2話 こんな展開は“まだ”早い。

「疲れた」

「もう歩けん」


 やはり日々の運動はしておくべきだと、俺と千秋の中で結論づいた。因みにあいつら吹奏楽部は予想を裏切って、普通に上位でゴールしていた。やはり文化部と言えど侮れない。


「んじゃ先行っててくれ。俺スマホ取ってくる」

「おけ、帰りのホームルーム始まる前までには戻れよ。あいつ担任時間と金には厳しいし」

「わかってる」


 俺は第1体育倉庫に向かった。ギリギリ走れるくらいの体力は残っていたので授業に遅れる心配は無いだろう。

 倉庫の扉を軽く押すと、扉は簡単に開いた。


「あぁそっか。鍵閉めてなかったか」


 俺は机の上に置いてあった自分のスマホと倉庫の鍵を手に取って倉庫を出ようとすると、後ろから気配を感じた。恐る恐る後ろを振り向いても、誰も居ない。もし誰か残っていて、俺が倉庫を閉めて残っていた人が何日も放置されることになり、そのまま餓死。なんてことになったらかなり後味が悪い。俺はそれを避けるために倉庫の奥まで進んだ。


「おーい。誰か居るのか?居たら返事してくれ」


 何も聞こえてこない。誰も居ないのだろうか。しかし、俺の中の何かが、このまま戻ってはいけないと訴えている。


「誰か居ないのか?もう鍵閉めんぞ」


 進んでいると、足を掴まれた。俺は驚きながらも掴んだ主を冷静に(心臓バクバク)確認した。


「え……」


 俺は驚愕した。美少女が俺の手を掴んでいたのだ。しかも俺はその美少女を知っている。


「暑い……ギブミー水……」

「お前、同じ学校だったんだな」


 そう、足を掴んでいたのはまさかの彩だったのだ。同い年とは聞いたが、学校まで同じだったとは思わなかった。


「そんなことより、水……まじ」

「口つけちまったんだが」


*そして現在


 色々あって彩に押し倒されていた。


「これ、俺飲んだんだけど」

「うん知ってる。下さい。まじで」


 話を聞くと、彩は授業をサボるために第1体育倉庫に忍び込んでいたらしい。しかし暑さで気が狂ったらしく、丸1時間もこの倉庫に居た。ということだった。こいつのことは正直馬鹿だし自業自得だと思っているが、ここで俺が助けなかったら後味は最悪だろう。


「ほらよ……そんなに飲みてぇなら飲め。でもその前にどいてくれ」


 そう言うと彩はおやつを待つ子犬のように目を輝かせながら俺の上からどいた。


「あ待って、もしかしてこれって……」


 彩がか呟いた。段々顔が赤くなっていき……


「これって間接キスじゃん!」

「今更かよ」

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