13話 社会的に死んだ気がする

(えっっっっっっっっっっっっっっろ)


 千秋にぶち込まれたテントの中には着替え中の……下着姿の『結』を自称する謎の美女がいた。下着姿なのになぜか普通に俺に話しかけている。


「ここに来てるってことは……「未完成未成年」のメンバーってこと?」

「そうですね……」


 「未完成未成年」俺、千秋、准が所属しているスリーピースバンドだ。ライブの回数はそれほど多くはないが、その分1回のライブにかなり力を入れている。ライブでは主にカバー曲を披露しているが、1回のライブで2曲くらいはオリジナル曲を入れている。


「そっか〜パート何?確かダリアはチェロとベースやってたよね」


(なんで知ってんだよ)


「そうっすね。んで、俺はベースです」

「そっか〜ベーシストか。楽しみにしてるね!」

「お互い頑張りましょう」


 話が一段落ついたところで、俺は気づいてしまった。結がまだ着替え中であることに。気付いた俺は恥ずかしくなりテントから出ようとした。


「待って、今開けたら外から見えるかもだからまだ開けないで」

「あっはい」


 結の言葉には妙に圧があり、従うしか無かった。逆らったら殺されそうな気がした。


「ショウ君も着替えなよ。2人で着替えたら時短になるよ?」

「そ、そうですね。そうさせて頂きます」


 俺は一応後ろを向いて服を脱ぎ始めた。後ろからは布と布が擦れる音がする。


(やべぇってこれ!どんなシチュエーションだよ!)


 ほぼ初対面の男女が同じテントで着替えている。かなりおかしい状況だ。後ろを見れば多分……見える。何がとは言わないが見える。しかし、ここで振り向いたら俺は社会的に死んでしまう。同じ空間でで着替えている時点で死んでるだろ、と言われればそうなのだが、それはだけはしない。俺は紳士だから。そういえば、結は下着姿で俺にフレンドリーに話しかけてきたが恥ずかしくないのだろうか。それとも隠すのが上手いのか。きっと後者だ、と自分の中で結論付けた。そこからはただただ無心で着替えた。途中、結から話しかけられていたが内容はあまり覚えていない。


「……よし」


 無事、欲望に打ち勝った。耐えた。ギリギリ思春期の男子にはかなりキツかったが、欲望に負けずに着替えを終えることができた。俺偉い。


「もう開けていいよ〜」

「は〜い」


 俺はテントを開けた。が、タイミングが悪かった。いや、それ以外にも、テントの場所も悪かった。


「「「「そーゆー関係だったの?」」」」


 そこには、カタクリと未完成未成年の残りのメンバーが雑談する姿があったのだ。

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