危険なクエスト
第25話 カスミとバロー、Cランクとなる
スタンピード対策の功績により、所管省庁の長ならびにそれに準じる者がそれに相当すると認めたために、カスミの前に重くのしかかっていたゴキブリンを対峙できない限りレベルアップ出来ない症候群を克服した。あとはカスミは一直線にAランクに到達するだろう。
それに、スタンピードの結果かなり猛牛タウラスの肉が集まったので特売だったとは言えその日の売り上げのほか、BBQが呼び水となって各ご家庭でも腹いっぱい肉を食いたいという余韻が残っていたせいか一週間は肉がバカ売れした。がっぽり入って当分は発泡酒ではない本物のビールが飲めそうだ。
バローとカスミがいっぺんにランクアップしたが、マジックバッグのほうはレベルアップはまだ来ない。いやなんかめんどくさいので来てくれないほうが良いんだが。
ところで、Cランクとなると中堅として扱われ、Fランクとは比較にならないほど危険なクエストも増える。「退治」系のクエストだ。Dランクで受けられるのはゴキブリンやネズミ、イタチといった、一般人がちょっと頑張れば倒せる程度の依頼なのだが、Cランクになった途端に、鹿、クマ、イノシシ、オオカミの群れといった、一般人なら確実に命を落とす。慣れた冒険者でも時折油断した隙に半身不随にさせられたり、謎の活動家から可哀想とか言われて武器の使用許可を取り消されることも珍しくない凶悪な害獣駆除の仕事を受けられるようになる。受けなくてももちろんいい。契約するかしないかは自由だ。
ただしこのDランクの凶悪害獣駆除の仕事はFランクのゴキブリンやらネズミやらイタチやらといった衛生害獣駆除よりも遥かにたくさんある。それもそのはずで、例えばカスミのように特定の害獣に対して異常なほどのアレルギーがあるとかでない限りわざわざ外注せずに自分でバンバンしてしまう。なのでFランク依頼は建前上はFランク以上でも受けられる筈なのだが、受付嬢から物凄く嫌な顔されてお察しくださいという露骨な態度を取られる。荒らすなと言うことだ。なお、Dランク推奨の害獣駆除は上位が受けても構わない。なぜなら有り余ってるからだ。
猛牛タウラスでも肉として「入荷」対象だし、最悪のケース借りにそのモンスターが品目として無くて入荷出来なくてもとしては遠隔部分入荷で、該当モンスターの水分だけ「入荷」してしまえば、大抵のモンスターは干からびてその場で倒れる。
これから待ち受けるCランクとしてのクエストに胸を膨らませて、求人票を眺める。
自分がFランクの時に指くわえて見ていた憧れの好条件Cランク案件に特に魅力的な条件の案件はなかった。おかしい。なんで自分が参加資格があるときにはおいしい仕事が無いのだ?そして、もしやとBランク以上限定の案件を見るとやはりあっちには魅力的なのがある。これは自分の心境の変化なのだろうか?それともギルドの陰謀?それとも冒険者稼業に関する市場環境の不可逆的な変化なのだろうか?もしかしたらたまたまの偶然という可能性も微かに存在する。
農地を荒らす鹿、熊、部屋の中の象とかあるんだけどなんでまた、ショボくれた報酬で脅威度の高い害獣駆除を依頼出すかな?
とりあえず、その中で比較的報酬が良いので「部屋の中の象の退治」ってのを受けることにした。
まず部屋の中にどうやって象が入ったのかとか事情聴取が普通なら必要だが、オレには必要無い。マイバッグにしまうだけだ。さっそく受付嬢のところに持っていく。
「これ、ごめんなさい。ややこしいお客さんで、Cランクじゃ無理ですよ。断れないから掲げ続けてますけど……。そして文字通りの発注じゃないんです。」
えっ?部屋の中にいる象を退治するって話じゃないの?楽勝だと思ったのに。
「あ……いいえ。別に受ける意思があるなら先方に連絡しておきます。詳細はそこで聞いてください。そこで行われたことについてギルドは一切関知しないということで。成功か失敗かしか届きません。なので何がどうなっていても依頼人が成功といえば成功で、失敗といえば失敗です。報酬も依頼人と直でやりとりしてください。」
闇バイトかよ?それだとギルドはどこから収益を得て掲示板の一角を提供してるのか?
謎だらけだ。
ーーー
(作者より)
謎だらけの発注ですが、意表を突かず期待を裏切らない王道展開がこのラノベのモットーです。やっぱりな……そう来ると思った…と納得の展開ですのでご安心を。
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