第1話 荷物持ち追放
「バロー、てめえパーティーの予算着服しただろ!追放だ追放!」
ダンジョン深層でリーダーの剣聖マツサカが剣を差し向けてバローを糾弾する。シーフのオカダ、弓使いのオギノ、聖女のニシガキ、賢者のイズミヤが付和雷同して次々とバローを糾弾する。
「もともとオメェは荷物持ちのくせに生意気で気に食わなかったんだ。これは餞別だ!受け取れバロー!」
オカダがバローの腹を思いっきりぶん殴った。うぅっ。鈍く持続する痛みに耐えながらバローは、マツサカの誤解を解こうとする。
「それは誤解だ。預かっておけと言ったから預かってただけじゃないか。」
「預かってそのまま出す奴がどこにいるんだよ。法定金利の5%を上乗せして出せやバロー!」
「ふざけるなこっちが借りたいみたいに言いやがって、そっちが運ぶの重いから預けたんだろ!預かり手数料もらいたいくらいだ。」
「ほれみろ、預けた金に手を出したいんじゃねぇか。お前みたいなやつはもうパーティーには置いておけない。預けたもん全部置いて失せろ!」
マツサカは凄みをきかせて、剣で頬を撫でる。頬から血がドバドバ流れる。
オギノが近づいてきて話しかける。
「お前は確かにすごいよ。遠距離のものもそのままストアに格納してしまうせいで、オレの出番がなくなっちまった。しかしドラゴンや魔王をストアに格納しても倒せるわけではない。遠距離格納ではなくて遠距離攻撃のレベルアップが必要なんだ。分かるだろ?だから僕に後を譲るつもりで引退してくれ。」
「ストアのスキルしか持たないあなたには無理だったのよ。マジックバッグを手に入れた今となってはあなたは無用の長物なのよ。身の程を知りなさい!」
ニシガキ……。お前にとってオレはただの運び屋だったのか…。
「バロー!このバカヤロー!」
イズミヤはいつもバカヤローとしか言わない。こいつだけは平常運転だった。
パーティーはバローの
♪ピロピロリーン!トットトーン!
―――
バローのマイバッグが
容量増加し軽量化、そしてお値段そのまま
遠隔地部分格納・賞味期限延長・お惣菜調理が利用可能になりました。
―――
謎の効果音と合成音みたいな声とともに、バローのマイバッグの輪郭が点滅してる。手にとって確かめろということか。
遠隔地部分格納とは?今までもしまうものを並べてバッグは離れたところからそれを異空間に収納してたから遠隔格納はわかる。しかしそれに「部分」?とは?どういうことだろう?恐る恐るチャックを開くと、開いたマイバッグにはコンソール画面が現れ、ヘルプが表示されている。
「このバッグについて」というのがヘルプの先頭に出てたので、とりあえず選択すると、コンソール中央に、「マイバッグLevel.5 Revision.45 Build 2 ©日付 all right reserved.」というメッセージとOKボタンだけついている小さなダイアログが表示された。💢わかっとるわいそんなこと!何がこのバッグについてだ。何もバッグに関する情報表示されてないじゃないか。
気を取り戻して、ヘルプメニューの目次を選ぶ。するとLevel5リリースノートという項目があるので選択すると、「お客様に愛され続けてはや12年3ヶ月、この度レベル5をリリースできることを嬉しく思います……云々……思えばあの頃は……」と時事ネタやら開発者の惚気話やらの意味をなさない駄文を五万文字ぐらい読まされた。いちいち腹立つわ!
ようやく、新機能の紹介のセクションに進む。なお、この新機能の紹介のセクションはリリースノートの一部という扱いなのか先頭の目次には現れてない。なめとんのか💢
新機能の紹介で、先ほど読み上げられていた遠隔地部分格納・賞味期限延長・お惣菜調理について書かれてないか確認するが、全然書かれてない……と思ったら過去レベル、リビジョンから順を追って追加機能を紹介してる。そりゃ出てこないわけだ。辛抱強くページをめくり、最終レベルにあるレベル5リビジョン45の新機能紹介までたどり着くと、お惣菜調理機能だけの説明だった。あれ?遠隔地部分格納と賞味期限延長は?
さらりと流したレベル4リビジョン51での新機能に賞味期限延長が、レベル4リビジョン28の新機能に遠隔地部分格納が触れられていた。それぞれ遠隔地部分格納というのが離れた場所にある特定条件のものだけを異空間に格納しそれ以外はそのまま残す機能で、賞味期限延長がストアされたバッグ内の時間がほとんど流れない機能で取り出したらいつでも新鮮、お惣菜調理機能はそのままの意味で、マイバッグの中で格納した材料でお惣菜が作れて次に取り出すときは完成した料理に変わっているらしい。チート級のすごい機能なんだから堂々と前に掲げろ!なんでリリースノートの片隅でこっそり触れてるわけ?
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