第40話 デュラちゃんVS閃光剣撃



 ビャクヤへ向かって旅をしていたわたしたちを追いかけて、王都からやってきたヒカルくんとマモルくん達。

マモルくんの話を聞くと、『白馬の戦乙女』として活躍していたわたしを再び勇者候補としてスカウトするために来たらしいんだけど、ヒカルくんは……



「ベルベル、俺と勝負しろ!」



「ええ……普通に嫌だけど……」



「俺が勝ったら大人しく王都に戻れ! そして勇者候補育成学校に通うんだ!」



「あなたに負けたらわたしが弱いってことじゃない。それって勇者候補としてはダメなんじゃないのー?」



「え? あー……じゃあ俺に勝ったら王都に……」



「あ、じゃあ降参しまーす! バイバイ!」



「おい!!!!」



 ヒカルくんって、なんというか、その……



「ヒカルくん、バカだねえ」



「なんだと!?」



 マモルくんはおとなしそうに見えて意外と言うタイプなのね。

まあ、中々良いコンビなんじゃないかしら。



「ベルベル! お前、緊急クエストでレッサードラゴンを倒したって……実力隠してたのかよ!」



「いや、召喚されたばっかりの時は本当になにも出来なかったわよ」



 スキルの説明だけで判断されてお城から追い出されちゃったし。

今更勇者候補として戻っても、ああいう表面しか見てない貴族様の出資で生活するのはちょっとやだな。



「というわけで、まあ君たちヘイリオスの上級国民様は見る目が無かったというわけさ! ベルベルちゃん、行こうか」



「そうですね。デュラちゃん、レッツゴー」



「おっおい待てよ!」



「ベルベルちゃん、どうしてもスカウトには応じてくれないかい? ヒカルと戦うとかは彼の世迷言だから気にしなくていいよ?」



「わたし、サンベルク王国で勇者するより、もっとこの世界の色々な国を見て回りたいなーって思ったの。だからマモルくん、ごめんね」



 ふっ、決まった……あとは颯爽とこの場から立ち去るのみ。

こんなところまではるばる追いかけてきたのはお疲れ様~って感じだけどね。



「お待たせしましたアサツキさん。さあ出発しま」



「うおおおおお俺と勝負しろベルベルウウウウ!!」



「えっ?」



 叫び声に振り向くと、ヒカルくんが腰に差していた剣を抜いて上段に構えているところだった。



「白馬の戦乙女ならこの攻撃も受けきってみせろおおお!! “閃光剣撃”!!!!」



「きゃっ!?」



「ヒカルッお前なにやって……!?」



 ヒカルくんが振るった剣の先から光の波動が放たれる。ま、まさかスキルを使ってくるなんて……



「……危機管理」



「デュラちゃん!!」



 デュラちゃんが踵を返し、上半身の鎧でヒカルくんの攻撃を受け止める。



 …………。



「なっ……俺の閃光剣撃が効いてねえ……!?」



「……効かぬわ、雑魚が」



「デュラちゃん!!」



 光の閃光を受けきった、というか吸収した(?)デュラちゃんには、傷ひとつ付いていなかった。むしろ鎧の輝きが増した気がする。



「お、俺の……最強スキルが……」



「ベルベルちゃん、彼が放心しているうちにさっさと行こう」



「え、ええ、デュラちゃん、走れる?」



「……御意」



「ま、待ってベルベルちゃん! どうしてその魔物には光魔法が効かなかったんだい?」



「失礼ね、この子は妖精よ。デュラハンのデュラちゃん」



「デュラハン……てっきりケンタウロスの亜種だとばかり……」



 一緒に来た他の衛兵さんもびっくりしているようだ。

よし、今のうちにこの場を離れよう。



「デュラちゃん、全速前進~!」



「ボクも魔石ニトロでブーストしちゃおうかなっと!」



 アサツキさんがとっておきの超加速燃料、魔石ニトロを空飛ぶ鞄に装着する。



「それじゃあマモルくん、王妃様によろしくね、さよならあああああああ!?」



 ビュンッ!! と加速するデュラちゃん。

す、すごい、一瞬でマモルくん達が見えなくなっちゃった。



「は、はやすぎいいいいい!! ア、アサツキさんは!?」



「ベルベルちゃん、横横~」



「きゃああああカバンから火が出てるううう!?」



「すごいでしょ。これが超加速ブーストだよ。まあ燃料消費が激しいから長くは使えないんだけど……あ、それはそれとして」



「な、なんですかあああああ!?」



「ビャクヤの街、ちょっと通り過ぎちゃった」



 …………。



「デュラちゃんすとっぷすとーっぷ!!」



 ちょっと行き過ぎちゃうのも旅の醍醐味……よね?

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