33話 ケバブ食べたこと無いです
「はいはい皆ちゅ〜も〜く!学園祭の話し合い始めま〜す!」
始業式から数日経った日の放課後、光が教壇に立って呼び掛けた。俺含めた数名はホームルームが終わって光の速さで教室から出ようとしていたが、そいつらも立ち止まって光の話に興味を示している。
「まず今年の学祭何やるか決めたいんだよ。一応俺らも色々案はあんだけど皆の意見も聞かせて〜」
「メイドカフェやりたい〜」
「ポリコレカフェとかどうよ」
「革命焼きそばは?」
続々と意見が上げられる。陽キャ軍団の一人が黒板にそれらを書いている。
書かれた意見を見ると、普通では見られない単語の組み合わせを楽しむことができる。本当、カオスだ。ちなみに俺はケバブを提案した。多分このクラスの中だと俺が一番まともだろう。
「んじゃ今回このクラスは『ゾンビのためのケバブ〜インプレを添えて〜』に決定!」
話し合いは順調に進んだ。そして結局、『ゾンビのためのケバブ〜インプレを添えて〜』を売る事になってしまった。ちなみになぜ「ゾンビのためのケバブ」なのかは知らない。あと何でインプレを添えてるのかも知らない。つまり何も知らない。
*
「てなわけで『ゾンビのためのケバブ〜インプレを添えて〜』売る事になったわ」
「は?」
家に帰って、ダリアと学園祭の話になった。どうやらダリアのクラスは「虚無カフェ」とやらをやる事になったらしい。本当にうちの学校はまともなクラスが無いようだ。
「インプレって何か知ってる?」
「インプレッションだろ」
「そのインプレッションって、物体だったっけ?」
「知らないけど?」
「じゃあ『インプレを添えて』って何なのさ……」
そんなこと、俺が聞きたい。
ダリアが疑問符を浮かべていたその時、俺のスマホが鳴った。見ると、クラスのグループチャットが動いていた。
“ケバブ食べたこと無いんだけど美味いの?”
光のメッセージにはすぐに既読が付いていた。
“知らない”
“ショウなら知ってるだろ。提案したのショウだし”
クラスの陽キャ達で話が進んでいる所で俺に話が振られた。
(ケバブ食ったことねぇんだよなぁ)
じゃあなんで食った事もないのにケバブを提案したのか。という話だがそれは、朧気ながら頭に『ケバブ』の3文字が浮かんできたからである。それ以外に特に理由はない。
“ショウ、どんな味だった”
“知らない”
“なんでお前が知らないんだよ”
“お前今からでも食って来い”
“ケバブ舐めてる?”
“トルコ行け”
案の定というべきか、クラスメイトからの総攻撃を受ける羽目になった。まあこれは多分俺に非があるので特に反論しようとも思わない。
“ごめぇんね”
最大限の謝罪をして、鳴り止まない通知を切り、スマホを消した。
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