4話 ここだけヤンキー漫画

 あちこちで陽キャ軍団と男子連合のメンバーが殴り合っている。あの後陽キャ軍団が「喧嘩と言えば河川敷」とか言い出したお陰で無事河川敷で大乱闘になった。他にも喧嘩出来そうな場所はあったが、なぜか河川敷に固執していたためわざわざ徒歩で30分程かけてここまで来た。無駄は多すぎるが、その無駄に口出しをしなければ陽キャ軍団は動いてくれるので今回は気にしない。


「おい翔やべぇぞ!流石に押されてる!」


 陽キャ軍団の中心人物、九十九光つくもひかるが報告してきた。


「わかった。じゃあバスケ部が最前線出るようにしてくれ」

「おけ!」


 俺達はピンチに陥っている。だが仕方ないだろう、なにせ俺達のメンバーは相手の1/3程なのだ。そう考えたらよく耐えている方だ。


「ショウさん、思ったんだけどこれ僕たち要らなくない?」

「……要らないな。あとショウさん呼びやめろ」


 実際、俺達は全然殴り合ってないし、狙われてもいない。そう、俺達がここいにいる意味が無いのだ。


「……帰っちゃう?」

「そうだな」


 俺は思いっ切り息を吸って叫んだ。


「じゃあ後は頑張ってな!バイバイ!」


 俺達はダッシュでその場から立ち去った。多分誰も俺達が消えた事には気づいてない。



 闘いを光達に丸投げして帰っている時、疑問が湧いた。


「そういや、彩って結構有名人なんか?」

「知らなかったの?」


 千秋から「こいつまじかよ……」みたいな目でドン引きされた。ちょっと傷つく。


「梅津彩、『学園一の美少女』とか『2次元から来た天使』なんて言われてる人だよ。成績優秀で、テストで常にトップ争いしてるらしいね」

「なるほど俺とは正反対ってことね」

「そゆこと」


 確かに彩が学園の美少女なのは納得だ。あれ以上の美少女はいないだろう。しかしナチュラルに千秋に馬鹿にされたのは許せない。


「でも俺最近まで彩の事知らなかったんだよな。もしかして俺ハブられてたりする?」

「そんな事は無いと思うよ。まぁ知らなかったのは仕方ないよね。だって基本学校来ないもん」


 俺は少し驚いた。勝手に『成績優秀な奴はちゃんと学校に行ってる』とか思い込んでいたからだ。しかしここで俺は1つ違和感を抱いた。


「なぁ、確か俺等の学校って出席日数足りなかったら評価1だよな?」

「そうだね」

「じゃあなんで基本学校来てないのに成績優秀なんだよ?」


 そう、出席日数だ。俺たちの学園の評価制度は、『テストの点が良くても日数が足りてなかったら強制的に評価1』という感じなので出席しないで成績優秀なんて無理なのだ。


「あ〜彩は特例で、出席日数に関わらず評価されるらしいよ」

「なにそれズルい」

「凄い優秀だからってことらしいよ」


 やはり天才は住む世界が違うのだろう。羨ましい。


「でもまぁ……俺がそうなっても点取れなくなるから、日数の制度は必要なんだよな」

「そうだね翔馬鹿だし……あそれじゃあ僕こっちだから!」

「なんつったお前!」


 千秋はあり得ない速さでその場を去った。止めようとしても異次元の速さで走っているため止めれない。人間、意外と速く走れるものだなと思った。


「……帰ろ」


 俺は千秋を止めれない感じた為、追いかけるのを諦めてそのまま家に向かって歩き出した。



「で、何でお前がいんだよ」


 家に帰ると、


「ん?いちゃ悪いかよ、愛しのショウ君?」


 姉がソファでゴロゴロしてた。

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