29話 キャッキャウフフなんて似合わない
「何やってんだろうな。あの二人は」
「ね。頭打ったのかな」
鼻血を気合で止めた俺は暫くビーチバレーを楽しんだ。しかし、日頃の運動不足が祟ったのか2試合しただけで疲れてしまったのでビーチパラソルで休んでいる。どうやら彩も疲れたようで、ついさっき俺の元に来て休んでいる。対して
「あれってカップルが海を味わうための特に面白みもない遊びだと思ってるんだが」
「言い過ぎな気もするけど、間違ってはないね」
俺はキンキンに冷えた水を一口喉に流し込んで立ち上がり準備運動を始めた。
「ショウ君、もう休憩終わり?」
「あぁ。あと
ある程度体が温まってきて、俺は二人の元へと歩き出した。
(登場で遊んでみるか……)
結はタックルしてきたし、俺も何かやり返してやろうか。なんて思考を巡らせていたが、頭よりも体が先に動いていた。いつもバックハグばっかりしてくるダリアが驚いた顔が見たい。そんな浅はかな考えでダリアの背後まで迫った。
(いつものお返しだ……!)
一瞬の隙を見て、俺はダリアの首に手を回した。そのまま俺は体を密着させた。二人とも水着だが、そこに邪な感情は一切ない。
「ふ、ふぇぇ!?し、シシシッショウ君!?」
「いつものお返しだ!」
ダリアの顔がリンゴのように真っ赤になった。正直ここまでいい反応をしてくれるとは思っていなかったため、少し俺も戸惑っている。勿論、顔には出さないが。
「ど、どうしたの?自分からハグしてくるなんて珍しいじゃん」
「お返しだよ。いっつも俺が仕掛けられてっからな」
「あ、あ〜……確かにそうかも?」
普通に会話しているが、俺は未だ手を離していない……つまり、まだハグをしている。ダリアも抵抗する様子はない。ただ顔を赤くしているだけである。
特に何か話すわけでもなく、ただ黙って俺がハグをする。他の客の声と海の音、互いの鼓動だけが聞こえる。
「イチャイチャするんなら
しばらく黙っていると、結が気まずそうに声を上げた。俺は慌てて手を離し、結の方に向いた。
「ごめん存在感なくて気づかなかったわ」
「そこの海に沈めるよ?」
結はニッコリと指をポキポキと鳴らしている。相当怒っているのだろう、目は笑っていない。
「……誰か助けて」
俺は小声で呟いた。呟いたところで助けなんてこないし結の怒りが収まるわけではない。
「助けてあげる〜!」
「は?」
後から彩の声がして、振り向いたら顔面にグーパンされた。なるほど、救済と書いて気絶と読むのか。
またもや俺の鮮血が宙を舞ったのであった。
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