第8話 メンバーランクとパーティーランク
「【勇者パーティー被害者の会】さんのパーティーラングはDですね。そしてカスミさんのランクはG、バローさんのランクはFです。」
受付嬢から衝撃の評価を告げられた。冒険者ランクはGが最低でF、E、D、C、Bとランクが上がっていってAが最高ランク。Aの上にS、SSというのがあるが、これは名誉ランク的なもので、大関の中から横綱が選ばれるようなものである。
パーティーランクもGからAの並びだが、普通はメンバーの平均ランクと人数による多少の調整が入るくらいであり、GランクとFランクの二人によるパーティーがDランクというのは通常ない話である。
「どういうことですか……?」
バローが信じられないという顔をして受付嬢に説明を求める。
「基準は明確です。パーティーとしての1回の納品合計ポイントが基準を満たしたのでパーティーランクはDランクです。そして、スライムを倒せてゴキブリンは倒せないカスミさんはGランク。スライム、ゴキブリン、大蛾(オーガ)を倒せるバローさんはFランクです。完全に初心者とやっと初心者卒業したくらいという位置づけですね。」
そんなことが聞きたいんじゃない。オレのFランク、パーティーのDランクは受け入れることに吝かではないが、カスミがGランクというのがどうしても解せぬ。そこの疑問を少し柔らかくして聞いてみた。
「ギルドの昇級認定基準に明記されているんです。ゴキブリン倒せないとFにはいけないんです。規則は規則ですので。」
ゴキブリンも巻き込んでダンジョンまるごとぶっ潰した事ならありそうなんだが、個別撃破出来ないと出来たことにもならないらしい。
パーティーとしてのランクがDなので特にパーティーとして受けられる依頼のランクはD相当までで特に不都合はない。しかしこのままでは、カスミがソロでやるときに極端な差別的条件を付けてパーティーに依存させているという不名誉な噂が立ってしまう。このパーティーリーダーは悪い奴だと。
そうはいってもこの手の資格認定にはだいたい「〜または関連省庁大臣がそれに相当すると認める者」という裏口があるから気にすることはない。必要となれば向こうから頭下げてランク上げてくるだろう。
隣でカスミが巨体を歓喜に震わせながら勝手にきゅんきゅんしてる。
「私のために怒ってくれてありがとう。」
お前のためじゃねぇよ。オレの評判のためだよ。こんなんじゃブラックFランパーティーとか言われちまう。いや一応パーティーはDランクだが。
「まっ、カスミはゴキブリンと大蛾倒せるようになったらAランク一直線だから気にするな。ちなみにオレは万年Fランクだと思う。」
そもそもリッチの大群をカルシウム強化のスナック菓子かのように躍り食いし、オークも猛牛タウラスもまるで単なる鮮度の良い食材のように生きたまま膾にしてしまう。いずれも単体でBランク〜Aランクの高ランクモンスターだが、カスミには何の衒いもなく、ただ食いたいから食うって顔をして、倒すと言った敵意を向けるのではなく、いただきますと食材に感謝を告げてるような穏やかな顔して捌いて食うのだ。
もしかしてゴキブリンや大蛾(オーガ)は食べ物じゃないから倒せないのか?
いや、スライムも食べ物じゃないけど倒せたり、そもそも骸骨のリッチをボリボリ食べることと辻褄が合わない。リッチ食えるならゴキブリンだって食えるだろ。いや、そりゃどっちも食いたくないけどさ。
「まぁ、とりあえずパーティーのこれからの発展を祈念してパーッと飲もうか。」
冒険者ギルド付属の酒場を指差してカスミを誘う。カスミもまんざらでもない様子だ。
―――
店の中央にある大きな円卓には、今をときめくSランクパーティーの名前で予約席という札が立っているので、それを避けて隅にある一番小さなテーブルに付き、発泡酒のピッチャーと枝豆を注文する。
「【勇者パーティー被害者の会】の結成を記念しこれからの発展を祈念して、カンパイ!」
貧乏人のビールことクリア○○○で乾杯する。あとは枝豆の鞘に塩を振りかけて豆はしばらく口に入れずに何回も何回も塩だけをかけて舐めての繰り返しで塩をアテに発泡酒を飲む。本当に酒を愛する人は塩をアテにいくらでも呑むんだ。これは酒を味わう粋な呑み方であって、断じておつまみを頼むカネがないからなどでは……ないと思う。
いつかはこういう席でも、腹にきちんと入っていくおつまみと本物のビールを飲めるくらいに頑張るぞとふたりで強く心に誓う。
そうしていると店の中央にある大円卓にズカズカズカと大男と小柄な尼さん、魔法使いなどが座り始めた。あれがSランクパーティーか。
「しばらくして向こうが出来上がってきたら、奴らのピッチャーくすねに行くぞ」
「それは隠密行動。くのいちの私にお任せあれ。」
「いや、お前才能ないから、俺がやるよ。」
「絶対成功させるから先にやらしてよ」
「バレたらそこで終わりだ。オレが先に手本を見せてやる」
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