7話 バンドやろうよ、お前ベースな
「千秋〜今日一緒に帰ろーぜ」
「ごめん今日軽音ある」
火曜日、千秋と帰ろうとしたが普通に断られた。千秋は今日も軽音楽部の練習らしい。
「そういえば次のライブ、ベースで参加してくれる?」
「おういいぜ任せとけ」
「ありがとう」
千秋は学校で軽音楽部に所属している。学校外でも別にバンドに所属していてるのだがベーシスト無しのバンドの為、ほぼ毎回俺をサポートベーシストで呼んでくるのだ。
「そういえば次のライブ、なんか凄いバンドも出演することになったんだよね」
「凄いバンドってなんだよ?」
「僕も詳しくは聞いて無いんだけど、ドラムの先輩から聞いたんだよ。『凄いバンド』って。何が凄いのか知らないけど、とにかく凄いらしいよ」
深夜テンションで同じクラスの女子全員にいきなり無言電話を仕掛けたあのドラムの先輩が『凄いバンド』というのなら期待してみても良いかもしれない。
「じゃあまた明日。ちゃんと練習しといてね」
「おうよ、また明日」
俺は帰路に着き、千秋は部室へ足を進めた。
*
「意外とムズいな、この曲」
「お疲れ。日頃から練習してないからだよ」
「ごもっとも」
家に帰って、ライブに向けての練習に苦戦していた。送られてきた音源を聴く限りは簡単に聴こえるのだが、弾いてみるとこれが意外と難しい。
「まぁ、安心したまえ。この、『音大受験生』お姉ちゃんがレッスンしてあげよう!」
一応ダリアはそこらへんの音大受験生だ。確か専門の楽器はチェロだったか。
「でもベース弾けないじゃん」
「弾けるわ!君よりも全然上手いわ!」
「えまじ!?全然知らんかった!」
「お前にベース教えたの誰だと思ってんだ!このお姉ちゃんだぞ!」
なんて馬鹿なやり取りをしながら、ダリアは俺にレッスンをしてくれた。俺が苦戦していたフレーズの弾き方や、曲に合った盛り上げ方までも教えてくれた。お陰で短時間でかなり成長できた。
だが変だ。俺はダリアからベースを教わった記憶がほぼない。
「うん、これならライブで弾いても問題ないかな」
「すげぇ……俺、弾けてる!」
「ま、私のお陰さ。感謝しなさい?」
「あざす!」
「良い返事。んじゃ疲れてるからもう寝るわ、おやすみ〜」
そういうとダリアは寝室の戸を開け
「……襲うなよ??」
と言い放ち、戸を閉めた。
俺はその毎日繰り返される夜のやりとりに呆れて、千秋にライブの概要を聞くメッセージを送った。が、返ってきた返信に
「ダルッ!」
と、言葉を漏らしたのであった。
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