第31話 現地ギルドにて
これはマイバッグのハードウェアアップデートを受けるために旅を出た経由地でのお話。ついに冒険者ギルドカードが使えない街に来てしまった。
「このギルドカード、規格が違うから使えないんですよ」
えっ?規格なんてあるの?というかカードの規格はギルドのほうで調整しておいてよ。ユーザーにとっては知ったことじゃない。
「ええ、規格が違うだけじゃなくて、ギルドが加入してる連絡会が違いますのでランク互換性はありません。このカードはうちでは使えませんので新たにGランクで新規登録しますか?上位ランク者の冒険者と模擬戦による検定試験受けてCランク登録しますか?」
おいおい、せっかくギルドの弱みに付け込んで、お偉方にも八百子使って裏工作してやっと乗り越えたFランクの壁がまた目の前に立ちはだかったぞ。つうか、普通にオレが悪役みたいな立ち回りしてない?
「いえいえ、現役のランクCの方なら一段階低めで通るようになっているうちの検定試験なんてチョロいですから、CランクなりたてでBランク検定を受けて合否は五分五分くらいです。本当にCランク中堅の方ならチョロいですよ。」
本当にCランク中堅ならチョロいと、やたら執拗に「本当の」とか「現役の」とか耳が痛い言葉を付けてくる。まるでオレが偽物みたいじゃないか。いや、否定できないんだけどね。でも一度ランクCを宣告してしまった以上は、やっぱりなんちゃってCランクでしたハハハなんて言えるわけがない。挑発が上手い。
「受験費用ならびに通らなかった場合はどうなるんですか」
「そうですね、基本受験料は青銅貨1枚、合格サポート講習付きは金貨1枚ですね。落ちたら下のランクを受け直してもらうか新規登録でGランクですね。」
うわ、これアレだ。免許試験場にあるナントカ教室みたいな、サポート講習付きでなければ絶対に合格しないやつだ。免許試験場のはOB雇用とか人の行き来はあるけど表向きは関係ないことになってるが、こっちはもろ同じ組織で、明確に「合格サポート」とか名打ってる。
「なるほど。そういうことに対する洞察力の有無も試験問題ということなのだな?」
「はて?何のことですか?ちなみにわたしにはよくわからないんですけどみなさんたいていは合格サポート講習付きで受験されるようですね。」
まるでパチ屋の「みなさんなぜだか、景品持ってあちらの方に行かれる方が多いみたいですね」そのものだ。あっちはもらいに行くので腹も立たないが、こっちはすごくムカつく。
「カスミ、普通に受けろ。それ見てから俺がどっちで受けるかキメる」
ギルド嬢も試験官もろともカスミにボコられろ。
「イヤよ。安全性を考慮してたら負けちゃうし、確実に勝つにはここを焼け野原にするしか無いから後からバローが受験できなくなってるし」
極端なんだよな……。だから忍者の里を追放になったわけだし。
「で、合格判定は?」
「まさかサポートなしで受験されるおつもりですか?過去にSランクの方もBランク試験サポートなしだと落ちてますよ」
「御託はいい。合格判定の基準はと聞いてる。」
「試験官がその場で合格と宣告するか、試験日から1週間以内に試験官が不合格と言えなかった場合です。」
なんか後者が不穏だぞ。やっぱり合格サポートなし試験ってのは合格を目的としないで暴力ぶちまけるこどを目的に受験するヤツが多いんじゃないのか?
「つまり試験官をなき者にしちまっても良いんだな?」
「以前Sランク冒険者がボコられて以来、うちの試験官はSSランクですからCランクのバローさんに後れを取ったりはしませんよ。」
言質は取った。いや亡き者にはせんよ。ちょっと人目につかないところに隔離するだけだ。
じゃあ現れたときに何時でも入荷出来るように、SSランク以上の冒険者(至近距離武具とともに自動回収、優先)、Sランク以上の冒険者(代替)とマイバッグに予約入荷を登録しておく。こんなややこしい条件よく解釈できるよな。どうなってるんだこのマジックバッグ。
これで現れたら始まる前にバッグに拉致する。なんなら武器を放ってきたらそれとセットでバッグに回収だ。つまり矢を放ってきたら身体に突き刺さる前に矢も本人も格納物としてこの世からスッと姿を消すのだ。
マジックバッグのチートやばすぎる。普通に無敵だわ。
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