第14話 世界に散らばるお宝を求めて冒険の旅に出る

 マジックバッグのレベルアップ障害がきっかけで、品不足に陥った世界を救うためバローは冒険の旅に出る。


 マジックバッグのレベルアップ障害が起こるということと品不足に陥るということとの間には、まるで風が吹くと桶屋が儲かるのように一見なんの因果関係もないように見えるが多段階にわたる因果関係が密接につながり必然であった。いや、品不足と一般化は出来ない。少なくともブルーシートとロープとセメントとノコギリについて、うちの街で品不足になるという事象に関しては一筋の因果関係が通っている。以下のようになる。


 0:前提として、マジックバッグは四次元収納で格納した状態で払い出される。その間格納されていたモノに対して流れる時間はゼロである。つまりモノにとって、入れられたその手で別の場所に引き出されたのと同じで食品の鮮度維持に画期的な効果を持ち、しかも仲介者に過ぎないバッグ自体は入れているものの量に関係なく重さは一定である。


 1:そのため、マジックバッグは持ち運ぶものが多い冒険者や配信者に人気がある他商店でも理想的な倉庫として利用されている。


 2:マジックバッグの前回のレベルアップのためには内容物を1回からにしなくてはならず、出しておくと悪くなるものは売り払われ、各地の市場で飽和状態となった


 3:もともと工具や資材といったものはいつもいつも使うわけではないので、常時仕入れておくものではなく、マジックバッグ持ちの行商人が来たときに必要な分だけ買うものだった。


 4:レベルアップ後にはどうせ戻すとたかをくくってたマイバッグ持ちたちは、いっせいにバッグから取り出したガラクタの山を整理せずただひたすら放り出してレベルアップ操作をした。


 5:そして前レベルへのレベルアップ操作をしたものは二度とマジックバックを復活させることはできず、ゴミの山を作って廃業した。


 6:ブルーシートとノコギリとセメントとロープはその、行商人たちが取り扱う商品だったが、そろって廃業した。


 このレベルアップ障害の影響は大変大きかった。そんな中、レベルアップに乗り遅れたためにマジックバッグを失わなかった少数派がオレだ。この時の利を生かして成り上がるぜ!……と言っても前はみんな持ってたマジックバッグがほとんど使えなくなったという事はまだストアのスキル持ちだけしか知らない。数少ない今なお使えるマジックバッグ持ちの希少性というのは、当然あるものと思っているものが失われているという事実が知れ渡るまでは単なる自己満以外の何物でもない。

 お目当てのお宝が何の変哲もないブルーシートとノコギリとセメントとロープで、ギルド案件の低報酬と全然モチベーションが沸かないし、労働の過剰供給は労働の交換価値低下に繋がるので、断りたかったのだが、奴らに、都合のいいタイミングで組んだパーティーメンバーへの教育的指導のためにも引き受けることになった。

 もし、これが相棒のくのいちによる作戦だとしたら見事としか言いようがないが、絶対にそんな高度な諜報戦が出来る上忍には見えない。絶対にそんなことはないだろうw。


―――

 世界を旅して無事にブルーシートとロープとノコギリとセメントを仕入れて帰ってくるというクエストだ。

 目的が脱力系だ。せめて世界に散らばる6つ集めたら願いが叶う宝玉とか、放射能除去装置とか、そういうのなら気分も沸き立つというものだが、どうしてちょっと前なら少し大きめのホームセンターに行けば売ってたようなものをわざわざ冒険して手に入れてくる必要があるのか? いや、今はそのホームセンターでも品不足で入荷しないのだ。マジックバッグ持ちを倉庫代わりに使ってた罰が当たったんだろ。



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