11話 話さないデートって地獄だよね
私、木芽
「何やってんだよショウ……なんか話題ないのかよ……」
「話のネタ?そんなん使いまわしだよ。考えんのダルいし」
とか言っていたからネタ切れなんてことはないだろう。つまり、ショウは「話さない」にではなく「話せない」のだ。
(私が乱入して……いや、逆効果か?)
私はあの地獄みたいなデートを見ていられなくなったため、ショウを見守ることを止めて普通に屋台を回ることにした。
「あ、すみませ~ん。チョコバナナ一本くださ~い」
「チョコバナナね。350円です」
「は~い」
「350円丁度ですね。どうぞ」
私は店主のおじさんに350円を渡してチョコバナナを受け取った。昔はもうすこし安かった気がするが気のせいだろうか。これだけでも財布にかなりのダメージが入った。
「おいし」
しかしお祭りの食べ物は何故か美味しく感じてしまう。このせいで毎年樋口さんが飛んでくのだ。
(久しぶりにかき氷食べたいな……)
私はチョコバナナを食べながら他の屋台も回ることにした。
*
焼きそばを買って食べている内に自然と会話は生まれた。食の力というものを実感した気がする。
「焼きそばおいし~!」
「可愛い娘と一緒に食べるとより一層美味しく感じるな~!」
「も〜嬉しい事言うな〜!」
世のバカップルというのは常にこんなやり取りをしているのだろうか。くっそ恥ずかしい。普段のデートでもここまでイチャイチャしないのだが今日はなぜかイチャイチャしてしまう。彩が可愛いからだろうか。
「ライブまでまだ時間あるな、どっか行きたいとこある?」
「ザ・夏祭りって感じの屋台行きたいよね〜……クジとか」
「クジ……クジか」
取り敢えずか俺達はクジの屋台まで歩くことにした。が、正直クジにいい思い出はないのであまりやりたくない。というのも、俺は小さい頃に夏祭りのクジで大負けした事がある。とにかくクジ運が悪く、酷いときは1500円払って3回引き、3回とも消しゴムを貰った事がある。だから俺は夏祭りのクジは『早期ギャンブル体験』とか言ってる。
「夏祭りのクジって何回も引きたくなっちゃうよね〜」
「あぁそうだな……まぁそれで当たるかは運次第だけどな」
「現実突き付けないでよ〜夢見たいし」
駄目だ俺にはこの笑顔をぶっ壊せない。
(頼む神様、彩のクジは大当たりにしてくれ)
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