第28話 捜査ファイル#2:氷の女王ガンギ・マリー邸
次のホシは氷の女王ガンギ・マリーだ。貧民街の路地裏で「ひゃっこいの」と呼ばれる違法薬物を販売してる
ということで、雪が降る中早速張り込みを開始する。路地裏に怪しい女が入っていき白い粉をばら撒いている。コイツが氷の女王か?
尾行を開始すると、向こうからやはり白い粉をばら撒いている男が来た。
「おつかれさん。ワシはこれで持ち場終わりや。」
「私も。融雪ぐらいまとめてやってくれてもいいのにね。」
「しゃあないよ。税金はブルジョワの、ブルジョワによって、ブルジョワのために使われるモンやから。この貧民街に使う分なんかないから儂らは自分のことは自分でやらんとあかん。」
「本当に何のために税金取られるんだろうね。政府って本当に反社会的勢力そのものやわ。貧乏人から巻き上げて金持ち連中で山分け。」
ただの融雪(塩カル)だった。紛らわしい。しかもコイツらにとって政府は思うようにならない敵……、成敗対象の「部屋の中の象」は政府の要人に媚薬嗅がせてトチ狂ったことをさせてる犯人、つまり政府をコントロール下に置いているはずなので彼らはシロだ。
そもそもこいつらがコードネーム『氷の女王』であるという確証もない。たまたま出没するとされている貧民街ではじめに見かけた女だというだけだ。もう少し一歩一歩確実にアプローチしていかないといけない。
やはり実際に取引している現場を押さえて、そこから芋づる式に出処を辿っていかないとならない。しかしおそらく見ている目の前で堂々の取引なんてものは行われない。囮になるか完全隠密行動か……。隠密といえば忍者……忍者といえばカスミだが、こいつには忍者としての才能が全くない。
どうしたものかと考えるが、やはりここは無双チートの代名詞マジックバッグを使うしかない。マジックマッシュルームじゃないよ。
マジックバッグに、予約入荷(入荷前に確認あり)を登録する。そしてこの貧民窟を歩き回る。近くになったら通知と矢印が現れるという寸法だ。全域を隈無く回るために貧民窟と高級住宅街を隔てる公園の付近に移動する。ここから始めて奥へ奥へと進んでいけばブツの在り処が洗い出せる。もちろんホシがブツを持って移動してたならそれと遭遇しない可能性はあるが、普通に考えて近場に倉庫を構えているはずだ。
そう考えて予約入荷を登録した途端あたり一面、それはすぐに隣り合う高級住宅街方面の全家屋含めて全方面にぎっしりと、在庫あります入荷可能の矢印が出た。こりゃあかんこの地域一帯が完全に汚染されている。
ほとんど無いモノを探すのではなく、飽和的に存在しているものの出処を探すのはまた別の難しさだ。どうしたらいい?
矢印の集まる濃さで判定するか?いやぎっしり飽和状態なのでもう少し条件を付けよう。
もう少しまとまった量の入荷先に限定する。
そうしたらヤクザの事務所みたいなの一軒まで絞り込めた。えー?本当にここにカチ込むの?ヤだよ。ここは穏便に……と隣を見る。いや、あまりにハマり役なのもまた。しかししゃあない。
「どうもここがヤバいブツの倉庫らしいんだが……。流石のカスミでもここに殴り込みは無謀だよな。八百子に報告して出直そう。」
「殴り込みしようとするから詰むのよ。ここの調査は忍びの術で人知れず潜入して証拠を掴むわよ」
「えっ、マジでカチコミやるの?」
「カチコミじゃなくて忍び込むのよ。誰にも悟られないように。あなたが付いてきたら目立つからここは私が単身忍び込んで証拠つかまえ……もとい、掴んでくるわ。」
なんだよその証拠捕まえてくるってのは?嫌な予感しかしない。電柱に隠れてカスミと連絡を取る無線機を着用する。
カスミは裏の勝手口から忍び込むんだと塀の周りをさっきからくるくる何回も回っている。きっと出てきた隙に忍び込む機を伺っているのだろう。無線で様子を聞いてみる。
「中からホシが出てくる気配はあるか?」
「勝手口無いね……」
そう来たか……これだけデカい屋敷なら勝手口のひとつやふたつあるだろう。
「じゃあ正面から正門を見張るか?」
「バレやすくなる。忍び込むなら正門以外よ。」
といってもないんじゃしゃあないな。
「上空から中の様子が見れればいいんだが……」
ふと思い立って、やはりヘリは欲しいなとバッグに登録したら、即そのヤクザと思しき屋敷から入荷できるらしいからあるだけ失敬して……。ミサイルフル装備の軍用ヘリだ……。こんなもん持ってなにするつもりなんだ。こりゃこの時点で別件ではあるがクロ確定だ。行政や政治家に媚薬かがすどころの騒ぎじゃないぞこの反社め。
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