ここではないどこかへ行く
第30話 旅立ち
♪タランタ タランタ タランタ ターンターン
―――
バローのマイバッグを
容量と遠隔出納の飛距離が大幅アップ。
※このバッグでご利用になるには
―――
レベルアップの通知が来たが部品交換というか改造が必要ならは、それは普通にレベルアップ「出来ない」だろ。フラックスキャパシターはタイムマシンに必須な部品として有名だが、電子二重奏インダクタって何?電気二重層キャパシタなら知ってるが
それに、私の記憶が正しければフラックスキャパシターを作動させるためには1.21ジゴワットと相対速度88マイル毎時が必要だったはずだが。その手の燃料や電源を入れたり加速して放り込んだりといった覚えがないのだが。
相変わらず長いリリースノートを読む。レベル7リビジョン1ビルド3とのことだ。リビジョン1は普通に危険な予感がするのでファームアップはとりあえず無視することにするが、コイルとコンデンサの容量の問題から今後のサポート対象からこのバッグが外れる予定らしい。
つまりレベルがこれで頭打ちになる。冒険者稼業としてアイテムのレベルアップは生存の次に大切なことだ。ここでカンストにしてしまうわけには行かない。限界突破するためにもハードウェアは更新しておかないとなるまい。
製造元は、瀬名喫茶店というところだ。何故こういうマジックアイテムが喫茶店で作っているのかとか気になるが、考えたら負け。製造元から直接届くアップデータにそう書いてあるのだから信じるしかないだろう。住所も書いてあるのだが聞いたこともない国、都市名だ。
行き方も分からない製造元へと繋がるにはやはり直接の入手元……。ストアのスキルを認定されると同時にこのマジックバッグをくれた神殿の神官さんに聞きに行く他ないだろう。
街の神殿で、元服したときに対応してくれた神官さんに住所を告げると顔に急に青い影が出る。
「ど、どうしてその住所を!」
いや、アンタがくれたマジックバッグがメンテナンスのために行けって言ってるんだよ。
「確かに、前回のアップデート失敗で世に多くのマジックバッグが使用不能になった。私も新たに用意しなくてはならないと思ってた。カネなら出す。ありったけ買ってきてうちに入れてくれないか。他の者に渡さずに」
ああ、アレか。マジックバッグの過剰供給で価値崩壊を恐れているんだな。
「喫茶店らしいですからそんな工場みたいに在庫ないと思いますよ。それに買い占めは商人の掟として禁止されています。予算が許す範囲で適当に買ってきますよ。」
「それにヘルプに出てるこのスマホアプリ連携ってなんなんですかね?」
スマホアプリというものが別にあるらしいが、ここには無い。
「そこに行けばわかる。今は知らないでいい。基本的に『スマホアプリ』を動かすための『スマホ』の入手には本人確認が必要で転売禁止なのであんまりたくさん買うことはできない。」
なんかこの神官さん隠し事ありそうだし、ファーム更新の邪魔をしてきそうだな。めんどくさいからバッグに拉致して持っててやろうか。いや、急に神隠しにあったとなると神殿が黙ってはいない。穏便に向こうの出方を見てからでいいだろう。
そもそも、本気で邪魔したければ行き方のメモに嘘の行き方を書いておけばいいので、いずれわかる。わかったときに対応しよう。
八百子にも一応旅に出る旨告げておく。そして神官の様子が変だったことも。
「まあ、今この街でのマジックバッグの流通を独占してるのがあの神官ですからね。その地位を失うんじゃないかとビビってるんですわ。で、この行き方はあってますわ。」
メモは正しいらしい。じゃあなぜマジックバッグが不足した際に仕入れ部隊を派遣しなかったんだろう?
「あっているけど……経由地点にいくつか注意点を追記しておいたほうがいいですわね。」
そう言うと赤ペンで経由地や経由地間の注意を追記してくれた。中には火竜が住む山脈を越えるとか、魔王城を突っ切るとか回避ルートなしとか海を越えるとか無茶苦茶書かれてる。どひゃあ!
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