30話 夏の終わり、気付いた闇
8月31日、俺はこの日が嫌いだ。
「明日から学校だよ」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ死にたくないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
8月31日、そう、夏休み最後の日だ。
「別に死なないから安心して?」
「嫌だ宿題終わっないぃぃぃ」
「それは君が悪いわ。乙」
冷たい義姉である。助けてほしい。
「てか、夏休み結構勉強してたじゃん。なのに終わってないの?」
確かに俺は夏休み中結構勉強していた。既に宿題はほぼ全部終わっている。では何故こんなにイヤイヤ期の子供並みに9月1日を拒むのか。簡単な話、真面目に勉強するだけでは終わらない宿題があるということである。
「夏休み中にシックスパックとか無理じゃん……」
「は?」
力剛先生の出した宿題、「夏休み中にシックスパックに割ってくる」これが一番難しい。ちなみにこの宿題、俺にだけ出されたものだ。何故出されたのかは、俺が一番知りたい。
(俺帰宅部だぞ。鍛えんのは足だけで良いんだよ)
「急いでトレーニングしても間に合わねぇし終わったわ」
「ショウ君、まだ希望はある。諦めちゃダメだよ」
「無いだろ」
「あるよ」
そういうとダリアは立ち上がり手を差し伸べてきた。
「帰ろう。最高の
確か、親父が筋トレ好きだったか。なんて思い出していると無理矢理立たされて、少し離れた実家に帰ることになった。
結局、実家に帰ってトレーニング器具を使って筋トレをした。が、勿論1日でシックスパックに割れるわけもなく、そのまま俺の夏休みは終わるのだった。
ちなみに、借金で逃げてきたはずのダリアは家族と普通に接していた。それなのに普通に俺の家まで付いてきた。
*
8月31日。昼下がり、私はリビングで項垂れていた。
「明日から学校、か……」
憂鬱な気分だ。夏休みは言わば学生の天国。それが終わってしまうというのは実に虚しいことである。
「流石に明日の始業式は行きなさいよ」
「気が向いたら行くよ」
テーブルの向こうから結が話しかけてくる。
気が向いたら。なんて言ったが、行く気は毛頭ない。それは結も察していたようで、ため息をついて視線を握っているスマホに移した。
何故私が学校に行かないのか。それは単純に、行くメリットよりもデメリットの方が大きいから。拘束時間が長くて自分のやるべき事に時間を割けないし、授業は無駄が多い。それに、人間関係にも気を使わなくてはならない。私はそんなことに時間を割きたくない。
(ま、それと……アレがあるからなんだけどね)
私はアレのことを頭から振り払い、スマホに意識を向けた。
*
私は、旅行に行ったあの時のことを思い出していた。ショウ君が2回くらい鼻血を出していて心配になったり、一緒に露天風呂に入ったり、オブラートを介したキスをしたり。
(これ旅行の思い出じゃなくてショウ君との思い出だな)
我ながら弟が大好きだなぁ。と思いながらなるべく他の事を思い出していると、私はある事大事な事を思い出した。
彩ちゃんについてだ。確か海で遊んだ時、彩ちゃんの水着はかなり布面積が多かった。腕は肘、足は膝上、胴体は全て、水着で隠されていたような気がする。今考えると布面積が多い、なんてレベルではない。
(そういえば着替えの時……なんか腕に怪我してたような)
着替えの時、水着で隠されていた腕の下に、何箇所かアザのようなものがあったような気がする。
「これは、なんかある気がするね」
私の呟きは誰にも届くことはなく消えた。
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