32話 そういえば学園祭なんてモンあったな

「そういやそろそろ学園祭だけど、何やりたいかとか自分たちで話し合っとけよ〜んじゃさよなら〜」


 帰りのホームルームは、担任の一方的な言葉の押し付けによって終わった。

 ホームルームが終わって、九十九光を中心とした陽キャ軍団は早速学園祭の話し合いをしていた。はっきりとは聞こえないが、「記者会見体験」とか「性転換カフェ」とか聞こえる。まともな案がないことに絶望したが、話し合いに参加すらできない俺には文句も言えない。


「去年の学園祭って何やったっけ」

「んなもん忘れたわ」


 知らない間に千秋は俺の横に立っていた。少し驚いたが、まぁよくあることなので触れないことにした。


「てかあいつら、さっきからまともな案一つもねぇぞ」

「まぁそれはそれで面白いよね」

「他人事かよ」


 俺達には学校に残っている意味も特にないので、学校を出て帰路に着いた。




“学祭あるけどライブする?”


 バンドのグループチャットに、その一文を送信した。


“僕は賛成”と千秋がすぐに返してきた。その後遅れて“俺も賛成だじぇ”と准(先輩)も返した。


“じゃあやるか”

“曲どうするよ”

“葵おじさんにセトリ組んでもらえるかもだから掛け合ってみる?”

““頼んだ””


 話はトントン拍子で進んだ。30分くらいでほぼ完璧なセトリが決まり、明日くらいに学校で楽譜を渡してくれることになった。参考音源は無い。あったら音源に囚われた演奏になってしまう。


「ショウ君、今年は学園祭でバンドやるの?」


 一応自室のベッドの上に寝転がってやり取りをしていた。なのにこの姉はノックもしないで部屋に入り込んで、一緒にベッドに寝転がっている。何故俺に気づかれずに部屋に入り込み、一緒に寝転がっているのかはわからない。しかし俺にプライベートの時間が無いことはわかった。


「なんでいるんだよ」

「そこにショウ君がいたから?」


 まじで何を言ってるのだろうかこのブラコンは。


「まぁそんな事いいじゃん。で、結局出るの?」

「出る。今その話し合いしてたとこ」

「そっか学祭バンドか〜いやぁ……学祭バンドか」


 ダリアはうんうんと頷いている。段々赤べこに見えてきた。


「んだよ文句あるかよ」

「いや?これでショウ君のカッコよさが学校に広まっちゃうなぁって」


 ニヤニヤとした顔で答えてきた。それよりも、考えている事が幼稚だと思ってしまった。まぁなんとなくで学祭ライブしたり、演奏のミスでダリアに泣き付いた俺のほうがよっぽど幼稚だが。


「そうかよ」


 その後は普段通り過ごして終わった。

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