に理由はない。


“ショウ、どんな味だった”

“知らない”

“なんでお前が知らないんだよ”

“お前今からでも食って来い”

“ケバブ舐めてる?”

“トルコ行け”


 案の定というべきか、クラスメイトからの総攻撃を受ける羽目になった。まあこれは多分俺に非があるので特に反論しようとも思わない。


“ごめぇんね”


 最大限の謝罪をして、鳴り止まない通知を切り、スマホを消した。

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