21話 夏だ!海だ!旅だ!

「ねぇそこの坊や、お姉さんと一緒に……イイコトしない?」

「うっせぇ張っ倒すぞバカ姉貴……てか、いつまでこうしてるつもりだよ」


 突然だが、俺とダリアは旅行でビーチに来ている。

 今、ダリアは俺にバックハグをしている状態だ。一応水着ではなくちゃんと服を着ているが、多分他の人と比べても大きめなアレが当たっているのだ。何がとは言わない。


「何恥ずかしいの?お姉ちゃんのバックハグが恥ずかしいの?」

「黙れ一旦離れろ」


 多分大丈夫だとは思うがこんな状況知り合いに見られたら死ぬ。だから一刻も早く離れて欲しかったのだが――


「……おや、私の弟は義理とはいえ姉にバックハグされて興奮するような奴だったのかな?」

「あ……」


 残念。よりによって、実の姉である結に遭遇してしまった。顔は笑っているが目が笑っていない。怖い。


「やっぱりプライベートだったらそういうことするよね。人間だもんね」

「あらら彩さんじゃあありませんか」


 結の妹である彩にも遭遇してしまったではないか。生暖かい目で見守っている。利用者とプライベートで会うだけでも面倒くさいのにこんな姿を見られたら更に面倒くさいことになる。

 さて、俺はこの半修羅場をどう乗り切れば良いのだろうか。誰か教えてほしい。



 夏祭りから帰ってきて、俺はダリアに結の存在について知っていたか聞いた。ダリアはどうやら結が俺の姉であることも、結が梅津家に行ったことも知っていたらしい。

 結の存在を知ったからといって、俺たちの関係は変わらなかった。全然いつも通りダリアはお姉ちゃんアピールをしてくるし、同じ布団で寝ようとしてくる。平常運転だ。


「ショウ君、私はとっても水を浴びたい気分です」

「風呂はあっちだ」


 夏祭りから二週間くらい経ったある日、サウナのような暑さにやられたダリアが何か言ってきた。


「そーゆーことじゃない。冷たい水を浴びたい」

「シャワーからも冷たい水って出るんだぜ」

「それはちょっと違うじゃん?」

「じゃあ何なんだよ」


 若干このやり取りにも苛ついてきた俺は聞いた。するとダリアはこほんと咳払いをし、二枚の紙切れを突きつけてきた。よく見えないが多分本物なんだろう。


「じゃーん!温泉旅館の旅行券!」

「まじどこで手に入れた」

「商店街のくじ引き!」

「豪運」


 素直に凄いと思った。あのダリアがくじ引きで旅行券を当ててくるなんて。


「とう?行きたくない?」

「まぁ行きたいと言えば行きたいけど……」

「じゃあ決定!準備して!出発は明後日ね!」

「相変わらずいきなりだな」


 まただ。前にも姉弟旅行に行ったことがあるのだが前もこうだった。これがダリアという女だ、計画性が全くない。

 俺は計画性のなさに呆れつつも急いで旅行の準備を始めた。

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