22話 カップル妬ましい。
「やばい電車酔いしそう」
「大丈夫かよ……酔い止め飲んでこなかったからだ」
2日後、俺たちは電車に乗って旅館に向かっていた。俺たち以外に同じ車両に乗る人はいない。
どこに泊まるのかはダリアがずっと隠しているため俺はわからない。しかし俺をリードするはずのダリアは乗り物酔いでげっそりしている。
「あ〜もうやばい。ちょっと体重かけるね」
「まぁいいけど」
隣に座っているダリアは俺に自分の分のキャリーケースを渡して、俺に寄りかかった。ダリアの頭が俺の肩に乗る。重いが我慢するしか無いだろう。
「あ〜楽。じゃあ着いたら起こして〜」
「おい待てどこで降りるのか知らないんだが?」
俺が言い終わる前にダリアの方から寝息が聞こえた。タリアが起きてないとどの駅で降りれば良いかもわからない俺は、何度も起こそうと試した。しかしこの姉、起きる気配がない。俺は諦めてスマホゲーに勤しむことにした。俺はあまりスマホゲーム等はしない派の人間なのだが、久し振りにやると面白い。
何十分経っただろうか、やっとダリアが頭を上げた。
「ん、そろそろ着く?」
「知らねぇよ」
「あそうなの?えっと……あぁあと二駅くらいだね」
ダリアは俺から自分のキャリーケースを奪い取り、体を起こした。
「着いたら荷物持ってビーチ行かない?」
「水着持ってきてないんですが。てか荷物どうすんだよ」
「大丈夫。多分水着借りれるし、コインロッカー近くにあるらしい」
「じゃあ大丈夫か」
俺達は駅に着いてからについて話し合った。が、結局話し合いの途中で着いてしまったので決まったのでビーチに行くことだけだ。全く計画を立てていなかったらしい。
駅からしばらく歩くとビーチが見えた。ビーチは沢山の男女……おそらくカップルで埋め尽くされている。仕事でないとデートのお誘いも来ない俺にとっては少しだけ、ほんの少しだけ妬ましく感じてしまう。
「人多すぎじゃね?しかもカップル」
「私達もカップルのフリする?」
「しねぇよ?」
なんでそういう発想に至るのだろうか。
ビーチまでの道のりは下り坂になっており、自然と向かう足が速くなる。実のところ、顔には出さないようにしているが今回の旅行は楽しみだ。ここ数年旅行には行っていなかったので久し振りなのだ。一歩、また一歩と足取りが軽くなる。
俺達は脊髄で会話しながらビーチへと向かった。
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